本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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カテゴリ:英語の本( 18 )

こちらはシーズン1に関するエントリーです

私がいま一番ハマってる番組はこちら、

「おとなの基礎英語」

再放送の途中からなのですが、それが良かったみたい。ちょうど舞台が香港なので、興味を持って見ています。シナリオを書いた人が詳しいのか、コーディネーターの人が詳しいのか分かりませんが、ちゃんと香港らしい小ネタも織り込んであって、単にロケの背景じゃないのがいいところ。

取り上げられるのは基本、中学3年間で習った表現だけなのに、結構口に出てこなくて見ててショック…。

月~木の毎日たった10分の番組ですが、とてもよく考えて作られていると思います。シーズン1は、日本から、香港で働く姉の留守番を頼まれて出かけたミカが、いろいろな出来事に出合う…というストーリー仕立てになっています。

スキット中の「今日のフレーズ」の場所だけクイズのような形で伏せられていて、それをスタジオで見ているゲストの千里子さんが太田エイミーさんからヒントをもらって何とか言い当てようと頑張る。できないときは、もう1人のゲストのジェイソンさんが助ける。

で、答えをチェックし、講師の説明を聞いたら、今日のフレーズの箇所からスキットの続きをみる。そのあと、もう1回「今日のフレーズ」についてスタジオであれこれトークをして、似た表現も紹介。毎週最後の回には表現をチェックするテスト…という流れになっています。

番組のテーマは「伝えたい 心から 届けたい 素直な気持ち」という、オープニングの歌詞が、実によく表していると思います)。


で、スキットがほのかにラブストーリーになっていて、ついつい続きをチェックしてしまうんですねー。そういうお話の妙もさることながら、番組コンセプトが最近の外国語学習のトレンドをちゃんと押さえているなーさすがだなーと思うわけです。

たとえば、こんなところ。

・舞台をアジアに設定している。
・スキットの登場人物はいずれも英語が母語ではない。(今回は一人が香港人で一人が日本人)
・主人公は女性。
・中学で習った簡単な表現ではあるが、自然な会話で使われる英語がターゲット。
・さりげなく、英語を使って「何かができる」ように仕組んでいる。
・さりげなく、何度も復習している。
・さりげなく、追加表現も覚えるように仕向けている。
・主なスキットは英語でも、現地の言葉(今回は広東語)や文化を尊重する姿勢を崩さない。
・視聴者代表の千里子さんはごく一般的な日本人の英語レベルで共感できる。
・スキットに字幕をつけたり解説したりせず、まずは自分で内容を推測させようとしている。

たった10分で本当にスゴイ。

まず、舞台設定。ひところの、英語はアメリカ人かイギリス人のお手本を見習うもの、という常識をぶっ飛ばし、お互いの言葉が通じないときには共通語としてとりあえず英語を使っとけ!という「とりあえず英語」を前面に出してます。放送大学の「発音をめぐる冒険」という、これまた私の好きな番組があるのですが、その番組も、この「オトキソ」ほどぶっ飛んではいないものの、いろいろな地域のいろいろな英語の発音や表現を「可愛い発音ですね」「素敵な表現ですね」と肯定しています。

英語だけじゃなく、フランス語会話なんか見ると、いまや「花のおパリ」みたいな内容じゃなくて、アフリカ出身のフランス語話者の話題とか、きっちり出しています。いまは、こういうのがトレンドらしい。

主人公が女性というのも、昔はあまりありませんでした。最近は多いですね、こういうパターン。

英語が自然なのもポイント高いです。「おとなの」というだけあって、日本語から考えたらこう訳すけど、ふつう英語ではこういう言い方をする…という微妙なところをついてくるフレーズが多いです(しかも、なぁんだ、というくらい簡単な表現が多い)。

また、英語が話せるようになるというより、修理をお願いしてみたり、困った状況に救いを求めたりなど、何か達成したいことができるほうに目的があって、それを英語でするならどう?みたいな状況設定になっているので、勉強のために勉強してる感が皆無なのもいいですね。

