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本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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正しい日本語?

  正式名称は知らないけれど、書店に行くと、時折「販促グッズ」なる物を見かけます。
「今○○誌を買うと店頭で○○を差し上げます」とあって、その媒体のロゴやキャラクターグッズを使った品物のときが多いです。新潮社のパンダ時計をずっと狙っていましたが、GETする前に
景品が換わってしまいました(T_T)
 その他、面白いのは宣伝用の小冊子。長編マンガがTVアニメになったりすると、「ここまでのあらすじ!」なんて大々的に書かれて売り場の隅に下げてあり、お願いすると、余分があればもらえることもあります。
 
 大型企画になると、パンフレットではなくてこの手の小冊子がついていることがあります。今は、辞典の新刊が出る時期なのでその中から一つご紹介します。

 さて、手元にある小冊子は国語辞典の宣伝用なんですが、気になる日本語ということで例があがっていて、それが間違いかどうか答えるという内容のものです。
 夏ごろに、この手の話題をずいぶん聞いた気がしますが、それは文化庁の世論調査が発表になり、マスコミで取り上げられたからのようです。

 文化庁 平成14年度「国語に関する世論調査」の結果について
このサイトを見ますと、自分でも誤用すれすれのことばの使い方を平気でしているなと反省する一方、文化庁よ、統計の取り方はこれでいいのかとツッコミたくなります。
 たとえば
 「現在使われている言葉は乱れていると思うか」
 という設問ですが、そう思う人の割合が高くなるほど日本語が乱れていると考えるべきなのでしょうか?自分が誤用をしていてもわからない、気にしない、という人の割合が多ければ下がってしまうと思うんですけど…。
 それはさておき、調査項目を見ると、こんなものがありました。
  
   役不足  例文:彼には役不足の仕事だ。
    〔全体〕
   (ア) 本人の力量に対して役目が
       重すぎること    ・・・・・・ 62.8%
   (イ) 本人の力量に対して役目が
       軽すぎること    ・・・・・・ 27.6%
   (ウ) (ア)(イ)両方    ・・・・・・ 2.8%
   (エ) (イ)とは全く別の意味  ・・・・・・ 1.8%
       分からない      ・・・・・・ 5.0%


   確信犯  例文:そんなことをするなんて確信犯だ。
    〔全体〕
   (ア) 政治的・宗教的等の信念に基づいて
       正しいと信じてなされる行為・犯罪
       又はその行為を行う人    ・・・・・・ 16.4%
   (イ) 悪いことであると分かっていながら
       なされる行為・犯罪又はその行為を
       行う人     ・・・・・・ 57.6%
   (ウ) (ア)(イ)両方 ・・・・・・  3.9%
   (エ) (イ)とは全く別の意味 ・・・・・・  3.3%
       分からない ・・・・・・ 18.8%


 「役不足」とは、自分が力量を持っているにもかかわらず、役目が軽いこと(イが正解)、
 「確信犯」とは、思想信条に基づいて行われる犯罪(アが正解)です。
  
 自分も間違えておいて言うのはなんですが、7割以上の人が間違って覚え、使っている言葉の「正しい」意味って何なんだろうと考えてしまいます。もちろん「的を得る→射る」のように、皆が気をつけて直すようになった言葉もありますが、それはむしろ例外に属するのではないでしょうか。なんて、逆ギレしてる場合じゃないですね。誤用はあくまでも誤用で、恥ずかしい話です。
  
 と、長々前置きを振りまして、小冊子の方へ話を戻しますと、こちらにも、自分がいつも使っている言い回しが誤用の例として出ていてギョッとします。

 たとえばこれ。
 「今日は会社をお休みします。」
 …しょっちゅう言ってしまうんですけど、これ誤用なんでしょうか?    
          
 「多くの人は「お-する」は全体で謙譲語だから問題ないと考え、違和感を持っていないのですから、ことさら問題を提起することはないのですが、金田一京助博士は「おーする」を謙譲に使うのは間違いだと書いていますから、大正の頃は正しくない表現だと考えられていたようです。
 現在では「(先生を)お誘いする」「(先生のために)お調べする」
などは最も普通の謙譲表現ですが、以前は不自然だと考えられていたのです。
現在ではさらに、「(私は会社を)お休みします」のように行為が相手に及ばず謙譲にはならない「おーする」も使われますが、美化語としかいいようがありません。年配の人には違和感を強く訴える人がいますが、若い女性などには広く使われているのではないでしょうか。
(国語辞典販促資料「日本語質問箱」 p.7「敬語の混乱」より)

 年配者に違和感をもたれていたとは意外。誰も注意してくれないのはナゼ?。ただし、この手の誤用は明らかに間違いというより、なんらかの理由があって広まった言い回しなので、「近頃の若い者は…」(死語?)といわれつつ、定着していく類のものかと思います。小冊子の解説文からも読み取れますが、言葉は生きていて、時代によって変わるということも、一面ではまた真実ということですね。
by silverspoonsjp | 2004-03-27 21:54 | 本にまつわるエトセトラ