本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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川柳でんでん太鼓/田辺聖子

最近、恐れ多くも芭蕉の句を中国語訳する機会があり、日本の短詩についてちょっと考えさせられました。他の言語に訳してしまうと、「だから何だ」って感じになっちゃって、難しいんですよ。

試訳したのを見てもらうと、「漢詩の起承転結の4行のうち結の行だけしか書いてない」みたいな印象を与えてしまい、難渋しました。切りつめたミニマムな表現というのは、余白のある絵と一緒で、書いてない部分があるということを察してくれない読み手に当たると困っちゃうんですよね…。

しかし、まだ芭蕉の方がやりやすかった、というのが、川柳を読んでみてわかりました。詩の訳は難しい。でもコメディはもっと難しいんですね、これが。

川柳といえば、私あたりがすぐ思い出すのはサラリーマン川柳。でももうこの辺でも、翻訳してわかってもらうのは難しそうだし、世相をあまりにも良く反映してるせいか、10年もしたら日本人にもわからなくなりそう。

と思っていたところ、ちょうどこのサラリーマン川柳が始まったくらいの時の本を読む機会がありました。田辺聖子さんが編んだ「川柳でんでん太鼓」という本です。

川柳がそういうものなのか、あるいは選んだ人によるものなのか、気取りがないけど、俳句とはまた違った視点ではっとさせられます。

「賞のないのが川柳の栄光」という精神がいかにも大阪らしいです。大阪弁がまた良く合ってるんですよね~。

「命まで賭けた女てこれかいな」   松江梅里

「院長があかんいうてる独逸語で」  須崎豆秋

 後のなんか、東京弁だったらシャレにもなりません…。ただ言葉の違いだけじゃなくて、編者いうところの「人や世間を見るその心の底に、愛というか、批判性というか、人生への見識がなくてはかなわない」という点を良く押さえてありますよね。

ゆるくカテゴリーに分けた編集になっていて、動物を詠んだものがお気に入り。

「悪い事と知ったか猫もふり返り」  岸本水府
「籠を出たうれしさに鶏けつまずき」 上松爪人
「溝まで来て ひよこ一ぺん考える」 刀三
「水すまし思案は少し流れてみ」   東野大八
「立ち話長うて犬も坐り換え」     橘高薫風


あるあるある…。かと思えば人間様も

「社長と昇ったエレベーターは遅刻の日」竹志
「人間を変えられないで職を変え」植松美代子

だの
「酒ついであなたはしかしどなたです」橋本緑雨
「落ちぶれてまだ鍵だけをたんと持ち」吉川雉士郎

だの…。

解説文も川柳にふさわしい内容なのが嬉しいです。
ちなみに私が一番好きだったのはコレ。

「言いますけど大屋政子に勝てますか」 忠三郎

え。大屋政子を知らない?んーそりゃ困った…

講談社(現在は文庫に入ってます)
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by silverspoonsjp | 2007-08-09 23:27 | センス・オブ・ワンダーの本