それに、やむなく英語で話すとはいえ、現地語は現地語でちゃんと使われている、できればそっちにも興味を持ってね、世の中、英語一色じゃないんですよ、という隠れたメッセージが込められているのも、今風です。

そして、スタジオゲストの千里子さんがさっぱり英語ができない(!)というのも、実にホッとする演出で憎いですね…思いっきりカタカナ英語なんだもん。でも、これでも大丈夫だよ、という力強い励ましを感じます。彼女がまず今日のフレーズを推測して、ゲストが補強して、スキットで確かめて、応用して、番組終了時のあいさつにも使って…とさりげなくはありますが、何度も何度も復習の機会が設けられています。

さらにさらに、私が一番スゴイと思うのは、今日の表現以外のスキットを
・敢えて訳したり、解説しない。
というところ。

テキスト買ったら訳が載ってるのでしょうが、まずはテレビだけを観て勉強してみるのをおススメします。この方法で、相手が何を伝えたいかを「推測」する訓練を積む仕組みになってるんですね。文字に頼らず、音声とシチュエーションから内容を理解しようと集中することは、日本の外国語学習に弱い点。そこをカバーしてる構成はお見事です。

というわけで、この番組、金曜にないのがとても残念。土曜にはまとめて再放送があります。
詳しくはこちらのページでチェックしてみてくださいね。See you!

【追加情報】
この番組、やはり大評判になったらしく、2013年度は続編を放送中。また、シーズン1についてはまとめの単行本が2冊も出ました。


1)CD BOOK おとなの基礎英語 100のフレーズで話せる英会話 (NHK出版)
2)DVD BOOK おとなの基礎英語 シンガポール 香港 タイ (主婦の友)

1)は、スキットの中から今日のフレーズ+αを抜き出して解説し、類似表現も練習できるようにしたもの。
2)は、ドラマ部分だけを収録したDVDと、その訳をまとめたもの。

2)の方がストーリーの筋は追えますが、練習に役に立つのは1ですね。
ドラマがみたいなら2、勉強したいなら1かな。

ということで、See you!
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by silverspoonsjp | 2013-01-11 00:03 | 英語の本
皆様こんばんは。長のご無沙汰でございました。
今年はちょっとウチのが病に倒れた上に、再発を心配しすぎたあまり私まで倒れ、本当に自分でも何やってんだかなーでございました。心配したって治るわけじゃないのにね。おかげでアレコレと滞り、ご迷惑をお掛けした皆様、申し訳ございませんでした。

と言ってるうちに、もう今年も最終日ですが、有終の美で、
今回は一番好きな本で締めたいと思います。

動物のことばが話せる獣医さん、ドリトル先生シリーズの1冊です。
小さい頃、井伏鱒二訳でお読みになった方も多いことでしょう。

このシリーズの英語版は、いろんな出版社からいろんな種類のものが出ているのでどれを選ぶか本当に迷うのですが、今年読んだのは、
Bantam Doubleday Dell Booksから出されたバージョンです。

ペーパーバックでお安い本なのですが、
きちんと原作者ロフティングの挿絵がページいっぱいに使ってあり(←これ重要)、一見分厚く見えますが、驚くほどサクサク読めます。

厚い本だと途中でイヤになっちゃうことあるでしょ?
この本は2見開きか3見開きで1章が終わるように、
原文を上手く圧縮したり、レイアウトを工夫して作ってあり、
そんなに短い割に、どの章もわかりやすく、続きが読みたくてしょうがないような感じにまとめてあります。
これがサクサク読める秘訣なのです。

どの程度オリジナルと近いのか、比べてみようと思っていたのですが、
いまだオリジナルが手に入らずにいます。
第一、ネット書店の書誌情報では、どれがオリジナルなんだか今ひとつハッキリしません。
確実に著者によるイラストが入っているのがどれかも分かりづらいし…。
復刻版というのは間違いがなさそうですが、日本語版の底本になっているのは、そのバージョンではなさそうです。

