本と読書をめぐる冒険


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タータンチェックの秘密-『TARTAN』

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スコットランドといえば、まず「タータン」。日本語では「タータンチェック」と言っていますが、英語では「tartan」というと、肩掛けplaidやスカートkiltからなる民族衣装そのもの、あるいはタータンチェックの織物を指すそうです。

本書によるとこの言葉の語源は恐らくフランス語のtiretaineから来ており、もとは毛と麻の混紡を指しました。16世紀はじめに使用例が見られるとのことです。

当時フランスとスコットランドの支配層には直接のつながりがありました。例えば、少年王ジェームズ5世の摂政として選ばれたのは、フランス生まれでフランスの提督であるオルバニー公ジョン・ステュワートでしたし、もちろん、それ以前にも、スコットランドとフランスの間には長きにわたる同盟関係があったのです。そういった関係から、この言葉もスコットランドに持ち込まれてきたのでしょう。

言葉の由来だけではなく、タータンはスコットランドが通ってきた歴史を象徴しています。いまでこそ、スコットランド人の正装として知られ、その模様は各クランによって違うなどとまことしやかな話が流通していますが、格子模様はもともとヨーロッパ各地にあり、よそで廃れたあとも、この辺境の地では作られ続けたというのが真相のようです。18世紀に入って、スコットランド貴族のイングランド詣でや商業主義の台頭、エキゾチックなスコットランドへの憧れなどなど、もろもろの要素によってタータンは民族衣装の地位へ上りつめます。ここにも、スコットランドの歴史を動かすイングランドの影が見え隠れしています。意外や(?)ロマンチストだったヴィクトリア女王もタータンがお気に入りだったようです(写真は当時の王室の衣装。本書p. 63から)a0003079_0514092.jpg

タータンの歴史については類書もほとんど同様の記述なので、恐らく定説化しているのでしょう。各氏族の模様について、さらに詳しく解説している大部な本もありましたが、スコットランド旅行の最中だったのでそんなものを買うわけにも行きませんでしたし、本書はINAX BOOKLETくらいのコンパクトで手ごろなものながら、図版の印刷が綺麗で、紹介もよくまとまっていたので買いました。

著者はスコットランド国立美術館の近代スコットランド史担当キュレーターだそうです。

TARTAN
Hugh Cheape著
ISBN0-948636-70X
National Museums of Scotland
£5.99 96ページ
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by silverspoonsjp | 2004-12-11 23:53 | 素敵なヴィジュアルの本