本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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ゲーテ改めブラビって…「論文の教室」

以前、いつもお邪魔してるブログに、他人の読書ブログから文章を頂いて読書感想文を書いちゃう子たちに向けて、びしっ!と注意している記事があがっていて、その毅然とした姿勢に、さすがだなーと感心したものでございますが、そうは申せど、ヘタレ学生だった自らを省みますに、あの頃ネットがあったら、注意する側よりされる側だよなーとつい思っちゃいました。

だいたい、読書感想文って何なんですかね。

思うに、まずは本を読んで欲しいから、課題として出してるんでしょうね。だから、盗作うんぬんより前に、読みもしないのが一番いけません(本なんて強制されて読みたかねーよ、というあなたは私のお友達ですが、食わず嫌いということもあるから、ま、学生のうちは我慢してね)。

次なるハードルは、振り出しに戻るようですが、何を書いたら読書感想文になるかってことなんですよね…。こういう宿題を出す学校では、ちゃんと指導してるのでしょうか。

私も学生のうちは全くわかってませんでしたが、国語教育の研究会とかに顔を出すようになって、ようやく「読書感想文」のツボというか、心がまえがわかりました。

どんな感想文を書けば、点がもらえるのか。

ずばり、答えを言うならば、「読書感想文」とは「作文」の延長上にあるのであって、本のあらすじ紹介とか、本の中身がどんなに面白かったかとかはメインではなく、自分や家族、友達の体験と本の内容をリンクさせ、本の内容に「自分」がどう啓発されたか、ということが書いてないと、ダメみたいなんですよね。最近は「読んだ本を友達に紹介してみよう」みたいな課題も出つつあるようですが、基本的には「感想文」=「自分語り」ってことらしい。

道理で、大人の書いた書評を読んでもそんな芸風の記事が混じってるワケですよ。

書き手が有名人で、読者が書き手自身に興味があるならいざ知らず、普通、読み手が知りたいのって本の中身ですから、読者様からお金を頂く書評記事で、読書感想文的アプローチはダメダーメ☆

じゃどういうのが、お金をもらえる記事なのかといえば、それはつまり、人を読む気にさせる書評ですね、はっきり言って(評論やレビューは別ですが)。それに、書評自体も読んでもらわなくちゃいけませんから、上手い人ほど発見のある書評を書きます。

…と、思っていましたが、それは旧メディアの発想で、ネット上ではまた違うから、面白いもんですね。ブログであまり「書き手」の色が出ていない、無色透明な書評記事ってつまんないですもん。

ありゃ、今日書きたいことから、話がだいぶ逸れちゃいました。

国語の授業でやる「小論文」なんかも、「読書感想文」と似たりよったりの状況で、何をどう書くかという訓練を受けた学生は少ないんじゃないでしょうか、というとこに話を持って行きたかったんですが、大学の1,2年生を受け持ってる先生には、学生が論文の書き方を全然知らないと頭を抱えておられる方が多く見受けられます。えーまさかー?!と思われますか。

で、取りいだしましたるは本日ご紹介しようというこの本、「論文の教室-レポートから卒論まで」でございます。この本は大変売れているらしく、6年前に出て今年でもう28刷!
読めばナットク、こりゃお買い得です。

この本、1120円なんですが、1ページ最低2カ所は笑えてこの値段、一笑い2円はおトクですよね…って別にお笑い本とかじゃないんですけど(計り売りでもないです)、人目のあるところで読むとアヤシイ人になりそうなので、取り扱いには十分気をつけてください。

中身は至ってシンプルで、これまで論文をきちんと書いたことがない人向けに、、論文とはどういう文章で、どういうことに気をつけるべきか、どうやって論文を書いたらいいのか、手取り足取りお教えしましょうという、ありがたいものであります。

そして、まえがきを読んでもわかる通り、
この本の特徴はこれ-

「私はなるべく多くの方々に読んで頂きたいと念じつつ本書を執筆した。…さて本を売るにはどうしたらよいだろう。タイトルを『ハリー・ポッターと魔の論文指導』にして、腰巻きに『ワーナー…ブラザーズ映画化決定!』と印刷してもらえばよいのではないかという名案も浮かんだ…」

あぁ、ふざけてるみたいですけど、読んでもらえばこんなおちゃらけたまえがきさえ、論文の書き方に乗っ取って書いてることがわかるので、書棚に戻さないでください…。

著者も言うとおり、この手の本の最大の欠点は、最後まで読み通せないことなんです。そう言われて私も類書を読んでみましたが、確かに、読み通せたのはこの本だけ。それはギャグ満載だから(だけ)ではなく、挙げてる例が面白くてしかも的確だからです。