説明を読む限りでは、オリジナルが書かれた当時の描写に差別的な内容があるために、いま普通に流通しているものには、多かれ少なかれ、手が入っているのだそうです。
だからといって、挿絵を全面的に差し替えなくてもいいと思うんだけど、ああ、挿絵にも差別的なものがあるんですね、きっと。

こういう場合、オリジナルを変更すべきという意見、変えるべきではないという意見、どちらの立場も分かるので、コメントは控えさせて頂きます。
巻頭にエクスキューズを置いて、文章はオリジナルというのは妥当なようですが、子ども向けの本という性格を考えるとベストなのかどうか…

前置きが長くなりましたが、いくつになって読んでも、本当にこの本は面白いですね。

私は、いつも抜群のアイデアを考えついてドリトル先生の窮地を救う、オウムのポリネシアが大好きで、他の登場人物はすっかり忘れていましたが、そういや本の語り手はトミー・スタビンズ少年だったんですよね…。

読んだ年より上の設定だったので(しかも今読んでもすごく大人びてるし)、
自分にとってはドリトル先生と同じくらい遠い世界の人に感じてました。
今の方がむしろ、スタビンズ少年の目を通して物語を見渡せるような気がします。
貧しくて学校にも行かれなかったスタビンズ少年ですが、
音楽を愛するお父さん、優しいお母さんに大切に育てられたというあたりが、
お話のトーンに大きく影響しています。

それにしても、お母さんの英語の丁寧なこと、オリジナルでもこうなんでしょうか…。

英語版の全編でいちばん興味深かったのはこのシーン。
スタビンズ少年が、自分も動物のことばが話せるようになるかどうか、
ポリネシアに尋ねるシーンです。

“Do you think I could ever learn the languages of animals?”
“Well,it depends,Are you clever at lessons?”
“I don't know” 

スタビンズ少年は学校に行ったことがないので、
授業についていけるのかどうかわかりません。
ポリネシアは学校に行ってるかどうかは大した差ではない、
と少年を慰めた後、こう聞きます。

“Are you a good noticer?
Being a good noticer is terribly important”


物事を観察する力があるかどうか…博物学者になるには、
確かに大切でしょうけど、ことばを学ぶにも、大事な能力なんですね。
さすがポリネシア!

と、まあ、簡単な英語で結構深い内容のこのお話、
懐かしい皆様にも、初めて読む皆様にも自信を持ってオススメ致します。

ということで、皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

N.H.Kleinbaum編
4.5USドル
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by silverspoonsjp | 2010-12-31 23:11 | 英語の本

執事ジーヴス

羊カフェに行ったからという訳でもないでしょうが、
最近、いまさらながらジーヴスものにはまっております。
勢い余って、ドラマのボックスセットまでイギリスから取り寄せてしまいました。

物語の舞台はロンドン。時代はいつだか良くわからないのですが、
シャーロック・ホームズだったらこう推理するに違いない…てな会話が出てくるのと、バルカン半島で小競り合いが…みたいなセリフが出てくるので、ホームズよりは後で第二次大戦よりは前でしょう(何を考察してるんだか)。

ロンドンのフラットで悠々自適に暮らす、自他共に認めるボンクラなお坊ちゃま、
バーティー・ウースター(なんかこの設定、リアル世界で聞いたことあるような)。
賭け事、スピーチ、服のセンスもまったくダメダメなくせに、人から頼まれると嫌とは言えない性格で、
その人柄の良さと家柄の良さが災いし、
自分とは関係のない数々の揉め事に、常に巻き込まれているのであります。
しかし、ああ、神は見捨て給わず、そんな彼をいつも鮮やかな計略で助けるのが、燕尾服を着たどらえもん 諸葛孔明のようなバレット(和訳は「執事」となってます)、
ジーヴスなのであります。

