本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

ゲーデル、エッシャー、バッハ あるいは不思議の環/ダグラス・R・ホフスタッター


ある日突然ぽんと、考えを違う次元に投げ出してくれるという点において、数学はもっともセンス・オブ・ワンダーに満ちている領域といえるかも知れません。その表現方法が難解であるゆえに、「数学の文法」をつかみそこねた私のようなものにとっては、指し示された不思議を存分に味わうわけには到底行かないのが残念ですが。

この本のバッハは、18世紀の大バッハのことで、音楽家。エッシャーは「騙し絵」で知られる20世紀の画家。ゲーデルは20世紀の数学家です。お互い、まるで関係なさそうではありますが、この本では彼らがそれぞれの分野で提示した「不思議の環」について語ります。

直感的にとらえることのできる「不思議の環」はエッシャーによって描かれたものかも知れません。目に心地よいパターンを繰り返しながら、『メタモルフォーゼ』に見られるように、主題からどんどん離れてゆき、また元へ戻るのです。絵は有限であるのに、そこには「無限」が内包されています。

バッハの例でいうと、彼は潜在的な無限が存在するカノン、「諸調によるカノン」を作曲します。プロイセンの宮廷に招かれたバッハは、王に与えられた主題を使ってカノンを作ります。主題からどんどん遠のいていくように聞こえるカノンは、転調を繰り返して高まってゆき、1オクターブ高くなって元の調に自然に戻ってゆくのです。バッハはこの音楽の無限性を意識し、余白に「転調が高まるとともに、王の栄光も高まりゆかんことを」と記しているそうです。

そして、この「不思議の環」を数学的体系の中に発見したのがゲーデルでした。 
 
これらのパラドクスには、共通の犯人がいるように見える。それは自己言及、あるいは「不思議の環」性である。そこでもしすべてのパラドクスを追放するのを目ざすなら、自己言及とそれをひき起こすものを一切追放してしまえばよさそうなものではないか?これは見かけほどやさしいことではない。どこに自己言及が起っているかを見わけることさえ、むずかしいことがあるからである。(中略)

 次の文は誤りである。
 前の文は正しい。
 
全体として、これらの文はもとのエピメニデスのパラドクスと同じ効果をもっている。しかしひとつひとつは、どちらも無害であり、しかも有用でありうる文である。不思議の環という非難はどちらの文にも結びつけられない。ただ両者がたがいに指示しあうそのしかたに結び付けられる。


残念ながら私はこの本を、私のレベルでしか読むことができませんでした。読む人が読めば、もっと異なるものを、この本から引き出すことができるでしょう。そんな期待がもてる本。

野崎昭弘、はやしはじめ、柳瀬尚紀 訳
ISBN-4-8269-0025-2
白揚社 5500円 
[PR]
トラックバックURL : http://palantir.exblog.jp/tb/742569
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from フランス語初級文法丸わかり at 2005-10-23 14:41
タイトル : 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』新序文付決定版
ゲーデル、エッシャー、バッハ あるいは不思議の環/ダグラス・R・ホフスタッター この書物、あるいはその著者ホフスタッターには思い入れがある。 今を去ること二十四、五年前(ううっ)、浪人しながら英語版を読んでいたのだ。 ただでさえ難しい内容・・・しかも英語・・・ 四苦八苦、七転八倒しつつ、ほとんど想像で(?)読んでいたような気がする。 その日本語訳がでたのが、はや二十年前であったか・・・ 「ねね、英語版、読んだんだもん!」という変なプライドから、遂に日本語版は買わずじまいだった。 こちらの...... more
Commented by at923ky at 2005-03-20 18:39
はじめまして。弥一と申します。「センス・オブ・ワンダー」でネット検索してこのブログサイトを見つけました。一覧して、即、お気に入りとなってしまいました。特にこの素人にはやや難解な、でも今となっては小生には懐かしい本が扱われていたので、嬉しくなりました。
毎日の閲覧のルートに楽しみが増えました。それでは、また。
Commented by silverspoonsjp at 2005-03-21 23:42
☆弥一様

はじめまして!お気に召して頂いてありがとうございます。(*^^*)
素人にはやや難解どころか、果たしてこの本を理解しているのかすら自信がない大著でありますが、自分なりに大変面白く読みました。弥一様のお読みになっての感想は如何だったでしょうか。

早速そちらのブログにもお邪魔いたしましたが、議論の分かれる問題についても取り上げていらっしゃるのに感銘を受けました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
by silverspoonsjp | 2004-07-25 23:18 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback(1) | Comments(2)