本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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バベットの晩餐会

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ノルウェーの小さな田舎町に、父である牧師亡き後、信仰を守って暮らす2人姉妹がおりました。そこへ、フランス内戦の嵐を逃れ、バベットがやってきます。質素でつましい生活にも文句一つ言わず、女中として働くバベットのもとへ、突然驚くべきニュースが舞い込みます。その結果、彼女はこれまで良くしてくれた女主人たちのために、一夜の晩餐会を開かせて欲しいと頼み込むのでしたが…。

先に映画を見て、それから買った原作本です。文庫本にして80ページくらいの短い物語ですが、10年以上経つのに、今でも繰り返し繰り返し読んでいます。運命に翻弄されながらも誇り高いバベットと、彼女の後ろに「フランス」を感じて怖じ気づいている北欧の人たちの造形、単純に見えて奥深いストーリー、芸術と芸術家の魂についての描写のみごとさ、どれをとっても素晴らしい作品です。

バベットはフィリッパをじっと見つめた。不思議なまなざしだった。多くのことを語っていた。同情をしてくれる者に対する憐れみ、その底には軽蔑とみなされかねないものすらあった。
「みなさんのため、ですって」とバベットはいった。「ちがいます。わたしのためだったのです」
バベットは物切り台から腰を上げると、ふたりの姉妹の前に立ちはだかった。

「芸術家が次善のもので喝采を受けるのは、恐ろしいことなのです。あのかたはおっしゃいました。芸術家の心には、自分に最善をつくさせてほしい、その機会を与えてほしいという、世界じゅうに向けて出される長い悲願の叫びがあるのだと」


併録の中編、中世ロマンス…というよりは、なにやら神話的な色彩を持つバーベンハオゼンの盾持つ乙女の物語「エーレンガード」もお勧め。

イサク・ディーネセン著 桝田啓介訳
ちくま文庫
680円
ISBN4-480-02601-0
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by silverspoonsjp | 2005-02-23 21:39 | センス・オブ・ワンダーの本