しかし、このジーヴス、ご主人の問題を解決しつつもさりげなく自分に有利に事を運んだりして、切れ者なだけに性格もなかなかクールで、
一筋縄ではいかない人物なのを、バーティーの間抜けっぷりが上手く中和していて、そこがシリーズの一つの魅力になっています。

いちおうユーモア小説ということになってるらしいんですけど、エピソードが笑えるというよりは、表現とか、間がおかしいんですよ。

私は最初、英語(少しやさしく書き直したバージョン)を読んだのですが、
主従の会話がそれっっぽくて本当におかしいです。
たとえば、フランスにバカンスへ行ったバーティーが帰宅して、
(ジーヴスはアスコット競馬が気になるといって同行しなかった)、
久しぶりにジーヴスに会う場面。

バーティー:Well,Jeeves,here we are,what?
ジーヴス :Yes,sir.
バ:I mean to say,home again.
ジ:Precisely,sir.
バ:Seems ages since I went away.
ジ:Yes,sir.
バ:Have a good time at Ascot?
ジ:Most agreeable,sir.
バ:Win anything?
ジ:Quite a satisfactory sum,thank you,sir.


こういう会話を面白げに翻訳するのは至難の業でしょうね。

国書刊行会から何冊か訳本が出ています。
日本語版は、こなれてない部分があったりもするのですが、
なかなか頑張って訳してると思います。たとえば、バーティーの服のセンスに関する、こんな箇所…

僕は自分の部屋に直行し、カマーバンドを引っ張り出して腹に巻きつけてみた。
僕が向き直るとジーヴスが驚いた野生馬みたいにあとずさりした。
「失礼ですが、ご主人様」彼は声を抑えて言った。
「まさかそれをご着用で人前に出られるおつもりではいらっしゃいませんでしょうな」
「このカマーバンドか?」僕は軽く受け流すと気楽な、屈託のない調子で言った。「そのつもりだが」
「それはお勧めできかねます、ご主人様。本当にいけません」
「どうしてだ?」
「ご印象がにぎやかきわまりすぎでございます」


にぎやかきわまりすぎ(爆)
いいでしょ、これ。

60冊くらい出てるらしいので、全部読むのは大変そうなんですけど、
とっかかりとしては短編の方が飽きなくていいと思います。
上のリトールド版は強く強く推薦しておきます。
ジーヴスもの以外にエムズワース卿のシリーズが含まれており、
どっちかというと私はそちらのシリーズの方が好きだったりします。
ロンドンが大嫌いで田舎の居城を愛する卿の静かな生活をぶち壊す、やかましい村人や妹のコンスタンツェ、頑固なスコットランド人庭師などなどが活躍する、いかにもイギリスなお話です(未読ですが、文藝春秋から「P・G・ウッドハウス選集」として、訳本が出ている模様)。
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by silverspoonsjp | 2009-02-01 00:18 | 英語の本
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皆さまこんばんはー。
暑さも峠を越えましたね。近所では昨日から、夜に鳴く虫が蝉からコオロギに衣替えしております。

と、優雅な前ふりで油断させておいて、本日のエントリーはコレ←
「スターウォーズ」でございます。
天下のランダムハウスが何でスターウォーズ本を?と驚くのはまだ早い、
何とこれがオール2Dイラストの本なんですねー。

今年は劇場で3Dアニメの新作が公開されますが、その予告編を見ると、
登場人物たちのキューブリックみたいな妙なキャラはともかく、
ドロイド兵たちのシーンが本編と同じなので、思わず無言に。

つまり、何ですよ。

私たちはこれまで、実写版を見に行ったつもりだったのに、
実はほとんどの部分がCGアニメだったって、そういうことですよ(今さら怒ってどうする?)

