本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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さんやつ

ロンドンで地下鉄に乗ろうとすると、すぐ目に入るのは、駅のホームに大きく貼られた、本の広告。そういえば、東京では本屋の店先か神保町でもない限り、あんなに大きな本の広告って見たことないなあ、と気がつきました。  
 じゃあ、日本ではどこに本の広告があるのか考えてみると、雑誌なら電車の中吊り広告、書籍なら新聞広告が一般的なんじゃないでしょうか。

 イギリスの新聞にも書籍関連の記事は出ますが、たいていは日曜日に別刷で付いてくる「Review」というのにまとめてあると聞きました。  日本では新聞の1面の一番下、まさに特等席にバーンと出ています。この広告を「さんやつ」といって、1947年に朝日新聞が始めた方式だそうです。
 
  なぜ「さんやつ」かというと、新聞の紙面を縦に15段に割ったうちの「3段」を使い、横に8分割しているからです。ちなみに雑誌広告は6分割の「さんむつ」を使います。  聞いた話では「さんやつ」の掲載料はン百万円だそうですが、問題はお金じゃないのです。朝○新聞などともなりますと、「さんやつ」に広告を出させて頂くこと自体がすでにステータス。お金を出したからといってハイ、どうぞと載せてくれる訳ではないらしい。  
 
 広告代理店の人の話によると、「さんやつ」の中でも一番右側が一番目立つので、新聞社側からの内容・広告デザインチェックも特に厳しいらしいです。さらに、実績のある出版社でないと載せてもらえないらしく、同等の出版社同士でどちらが右になるか、意地の張り合いになることもあるんだとか。お相撲のマス席みたいな話ですね。
 
 新聞紙面の格調を下げないためかどうか、デザイン面でもいろいろと制約があり、何とか目立たせたい広告担当者と新聞社の間に静かなるバトルが繰り広げられます。その詳細は白水社のホームページ内「クラブ白水社」にあります。この文章、とても面白いので御一読を。
この記事中の「サンヤツ制作者」氏によりますと、「さんやつ」のデザイン上のルールとは、

 ・写真、イラスト、スミベタ、白抜き等々すべて不可。使えるのは活字とケイ(線)だけ。
・活字の書体は、ゴナとかナールとか勘亭流とかルリール(←引用者注:これらは書体の名前です)とかはもちろんだめ。明朝とゴシックの2書体のみ。その大きさも明朝が7通り、ゴシックは5通りしか使えない。斜体や平体など文字の変形はもってのほか。  
 ・ケイの種類と太さは許可されたものに限る(斜線・曲線はアウト)。記号類も同様。
 ・その他、書名以外の文字を書名より大きくしてはいけない。文字やケイをあんまり「意匠化」してはいけない。  
 ・あえて明文化はしませんが全体を黒っぽくしてはいけないよ。白っぽすぎるのもいけません  どないせえちゅうねん。  

 いや、お気持ちよくわかります。 白水社は昔から「さんやつ」広告の美しさで有名ですが、その裏にこんな戦いがあったとは。  
 そんな苦労の末に掲載される「さんやつ」広告、いったい効果があるのかどうか、はたで見てるとイマイチ疑問も残るのですが、ある意味究極のミニマル「Zen」な広告なので、そんな目でチェックしてみるのも面白いんじゃないでしょうか。
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by silverspoonsjp | 2004-03-25 15:31 | 本にまつわるエトセトラ