本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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もう一つの中世像―比丘尼、御伽草子、来世/バーバラ・ルーシュ

日本人は“日本人論”が好き」だと、揶揄を込めて言われたりします。自分が人からどう見られているか、気にしすぎなのだと。
確かにそういう面はあります。でも、自分の場合、ついついその手の本を読んでしまうのは、そこに「不思議を見つける心」を感じ取れるからなんです。
 日常生活の中で、いろいろ発見ができればいいのですが、見慣れたものは往々にして素通りしてしまうもの。当たり前だと思っていることに疑問を投げかけてくれるのは、やはり外部の目なのではないかと思うのです。
 
本書の著者・バーバラ・ルーシュ氏は、アメリカ、そして日本でも、日本文学といえば平安や江戸のものしか注目されていなかった時代に、日本の「中世」に関心をよせた、鋭い眼力の持ち主です。
彼女は「中世」研究を進めるうえで、手垢のついた観念(下剋上、暗黒の時代、幽玄、わびなど)、方法論(階級主義など)、史料を採らず、新しいアプローチを試みています。その結果、階級を越えて広く日本の中世を覆う価値観や精神のエッセンスを提示しているのです。
 
そういうわけで、全体に渡って非常に刺激的な内容ですが、『平家物語』や奈良絵本に触れた章の一節をご紹介します。

…日本の中世小説をアメリカの大学院の学生に読ませたときの反応を披露したいと思う。彼らは、物語が終わりに近づくまで、ときには深く感動し、結構楽しみながら読む。しかし、物語が終わりに近づくにつれて態度が急に変化し、読み終わるや否や怒り出すのである。なぜ、この主人公はああしなかったのか、あんなに苦しんで努力したのに、なぜ最後に運命に身を委ねたのか、なぜ最後まで自分に忠実であろうとしなかったのか、というような質問を発し、物語の終わり方に納得しようとしない。こうした反応を目の当たりにするたびに、わたくしはいつも国民性の違いの恐ろしさを痛感する。国民性とか、ある国民の世界観といったものは、普段はあまり表面に出てこないだけに、ひとたび表面化した場合の問題の大きさにびっくりさせられる。

読んでるときは気づきませんでしたが、抜き書きしてみると、まさか学生に『指輪物語』を読ませたのでは(^_^;)と一瞬思うような内容ですねー。もちろん違いますけどー。)
著者は、日本人の国民性が一番よく現れているのは室町時代の小説であるといいます。当時は御伽草子全盛の時代でした。これらの物語群に、著者は日本人の創造性を見るわけですが、詳しくは、ぜひ実際に本書をお読みになっていただきたいと思います。

ISBN 4‐8124‐0738‐9
210cm  288p  思文閣出版 1991年


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by silverspoonsjp | 2004-04-22 20:26 | 人文科学の本