そんなものより、この本を読んだほうがよっぽど面白いですよ(もうヤケクソ)。

さて、前置きが長くなりましたが、この本は英語学習用に作られた、
副読本なのでございます。
しかもシリーズタイトルは「ジェダイ・リーダーズ」! 参ったか。
映画のエピソードそのままの本もありますが、
こちらはエピソード1の背景だけ借りたオリジナル・ストーリー。
それが、子ども向けなのにとっても面白いんです。

きっと「スターウォーズ」シリーズの世界を良く把握してる書き手が書いたのでしょうね。

舞台は映画でもクライマックス、大一番の「ポッドレース」の日。
アナキン・スカイウォーカーは、ジェダイの励ましを受け、レースに臨みます。
その言葉はもちろん
「May the Force be with you」(フォースが共にあらんことを)(これよ、これこれ~!!)

ところがぎっちょん、大事な部品がいかれてしまい、搭乗機のエンジンがかかりません。
アナキンは、かいがいしく立ち働いている整備ロボットに、
部品を調達してくるようお願いするのですが…。

なんとかご主人のお役に立ちたいと必死な整備ロボットのカワイイこと!!
どうなったかは本を御覧いただくとして、
ちゃんとセブルバやジャバ=ザ=ハットなども登場し、
ファンにも納得のいく展開となっております。

たった48ページの「整備ロボット君、はじめてのおつかい」、お楽しみください。

絵がまた、そっくりさんイラストながら
昔懐かしい副読本風の絵柄なのが郷愁をそそります。
Step1から段階を追って英語の難易度も上がるように工夫されています。
続編にDarth Maul's Revenge(「ダース・モールの復讐」)なんてあったりして、
気になるな~。なるでしょう~?

StarWars Episode1 Anakin's Pit Droid
ISBN 0-375-80431
Random House
amazon jp でも取り扱いがあります。
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by silverspoonsjp | 2008-08-18 22:58 | 英語の本
本日は千代田区立図書館の標題イベントに行って参りました。
日本科学未来館で開催中の「エイリアン展」とタイアップした催しで、会場には関係者もちらほら。定員25名の面々は、仕事で翻訳やってるか、修行中でしょ?という感じの人ばかり(ぱっ!と本格的な電子辞書を取り出すあたり、普通の会社員とは思えない)。

講師の土屋さんは、カズオイシグロの翻訳等でご存じの方が多いと思いますが、今回は展示説明の翻訳を担当された縁での講義、ということらしいです(ということは、「エイリアン展」、見るべきものはフィギュアではなく、説明プレートらしい…)。

で、講義も、実際の展示に使われている原文と訳文を例として示しながらの、とても具体的なものでした。

高校時代にアメリカにいらしたとかで、プレゼンテーションの仕方からしてあちらで教育を受けた人らしい、良く整理されたもので、大変勉強になりました。

演題には「わかりやすい文章」とあったのですが、「わかるとはどのような事か」から始まり、中心となったのは「単にわかりやすいだけにしない、土屋さんなりの工夫」の話でした。

まず、「わかるとはどのような事か」については、「自分のことばでそれが説明できること」と明快です。そして、原文のレベルをそのまま保つこと、これが「単にわかりやすいだけはない」ということです。

後者を実現するために、土屋さんはご自分なりの基準-セーフティネットとおっしゃってましたが-を2つお持ちでした。その2つとは、

①情報量の維持
②データ量の抑制

です。

情報量の維持とは、読んで字のごとく、原文に含まれている情報を落とさずに訳すということです。と言っても、ある文章にどんな情報が含まれていると判断するか、それは全くの主観によると、土屋さんは展示説明の実例で説明されていましたが、確かにその通りです。原文のあまり一般的でない例えなどは上手く回避されていますが、別の訳者なら、元の言い回しを生かしてそのまま訳出するかもしれないし、微妙なところです。

もう一つのデータ量の抑制とは、原文の分量を訳文でもほぼ保つ、ということです。一般に、他の言語を日本語に翻訳すると長くなると言われていますので、締まった訳文にするにはそれなりの技が必要です。

