本と読書をめぐる冒険


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エリアーデ幻想小説全集 第2巻

ルーマニアの作家、ミルチャ・エリアーデの作品集。

収録されている11編のうち、一番有名なのは「ムントゥリャサ通りで」でしょうね。ただ、この話は手強いので、他のを見てみましょう。

「十四年昔の写真」
この作品は、奇跡を起こすという説教師のもとへ、彼のおかげで妻の病が治ったと感謝しに来る男の物語。男は外国人で言葉が上手くない、という設定になっていて、何とももどかしい会話が展開します。

回りくどく、なかなか核心に入らないモノローグ、周りで聞いている者たちの苛立ちと勝手な解釈、実際に起こった出来事は何だったのかという考察…この辺、「ムントゥリャサ通り」と同じ手法ですが、短いだけに輪郭がはっきりしています。男の言っていることは、本人にとっては紛うことなき真実なのに、聴衆や、話に登場する人物にとっては全く違う意味合いを持っているのです。

これこそが幻想文学だと言われれば、はぁそうですか…と言うしかないんですけど、どうも私にはファンタジックな空想物語とは読めないんです。私の幻想文学の定義が間違ってるのかもしれませんが…。

エリアーデは宗教学者だそうですが、「十四年昔の写真」で描いていることは、宗教というものの本質を突いてるんじゃないかと思いますし、実は人間の認識の仕方をものすごくリアリステックに描いたとすれば、こうなるんじゃないかという気がするのです。

この本の詳しい内容は、作品社のHPにてどうぞ。

ミルチャ・エリアーデ 著 
住谷 春也 編 
作品社
四六判  555ページ 5,040円
ISBN 487893576
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by silverspoonsjp | 2006-11-06 22:42 | センス・オブ・ワンダーの本