本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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アーキグラムの実験建築1961-1974

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茨城県の水戸芸術館で本日(2005年3月27日)まで行われていた同名の展覧会のカタログです。出版社が発行しているため、書店で購入できます。

1961年にイギリスで創刊された雑誌「アーキグラム」は、当初コピー紙1枚の簡単なものでしたが、発行を重ねるごとに規模を拡大し、メディアでも注目されるようになっていったといいます。

「アーキグラム」という誌名が「アーキテクチャー+テレグラム」の造語、ということからすると、雑誌のジャンルは「建築」になるんでしょうが、通常の建築雑誌とはおよそかけ離れた内容で、まるでSFの同人誌かSF映画の設定資料集みたいな感じです。

それもそのはず、「アーキグラム」の編集メンバーが追求していたのは現在進行中のプロジェクトや出来上がった建物ではなく、未来のプロジェクト、人と建築との関係はどうなるべきかというコンセプトそのものだったからです。

まだ存在しない未来の建物や都市の景観、環境を、彼らは建築の図面以外にも、誌面を埋め尽くす雑誌のコラージュや落ち着きのない(?)イラストレーションで表現しました。当時「建築界のビートルズ」と呼ばれたほどのインパクトがあったといいますが、そのビジュアルデザインは今見ても十分衝撃的です。

残念ながら展覧会は今日で終了してしまいますが、行かれなかった方も本書を見れば、ある程度展示の雰囲気がつかめると思います。展示会場をそのまま写真で収めているため(制作日数が限られている図録の編集方法としては、これはなかなか上手いアイディア)、実際の展示物を見るのとかなり近い感覚です。オールカラー、さらに雑誌「アーキグラム」の復刻サンプルも挟みこまれるという手の込んだ造本で2800円とはずいぶんお買い得な気がします。

ただ、テキスト部分が非常に少なく、個々の展示品についての解説はありません。だから、純粋に写真を見て楽しみ、巻末の磯崎新のアーキテクチャーメンバー、ピーター・クックへの貴重なインタビューを楽しむ、という本ですね。

最近、美術館と出版社のコラボレーションによる図録、というのがますます増えてきました。コラボの仕方によっては、美術館側では経費を節約できるメリットもあるのでしょう。図版の使用料が発生するような展覧会では本の価格が上がりすぎるのでできないだろうし、美術館に行かなければ買えない、という希少性は薄れますが、展覧会自体の文化全体にもたらす意義を考えると、展覧会に行かれなくても、または終わったあとも図録が買える、という動きは今後も広まってほしいと思います。

ピエブックス 2005年
A4変型 128ページ
ISBN:4-89444-419-4
2,800円

本のHPはこちら

展覧会の感想文はこちら
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by silverspoonsjp | 2005-03-27 13:15 | 素敵なヴィジュアルの本