同趣旨のことを、以前、孫玄齢先生から伺ったことがあります。孫先生も、上手い訳者なら、日本語訳は原文の中国語とほぼ同じ長さになる、とおっしゃっていました。その理由については特におっしゃってませんでしたが、土屋さんはこれを、「各民族で知的レベルには差がないのだから、同じ内容を伝えようとするなら、どんな言語でもほぼ同じデータ量になる」と説明されています。英語から日本語の場合は、日本語が漢字交じり表記である分、少し短くなるそうです。

もう一つ、これはあまり他では聞いたことがなかった工夫ですが、土屋さんは、文単位ではなくパラグラフ単位で訳を作られるそうです。確かに、英語文の基本単位はパラグラフですから、その中で意味が通るように訳文を組み立てるというのは理にかなっています。

土屋さんは訳文から連想される通りのダンディな方で、やっぱり文は人なりだなあ、という感想を抱きつつ、「翻訳者の腕の見せ所」をたっぷり堪能させて頂いた2時間でした。
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by silverspoonsjp | 2008-05-27 23:39 | 英語の本
パター(って読むのかしら…?)おじいさんと猫のタビィが主人公のシリーズ。
日本語訳が出てるのかどうかはわかりませんが、40ページしかないパンフレットみたいな絵本なので、英語のまま読みました。

子ども向けなのでとてもシンプルな英語で書かれていて、それがまた、
とても良いんですね…。

Putterという名の通り、のんびり暮らしてるおじいさんとその飼い猫のお話です。
鉛筆と淡い水彩画で描かれた挿絵ともあいまって、何とも言えない味があります。
裏表紙を見ると、5才から8才向きって書いてあるんだけど、この本の本当の良さがわかるのは、読み聞かせをしているお父さん、お母さん…でもまだ早いかも知れない(爆)

Putterさんは一人暮らしのおじいさん。
おいしい紅茶を入れて
おいしいイングリッシュ・マフィンを焼いて、
楽しいお話もいろいろ知っているけど、いつも一人ぼっち。

で、ここはいっちょう猫を飼おうと思いつくわけです。

ペットショップに行くと、そこには可愛らしい子猫ばかり。
お店のお姉さんには、
年寄り猫なんて可愛くもないし寝てばかりで、
欲しがる人なんていません、と言われてしまいます。
とっくに可愛くもなく、ごろごろしてばかりのPutterさん、
やっぱり子猫は要らないんです…。

やっと見つけた年寄り猫と二人(?)、まったりしている描写が
たまりません。(Mr. Putter and Tabby Pour the Tea)

かと思うと、どうしても梨の御菓子が食べたいのに、
寄る年波で、たわわに実るわが家の梨を取ることが出来ないPutterさん。
昔とった杵づかで梨を取ろうとするのですが…
(Mr. Putter & Tabby Pick the Pears)

といった、ペーソスあふれるお話が展開します。

年を取ってしまったので、雪の日に外で遊べないPutterさん。
(Mr.Putter&Tabby Write the Book)

子ども時代の夢だった飛行機を手に入れるけど、
やっぱり子どもに譲ってしまうPutterさん。
(Mr.Putter&Tabby Fly the Plane)

Putterさん自身はそれはそれで諦めて、上手いこと他の楽しみを考えつくのですが、
年を取ることの哀しさは、やはり惻々と胸に迫ります。
しかし最後には、読者をほっとなごませて終わる。
ニクい、実に心ニクい展開のお話であります。

シリーズは10冊以上あるんですけど、読み出すと止まりません。
私のお気に入りは、上の 4冊以外に、

・Mr.Putter&Tabby Feed the Fish
意を決して魚を飼うことにしたPutterさん。
でも、ワクワクしてるご本人以外にも、ワクワクしてるのがもう1匹…

・Mr. Putter & Tabby Paint the Porch
いつも玄関先のポーチでお茶してるPutterさん。
いいかげんペンキを塗り替えようとするのですが、次から次へと邪魔が入り…

