本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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HENRY DARGER'S ROOM 851 Webster

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映画「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」を観たついでに、映画館で買った本です。

以前、原美術館で展覧会を観たときに、彼の作品とともに、その部屋の様子が写真で展示されていました。

ダーガーについては、良く知られていると思いますが、一応説明しておくと、掃除の仕事の傍ら、生涯にわたって1万ページ以上におよぶ「非現実の王国で」という小説を書いた人です。小説の中ではヴィヴィアン・ガールズ率いるクリスチャン国の少女奴隷たちが反クリスチャン国との戦いを繰り広げ、原稿があった部屋には、魅力的な色彩で描かれた、この物語に題をとった絵が多数残されていました。

映画によると、彼は自伝で、不遇だった幼少期と、罰と虐待に満ちた少年時代を過ごしたと書いているようです。その辛い現実を反映させた物語の中では、彼自身はあるときは少女たちの理解者、あるときは少女たちの敵となり、最初はハッピーエンド、そのすぐ後にアンハッピーエンドを追加した-ある意味で彼にとっては現実そのままな-世界に生きました。

タイトルこそ「非現実の王国」ではあったけれども、自由になる時間のほとんどを、部屋の中でその創作に費やしたダーガーにとっては、そこは現実世界そのものだったでしょう。そして、その世界が生まれる母体となった彼の部屋も、特異な秩序に満ちていました。

ダーガーは、カトリックの信者だったことと興味の方向性から、部屋の中にたくさんのキリスト教関連コレクションや各種資材を溜め込んでいて、引き延ばされた写真からわかるそのディテールは興味深いものでした。

モノがいっぱいあるのにテイストが統一されているというか、常識では伺いしれない秩序がそこに隠されているような感じなのです。

彼は40年間も同じ部屋に住んでいて、介護施設に半ば強制的に移されたとき、部屋は混沌とした状態でした。絵を描くための材料をゴミ箱から漁っていたそうなので、よくいう「ゴミ屋敷」のような感じだったのではないでしょうか。絵を発見したのは大家さんだったそうですが、よくも気がついたものです。

一方、ダーガーにとって、その部屋(つまりは、彼の王国)から引き離されたことは大変な苦痛だったようです。

この本に載っている写真はかなり整理が進んでからのもののようなので、創作が行われていた当時の混沌とした様子からはかなり遠いと思われますが、それでも、ある程度、オリジナルの状態を想像することができて興味深いです。

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本書25ページより。

Amazonでの取り扱いはまだないみたいで、紀伊国屋ウェブでみつけました。著者の一人、小出さんの文章が載っているので参考に。

インペリアルプレス
2007年
3150円
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by silverspoonsjp | 2008-04-19 23:23 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)