まずは、某大学工学部の「作文ヘタ夫くん」(ベタだなあ…)のダメダメレポートのダメっぷりを分析するところから話がスタートするんですが、あー、あるあるあるあるこういうレポート(っつーか、仕事でこんなのばっかり読まされてるんですけど…じゃなくて私もうっかり書いてますごめんなさい☆)って身につまされるので、だまされたと思って、本書21ページから25ページまでだけでも読んでみてください…と言っても、すぐに見られるとも限りませんので、意地悪しないで分析の一部を引用させて頂くと…(後でぜひ、実際の例文もご覧になってみてくださいね)

「ヘタ夫の論文には、私が十数年の教師生活で会得したダメ論文作成法のノウハウが凝縮されている。いやなノウハウだけど。
 とくに(1)課題を選んだ理由ではじまる論文 
  (2)「ここで終わりにさせていただきます」で終わる結婚式のスピーチみたいな論文
  (3)『広辞苑』攻撃を含む論文
  (4)単位くださいと書いてある「クレクレタコラ論文」には、何度もお目にかかった。教員は「単位くれ」と言われると、反射的に「やらね」と思うので、本当に単位がほしいなら絶対にこういうことを書いてはいけない」


どうです?実用的でしょ(そういう問題か)?

この本が私が学生だった1年前に出ていればなあ(大ウソ)
いえいえ、社会人になってからも、この本を読んでいなかったのが人生の損失と悔やまれてなりません。第一、添削不可能な論文書いてくる人に、さりげなくプレゼントすれば時間の節約になったのに…あーいえげほげほげほげほ。自分のをまず直せですすみません。

余計なお世話ですが、書店に並べるときは、NHKブックスの棚はもちろん、国文とか学習参考書の棚よりも、松本人志とかの隣の方がいいんじゃないかと思います。なお、今回のエントリータイトルに関する話は、まえがきとあとがきに出てます。

論文の教室
戸田山和久
NHKブックス
日本放送出版協会 2002年
1120円
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Commented by GANDALF at 2008-12-08 20:54 x
爆笑させていただきました。^^これは、ぜひとも読んでみなくては。

読書感想文。私も(代筆も含め)何度か書かされましたが、イマイチ何を書けばいのやら?だったのですが、なるほど作文の延長でしたか。目から鱗でした。
Commented by foggykaoru at 2008-12-08 22:57
そんなに笑える本があるなんて。読んでみたいなあ。

子供時代、読書感想文の難しさは「本の内容」も明らかにしつつ「感想」を書くことにあるように思ってました、、、ような気がします。
今書いているのは原則的にあらすじは無しといういうところが全然違う。だって自分が読んだ本の(細かいことはともかく)あらすじはいくらなんでも忘れない(と思うけどそのうち忘れるようになるんだろうか?)。細かいけど自分にとってツボだったこと、忘れたくないことだけ書いてるんです。だから私のは提出用感想文にはならないんです。ふふ、ざまーみろ!(←あらお下劣)
Commented by silverspoonsjp at 2008-12-09 02:01
☆GANDALFさん
受けて頂いて嬉しいです。「ハリー・ポッターと魔の論文指導」も読んでみたいですよねー?フロドの添削とメリアドクによる注釈つきならなお可でしょうか。

読書感想文の代筆とは、さすが賢者様。でも、良い点を取るにはそらぞらしい作文をしなくちゃいけないとは、賢者様でも想定外でしょうね…。
ネットで読書感想文コンクールの受賞作品を検索してみると、間違いなくセオリーに乗っ取ったものが選ばれてて、悪いけど笑っちゃいます。「私も主人公の◎◎みたいに、目標に向かって努力していきたいです」と思って書いてる子がどれほどいるんでしょうか…ナゾ。
Commented by silverspoonsjp at 2008-12-09 02:15
☆foggykaoruさん
いやー、教育的指導というのは大事ですよ。紹介した本にも、剽窃は自らを高めるチャンスを放棄するサイテーの行為だ、とありました。ともかく、きちんと知らしめる(?)ことは必要です。だって、ひどいのになると、エントリー記事の内容もよくわかってないのに丸写しするんだもの。

あと、本を選ぶところから自由な感想文でしたら「あらすじ」は必要なんですが、課題図書の場合は「あらすじ」はたぶん不要だと思います。それより何より大事なのは、「私はこの本を読んで、これからは◎◎しようと思いました」って部分らしいですよ。

間違っても、
「私は◎◎を読んで、これからは道路を間切って渡ろうと思いました」
「私は◎◎を読んで、キリスウンゴルを通るときは後ろ斜め上に気をつけようと思いました」
とか、ブログに書かないように気をつけようと思いました…。
by silverspoonsjp | 2008-12-07 23:49 | 人文科学の本 | Trackback | Comments(4)