本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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ロクス・ソルス/レーモン・ルーセル著

 

 押井守監督の「イノセンス」を見ていたら、いきなりこの小説のタイトルが出てきてびっくり。出版社がなくなってしまったので気軽に見られないのは残念ですが、とても面白い小説です。

 「私」は、四月始めの木曜日に、友人たちとともに、マルシャル・カントレル氏の大邸宅、ロクス・ソルス荘に招かれます。そこには美しい庭園があり、様々なオブジェが置かれていました。その一つ一つの魅力もさることながら、そこに置かれた由来も、また驚くべきものだったのです。

 私たちは中腹の路傍で、かなり深い石の龕(がん)の中に、異様なまでに古い彫像が立っているのを見た。(中略)かつては根を下ろしていたものの、今ではすっかり枯れてしまった小さな草が、右手の真中から生えていた。
 放心して道を歩いていたカントレルは、私たちの揃ってした質問に答えなければならなかった。
 「これは、イブン・バトゥータがトンブクトゥ―の真中でみた、シナ花を持つ同盟者の像ですよ」と、彼は彫像をさし示しながら言い、そのあと以下のような由来を教えてくれた。


 必要最小限に切り詰めた表現から―というか、切り詰めたゆえに、というべきか―驚くべきイメージが、次から次へと現れます。何かの思想や寓話を伝えようとするものでもなく、テーマすらないかもしれない、不思議な本。
 訳者あとがきによりますと、純粋なことば遊びから生まれた「名前」に、後から「由来」を考え出して、書かれた小説だそうです。
 展覧会の絵を順に見て回るように、言葉の力だけで作られた庭園を、こちらはぽかんと口を開けたまま歩いてゆくのです。原書で読めたら、さぞや面白いでしょうが、岡谷公二さんの端正な翻訳によって、この本を楽しめるのは有難いことです。

岡谷公ニ訳
ISBN 4-89342-059-3
214×137  285p  ペヨトル工房 1987年

MORE
・レーモン・ルーセル著 『アフリカの印象』 白水社
 同じ著者・訳者による長編。こちらはアフリカを舞台に、前半が不思議な出来事の話、後半がその種明かしという、ミステリーのような体裁をとっています
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by silverspoonsjp | 2004-03-27 22:09 | センス・オブ・ワンダーの本