本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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幻想文学12号 特集・インクリングズ

a0003079_0504.jpg皆様お久しぶりでございます。締め切りに追われ、一週間があっという間でございました。

さて、映画も終わったこととて、「指輪物語」関連の本をまたひっくり返して読んだりしております。こちらは『季刊 幻想文学』のバックナンバー、第12号「インクリングズ」特集でございます。1982年に創刊されて以来20年、残念ながら終刊になったものの、「夜想」誌の復活劇もあったことですし、ぜひ頑張って頂きたいものです。

この特集号は相当数が出回ったらしく、バックナンバーとしては品切れしているものの、古書店で割合簡単に見つかります。

1985年刊のものですが、別役実、蜂谷昭雄、赤井敏夫、中村妙子…と執筆陣は超豪華版。さらに、瀬田貞二さんを語る対談にはトールキン教授の伝記を訳した菅原さんが参加しているなど痒いところに手が届く感じで、よくわかった人が編集したんだろうなあと感心します。

インクリングズそのものの考察に始まり、メンバーであったC・ウィリアムズ、C・S・ルイスの短編の邦訳、トールキンの書簡集の訳なども掲載されています。論考もきわめて示唆に富むものです。たとえば、『シルマリルの物語』と『指輪物語』の関係に触れ、神話と文学との有機的相互作用の反映を見る一節-

「神話は釈義に対して基本的な枠組みを提供するだけで、釈義が神話の意味内容を比較的自由に解釈することを妨げない。そしてまた逆に釈義が成立するたびごとに総体としての神話は変質を蒙り、そこに新たな意味内容が付与されていくのである」
(「インクリングズの中のトールキン神話」赤井敏夫)


また、書簡集中の翻訳にはこんな一節も-

「我等を試みにあわせず、悪より救いたまえ」という祈願は、普通考えられているよりも実現が難しいことだ。『指輪物語』での概念は、万象には(少なくとも)二つの面が、個人の人生と成長という立場と世界の歴史の流れという立場があるというものだ。ところが人はそのどちらにも当てはまらない状況に追い込まれることもある。私はそれを〈自己犠牲的な立場〉と呼んでいる。世界の命運が、一個人にかかわっており、成就の為にはその人が耐えうる以上の肉体的・精神的な苦痛を必要とするという状況のことだ。ある意味では彼は失敗することを、誘惑に負けることを、他人の意志に屈することを運命づけられているのだ」
(1956年・ストレイツ宛の書簡)


作品の背景についてさらに知りたい方は必携の1冊。お勧めです。
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by silverspoonsjp | 2004-06-12 00:51 | 「指輪物語」関連の本 | Trackback | Comments(0)