本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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モラルと裁量

皆様こんばんは。

時事問題はこの場にはあまり持ち込まないつもりでしたが、今回は本と無縁ではない話題で、かなり考えさせられたので取り上げてみました。

ご存じの方も多いかと思いますが、「日本経済新聞」に掲載されたエッセイに関することです。
この問題についての「毎日新聞」による解説はこちら↓です。

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060824k0000m040165000c.html

いつまでリンク先が保存されているかわかりませんので概要を記すと、小説家が新聞紙上に寄稿したエッセイが「飼い猫を避妊するより、敢えて子猫を処分することを選んだ」という内容だったため、新聞社に抗議が殺到している、というものでした。

この問題について、私は新聞社に抗議をされた方から伺って知りました。エッセイを書いた本人はもとより、このような文章を掲載した新聞社にも社会的責任がある。実際に飼い猫の保護にたずさわり、いろいろご苦労もされている方のことですから、このように思うのは当然のなりゆきです。

ただ、私がここで考えようとすることは内容の是非ではなく(もちろん、内容に非があると思う人が多いから問題になるわけですが、いったん置いて)、掲載の是非についての問題です。

自分が新聞社の立場だったらきっと困っただろうな…というのが、話を伺った直後の偽らざる感想でした。エッセイの作者は問題提起を目的として書いたという趣旨のことを冒頭で明言しています。そうなると、このエッセイの掲載を断るということは、問題提起をする自由を奪うということになりかねません。しかもこの欄は著者の名前が出る記名記事なのです。

マスコミがスポンサーや圧力団体の意向にへつらって、記事を掲載するまえに自主規制してしまう…という書き手側の怨嗟の声はこれまでにも聞いたことがあります。しかも、相手が直接抗議してこないというだけで、書く側のモラルとしてどうかと思う記事は他にもたくさんあるではありませんか。

しかし、そこまで考えたところで、私は思い直しました。これが記者の書いた文章なら、恐らくこのままでは掲載されないでしょう。社の方針としては載せないものを、記名原稿なら載せるというのもおかしな話です。いまどきは忘れてるのかも知れませんが、新聞がまだ社会の木鐸、天下の公器なのだとすれば、動物愛護の精神にもとるような文章をフリーパスで載せてよいとは思えません。

これほどネット上にタイムリーな情報が溢れているというのに、まだ既存メディアに存在意義があるのだとすれば、それは内容にチェック機能が働いていると読み手が信頼を寄せているからではないでしょうか。それを自ら破壊しようとは…。

しかしそれでもなお、心の片隅では迷うところもあるのです。新聞社として、何らかのコメント付きだとしても載せてはダメなのか。新聞ではなく、雑誌だったら?この作者個人が単行本として出版したいと言ったら、出版社はノーと言うのか?

否が圧倒的にせよ、いちおう賛否両論ある問題についての原稿は、提出された側なら、どう考えれば良いのでしょうか。
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Commented at 2006-08-29 00:25
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by silverspoonsjp at 2006-08-29 02:21
☆コメントありがとうございます。
このエッセイには、法律に違反したという告白が含まれているので、事実だとすれば、疑問の余地なく法律の制裁を受けてしかるべきです。

ご指摘の通り、事の重大性を新聞社が認識しておらず、議論もなく掲載してしまった可能性は多いにあります。が…著者は糾弾を覚悟していると書いている以上、世間の非難、法律の制裁を受けてでも公の場で言いたかったのでしょう。

このエッセイは誰にとっても身近な問題なので物議をかもしましたが、違う分野では、私が担当者なら到底容認できない、事実無根の中傷記事や人倫にもとる記事が堂々と新聞・雑誌に載っているので常々驚かされます。こういった文章を掲載するかどうかに出版社の見識が問われるのでしょうが、「敢えて載せる」という行為は、勇気が要る方向では採用されず、露悪的な方では積極的に採用されるように思えてなりません。
Commented by mog at 2006-08-29 12:51 x
☆銀の匙さん、週明けの21日に愛護協会に電話して、ああいう記事を掲載しているのは何も日経だけではないことを事務局長からお聞きし、一層驚きと落胆を深くしました。
 私自身としてはかなり過激な行動に走っているかもしれない、と思いつつメールを出し、尚且つ返信の要望を求めて電話しましたが、詰まる所日経としては「隣の空き地に子猫を捨てた」のは作家自信であり、わが社は掲載しただけなのでなんら問題はなく責任の云々など論外である、購読をやめたいのならどうぞ、ご勝手に。」という想定内のお返事に尽きました。タヒチでやってる事は日経は関係ない、書いた作家に全て帰着する問題である、という事です。他の新聞社・メディアで取り上げられ急遽弁明の記事が24日に掲載されていましたが問題になった「崖下に放り投げた」は見事に「隣の空き地に捨てた」に“編集”されていました。何をかいわんや、ごまめの歯軋り、徒労の夏ばて、と言う終末になりそうです。
 >勇気が要る方向では採用されず、露悪的な方では積極的に採用されるように思えてなりません。 社会的規範、モラル、売れれば、総てこともなし、なんでしょうか..。 近々彼女の新作が出版されると聞きました...脱力。
Commented by 銀の匙 at 2006-08-31 23:52 x
☆mogさん
お疲れのところ、コメントをどうもありがとうございます。お返事を書きましたが長くなってしまったので、今日のところにエントリーしてお返事に代えさせて頂きます。

しかし、新刊の良い宣伝になっただけだったら、本当にはぁ…。ですね。
by silverspoonsjp | 2006-08-28 23:02 | 本にまつわるエトセトラ | Trackback | Comments(4)