本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

オススメSF その2 透き通った美しさ-「老ヴォールの惑星」

a0003079_253883.jpg
何だろう、と思わせる美しい表紙が印象的です。

表題作は、熱風の惑星サラーハで風を呑んで暮らす生物たちの物語。
表紙の絵は彼らを描いたものです。
彗星の衝突を予見した彼らは、かつて老ヴォールの話していた「別のサラーハ」を思い出します。滅亡の前に何とか他の世界と交信したい…そんな彼らの切ない願いは叶うのでしょうか。

  降伏の点滅を確認すると、クーリシュは降下し、ソンボーの下に回り込んだ。
  「やあ、ソンボー。六百五十日前は世話になったね」
  「クーリシュか。気まぐれで乱気流から助けてやったのが仇になったな。あの時の礼がこの仕打ちか?」
 「恩を仇で返したりはしないよ。今日は喧嘩じゃなくて話し合いに来た」
  (中略)
 「夜側に行って嵐から離れよう。食事はあきらめておくれ」

  
会話のやりとりになぜか宮沢賢治の「やまなし」を連想しつつ、ラストシーンではSFを読んでて初めてボロ泣きしてしまいました。

他にも、陸のない惑星へ墜落してしまった男の物語「漂った男」など4編が収録されています。巻頭作品「ギャルナフカの迷宮」を読むと、努力、友情、勝利をそのまま小説にするっていうのは何だかなーと思わなくもないんですが、ヘンに斜に構えてるうえ暗くてジメジメ、希望のないSFばっかり読んでいると、こういう楽天的な、人間の良識を信じるタイプのお話にしみじみしてしまいます。

そうですよ、SFには明るい未来や人類の知恵を讃えるものだってたくさんあるんだから…。

ISBN 4150308098
早川文庫
小川一水 著

中編
ハードSF度   ★★★☆☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★☆☆☆ SF(サイエンス・フィクション)度 
個人的好み   ★★★★☆(表題作がとても好き)

〈お好きかも〉
日本人作家の作品が読みたい方
叙情的な作品が好きな方
トラウマになるような暗い作品はイヤな方
ジュブナイル系の読みやすい文体です。

追記:今頃気づいてすみませんが、本書所収の「漂った男」が2006年度星雲賞短編部門を獲得しました。おめでとうございます!

その他のオススメはこちら
[PR]
by silverspoonsjp | 2006-07-29 02:10 | センス・オブ・ワンダーの本