Cynthia Rylant著
Harcoutr Brace&Company
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by silverspoonsjp | 2008-05-24 22:45 | 英語の本
info trailというのは辞書で有名なロングマン社が英米の小学生のために出しているノンフィクションのシリーズで、科学、歴史、地理の三つの分野にわかれています。

小学生向けなのでこれ以上ありえないほど簡単な英語で書いてある、非常にうすっぺらな副読本なんですが、私はこのシリーズが大好きで何冊か持っています。

たとえば、歴史ですと、「女王さまはどのように服を着るか」とか。
下着から始まって、かつらや装飾品に至るまで、順を追ってイラストで説明してあります。
同じく「騎士」のもあります。絶対学校では習わないような英単語(鎖帷子=チェインメイルとか)をなぜか知っている自分は「ロード・オブ・ザ・リング」の見過ぎだなーと、思ったり。

で、今回御紹介しますこの本
「To let:Modern Victorian Home」
は、ヴィクトリア時代の家を紹介するものです。
玄関ホールを入り、応接間から台所、家事室や寝室などを見ていきます。不思議な調度品の名前や用途にびっくりする一方、今でも日本ではちょっと高級な道具-フードプロセッサーとか-が手動ながらちゃんと備え付けられているのに感心したり。

すでに手動の掃除機もあるのが驚きです。

その他、壁紙やカーテン、タイルの模様、家具などは文中で特に説明はないものの、21世紀の今もイギリスに行けばいまだ現役で見ることのできるのが、さすが物持ちがいいというか何というか。

たった24ページの子ども向けの本ですが手抜きはなく、絵も細かいところまできちんと描き込んであるので、イギリスファンにはたまらない内容なのではないでしょうか。

神保町の三省堂本店にはこうした小学校向けの副読本(で、日本なら大人が楽しめる)本がシリーズで揃っています。サンプルがたくさん置いてあるので面白いですよ。

Jillian Powell 著
Donald Harley 画
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by silverspoonsjp | 2008-05-14 23:57 | 英語の本

英語耳

何だか弾みがついたのでまたしても英語本。

こちらは、リスニングマスター用の本です。
英語を聞いても聞き取れない原因は、英語の正しい発音を知らないため」という著者の主張は、確かにその通り(まあ、当然ですね)。

っていうか、聞き取ろうと思ったら、著者も指摘する通り、それだけではだめで、

・正しい発音を知る
・単語が組み合わさった時の音の変化を知る
・文章丸ごとのメリハリ、高低など(プロソディ)がわかる
・話されている文章中、半分以上の単語の意味を知っている

が必要です。取りあえずこの本では、最初の2つをおさえられるようになっています。
といっても、子音の発音の仕方と母音の発音の仕方、音の変化のいくつかのパターンが載っているだけなので、似たような練習をやったことがある人は多いと思います(;)。

個人的には、この本は、学校で英語を全然習ったことがないひとにオススメです。
学校で習ったことがある人は、個別の発音よりもプロソディの練習を先にした方が良いと思います。
(プロソディの練習本はなかなか良いのが見つかりません。ただいまリサーチ中です)

なぜかというと、すでにカタカナ英語の癖がついている人は、個々の発音を綺麗にすることに意識が行きすぎて、全体としてはちっとも英語っぽくない…という結果になりがちだからです。

ではどうして紹介したかというと、この本は確かにリスニング強化には役立つからです。
最初にVOA(Voice of America)などを聞いて、
次にこの本のCDを一通り練習してから
もう一回同じVOAを聞いてみてください。明らかに1回目よりクリアに聞き取れます。

早口のシャドウイングについていけない人の補助教材としても使えそうですね。

特に出色だと思ったのは、賛美歌「Amazing grace」を使った練習です。強調して練習する場所を変えて何度か繰り返すだけで、5回目にはかなりなめらかに発音することができます。この方法は自分でもすぐ進歩が実感できるので、せっかちな人向けかも…。

もう後4~5曲練習できて、短文・長文練習の例がCDに入っていれば絶対オススメだったのですが、まあ、CDを全部通して練習しても1時間かからないので、1冊持ってて損はない本だと思います。

