本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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ホビット一族のひみつ

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トールキン教授の創作の秘密を、作品に登場する人名や地名から探ってみようというもの。トールキンは言語学者でしたから、登場人物の性格や設定、物語の進展を、単なる思いつきではなく何か別の方法で考えたのではないか、という仮定のもと、いろいろな考察を行っています。

たとえば、「Hobbit」自体、Hobで始まる単語からその特徴を考えていったのではないか、ということが第2章に書かれています。

まず、「hob」は妖精、またはエルフのこと。「hobble」は、まごつかせる、「hobbledehoy」は青二才、「hobbler」はケナガイタチ、「hobbyhorse」はモリスダンスの踊り手、「hobgoblin」はエルフ・ゴブリン、「hobiler」は中世の軽装備の民兵で王に仕えていた。小作農、兵士、「hobit」は投石器 ウェールズ語のhobel=弓、「hoblike」は道化のような、「hobneil」は 田舎者、「hobnob」は噂話:飲み物、「hobo」は働きかつさまようもの…

これらの単語の羅列から、小さくてダンスが好きで、王に仕え、石投げが上手く弓の名手で、かつ噂話が好きで田舎者…というホビットの性格が設定されたのでは、という訳です。

この章なんかは、なるほどな~と思ったし、他にも、前からあちこちで言われていることではありますが、改めてまとめてあって便利というところは多いのですが、ところどころ、どうも素直に読めなかったのもまた事実でして…。読んでいるうちに引っかかる点がいくつかありました。

一つには、「ホビット」に限らず、何の語源についてであれ、これが正解と決められることは滅多にない、という点。これは、語源に関する本には宿命的について回るものですから、まあ仕方ないです。

もう一つは、どこまでがトールキン教授自身の考えで、どこからがデイさんの考えだかはっきりしないところがある点。トールキン教授は、手紙やエッセイなどで、何をヒントにして創作したか明言している場合もあります。そういった事柄を例としてあげたときに「原作者も言っている通り」などとはっきり書けば、もう少し信用性が高まったのではないかと思います。何も地の文に混ぜちゃう必要はなかったのに…。読み物というよりは考察の本なのですから、むしろ注を付けたって良かったくらいです。どう考えても子供向けの内容ではないのに、なぜわざわざ絵本風に仕立てたのかも不思議です。それとも、原題からすると、お手軽なガイド本のつもりだったのかしら?

というわけで、読み進むにつれ、著者の言っていることが妥当なのかどうか、踏み込んで考えてみようという気がだんだん萎んでしまいました。実は、中に、考察のカギとなっているのに明らかに間違っているところがあります(訳者も間違いを指摘しています)。ところが、間違ったままでもそれなりに解釈は通ってしまっているのです。

「『万葉集』は実は韓国語で書かれていた!」という主旨の本に、例として古今和歌集の歌が混ざってしまった。しかし著者はそれを万葉集の歌と思いこんでいて、韓国語でそれなりに読み解いてしまった…。例えは変かもしれませんが、何かそんな感じです。

トンデモ本というには、第5章のアングロサクソンの歴史とホビットの歴史の相似についての部分などは面白く読めましたし、どうもこの本のスタンスは不明で、それもフラストレーションが溜まる原因だったようです。海外のブックレビューを見ると概して好評のようなので、私がわかってないだけなのかも知れませんが…。

読むとついどこまでも追究してみたくなる、トールキン教授の著作の魅力とは怖ろしいものです。

第1章 初めにホビットという言葉ありき
第2章 辞書ーホーカス・ポーカス
第3章 入口ービルボ・バギンズ
第4章 ゴクリとゴブリン
第5章 ホビットの系譜と歴史
第6章 祖先あるいは開祖
第7章 バック郷とブランディ屋敷
第8章 トゥィク郷と大スミアル
第9章ホビットと土地
第10章 ホビット庄と大堀町
第11章 ホビット庄の町
第12章 袋小路屋敷:ホビットの家
第13章 ドワーフの陰謀
第14章 魔法使ガンダルフの魔法
第15章 トロルと巨人
第16章 ドラゴンの名前
第17章 ホビット庄社会
第18章 指輪所持者フロド
第19章 ホビットの仲間たち
第20章 ホビットの指輪
参考文献
訳者あとがき


原題は“the Hobbit Companion”.1997年初版のようです。

ホビット一族のひみつ 東洋書林
デイヴィット・デイ著 井辻朱美訳
リディア・ポストマ画 
ISBN 4-88721-6874 2,415円
A5変型判 148頁 2004年
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by silverspoonsjp | 2005-03-04 23:59 | 「指輪物語」関連の本