本と読書をめぐる冒険


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OTAKU ヴェネチア・ビエンナーレカタログ 

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2004年9月、ヴェネチアで行われた第9回国際建築展・日本館のテーマは「おたく」…。
このニュースを聞いて、よくぞ思い切りましたと拍手する一方、輸出大国ニッポンはこんなものまで輸出しちゃうのね…?と複雑な思いにかられたのは私だけではないでしょう。

このテーマがなぜ建築展のテーマとして選ばれたかは、「おたく:人格=空間=都市」というサブタイトルが明快に物語っています。国のメンツをかけた壮大な(かつ虚しい)パビリオンがならぶであろう場所へ本来非常に個人的な趣味嗜好を指す「OTAKU」を持ち込むということは、日本の都市・文化が国家を前提としたものから個人の人格によって成り立つ場所に変わりつつあることを提示し、ビエンナーレ自体の存在基盤に挑戦するものであるといえます。

この展覧会のカタログは「おたく文化」を象徴する美少女フィギュアを同梱した凝った(というか、いかにもおたく的)なつくりになっております。ビニールに包まれた物体がそれで、パーツを組み立てて作ります。開けてないんですけど、さすが海洋堂、ディテールまでちゃんと作りこんであるようです。

カタログ本文は64ページの薄いもので、伊・英・日3カ国語で表記されているため、文章自体は非常に短いですが、森川嘉一郎氏による基調論文、おたくを象徴するいくつかの事物の紹介(おたくの部屋、秋葉原、コミックマーケットなど)など、よくまとまった内容になっています。

日本製のアニメが世界を席巻している今、それに付随する「おたく文化」も拡散の一途を続けているようですし、「おたく」の意味自体も変容を続けているようなのですが、それにしてもねえ…。旧「おたく」観が抜け切らない者からすると、こういう事物はアンダーグラウンドの文化に属するものであって、消費の主役とか、日本文化の重要な一面とかいう評価を正面切って与えられてしまうと急速に面白みを失うし、ある種のセクシャルな嗜好を含んでいるという本来の定義からすれば、表舞台に上げるものではないような感じがします。

平たくいうと、日本の文化として真っ向から取り上げられるのは気恥ずかしいといいますか…。ま、最近は何でもアリですし、「おたく」の意味自体も幅が広くなってきましたので、とやかく言うことではないんですが。それに、抑圧されたものであるからこそ、展示する意味もあるんでしょうしね。

この展覧会が規定している意味での「おたく」の境地には達していませんが、最近の新定義(収入と時間の大部分を特定の趣味にかける人うんぬん)にはかなり当てはまってしまう私としては、かなり心中複雑なのでございます。

森川嘉一郎・編 国際交流基金・著
2004年 幻冬舎
本体 1200円 A5判
ISBN 4-344-00897-9 C0876
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by silverspoonsjp | 2004-11-27 22:23 | センス・オブ・ワンダーの本