松澤喜好著
アスキー 1800円
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by silverspoonsjp | 2008-04-28 23:37 | 英語の本
4~6月、NHK教育テレビで放映される予定の英会話のテキスト。
「赤毛のアン」からの抜粋で、放送は、カナダ人による朗読、松坂慶子をゲストに迎え、講師の松本侑子先生による解説、原作のワンシーンを再現したドラマ(テレビシリーズからでしょうか?)、カナダロケ、「赤毛のアン 夢紀行」の再録を組み合わせたものです。

放送を見て驚いたのは松坂さんの英語が上手かったことですね。発音にも癖がなく、優しい人柄を思わせる英語です。

まー、ただちょっと、演出がロマンチックすぎて私のような荒くれ者にはついていけませんね…。

ということで、もっぱらテキストを愛読しております。こちらは、放送でカットされてしまった部分の原作の全文、それに日本語訳つきです。

このテキストを読むまで全然知らなかったのですが、物語に登場する「グリーンゲイブルズ」はじめさまざな場所は実在の場所がモデルだったんですね。19世紀当時の風俗習慣の説明も楽しいです。

放送は毎週火曜日の23時10分から20分間。
再放送は翌週の火曜日の朝6時40分~と昼0時10分からです。

1か月 380円

ところで、原作の方ですが…

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by silverspoonsjp | 2008-04-22 23:29 | 英語の本
なんだ今さらかよー!と石を投げないでくださいっ!
引っ越し荷物の積んどく本の地層からようやく発掘いたしました。
ああー私ももうちょい早く読んでればねえー受験は楽勝だったのに(…←図々しい)。

っていうか、受験生が読んだらマズイのかもね、この本。
薄々感じている学校英文法の不備な部分(学校では「これはそういうものなんだと覚えなさい」と丸暗記させられるような箇所)をずばり突いてくる内容なので、四択問題を解いたりするときは却ってマイナスになっちゃうかもしれません。

全編これ、はたと膝を打つ!の連続なんですが、最初に唸ったのは「if」の項目ですね。

「if」=①「もし」 ②「~かどうか」

と大抵の方は覚えていらっしゃると思いますが、この語は更なるパワーを持ってるんだ、と著者は言います。

と言っても、if自体は単に「選ぶ道が2つある」ことを示す言葉。この言葉の使い方のキモはその結び方だと言うんです。

「もし、値段をまけないと、他で買う」という脅し(?)文句の2つのパターン。

1) If you can't give me a better price, I'll look elsewhere.

2) If you can't give me a better price,I look elsewhere.

1)と2)で違うところは、1)の結びがwill を使っていて、2)は使ってない、ということだけです。そしてこの2文では相手に与えるプレッシャーが違うというんです。
1)は「他をあたることになるだろうね」
2)は「他に行くぞ」
 
ifの選択を行うと何がおこるかを示す、結びの文章をちょっといじるだけで、相手にかけるプレッシャーを調整することができるわけです。

学校でならう文法だと、ifの後ろが現在形(上でいうと2)ね)は一般的な法則を表す、とか説明する訳ですが、何のことはない、避けがたい結果だよ、選択の余地がないよということを、現在形が示しているということなんです。

言われてみればなるほどねーと思うような、ある語の喚起するイメージを、イラスト入りでわかりやすく示してくれるので、本当に勉強になります。あと、この本の良いところは、そのニュアンスを会話にどう生かすか、その具体例を示してくれていることです。

会話に文法は要らない、とか
文法を知らなければ会話はできない、という不毛な論議ではなくて、
実例を元に、微妙なニュアンスの違いや感情の込め方を表現の使い分けや文法の面から指南してくれ、結果として、文法オタクのための文法に疑問を抱かせる内容になっています。一読に値する本です。

大西泰斗/ポール・マクベイ著
NHK出版
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by silverspoonsjp | 2008-04-14 23:52 | 英語の本