本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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カテゴリ:センス・オブ・ワンダーの本( 58 )

ようやく「10年ぶりの新作公開」フィーバーも一段落し、昔からのファンはしみじみと、新たなファンは過去作見てみようかなと情報集めをしているのではないかと思われます「スター・ウォーズ」の今日この頃。

ちゃっちい子ども騙しの映画じゃん、一体どこが面白いのよ? とおっしゃる方々には、ハイさようでございます、でも子どもを騙すのこそ大変だと思いますけどね…と流しておき、

あれマニア向けの映画で面白くない、と言われれば、ハイさようでございます、初めて観る人にかなり気を遣ってたみたいですけどね、と庇っておく。

そもそも、良識のある作り手ならば、子ども向けの作品こそ、細心の注意とエネルギーを注いで作るはず。

何しろ、子ども向けの作品は当然大人も見に来ますし(付き添いで)、小さいときに目にしたものは一生にわたって影響力も大きく、成功すれば長く名声を手にすることが出来るということは、お子様を優遇するデパートしかり、世界のジブリしかりで、日常あらゆる場面で証明されています。

…って、別に宣伝部員でもマニアでもないのに、何で自分がこんな解説をしなければならないのだろうか....と思う、ごく普通の「スター・ウォーズ観たけど面白かった」ご同輩の皆様も、いざ、じゃどこが面白かったの、と言われると言葉に詰まるのではないでしょうか。

そこに焦点を当てた、ありそうでなかった本が「スター・ウォーズ論」

この本は、巷によくある、「○○論」といいながら、その作品の分析に名を借りて、他のことを論じようとしている便乗本でもなければ、作品のオタクすぎてそれしか見えてない、という本でもありません。

「スター・ウォーズ」の面白さを、映画産業に携わる人の目から見て、映画史の中での位置づけや、興行作品としての意味合い、シリーズ自体の価値といった面から、きちんと分析、紹介、考察している本なんです。こういう本はマニアやファンでは書けません。

マニアやファンが悪いと言うのではなく、そういう「ファンの声」を読むのも楽しいものなのですが、本として出版するならば、きちんと当事者に話を聞いて書いている、こういうレベルの仕事を取り上げて欲しいものです。

とは言っても新書なので、文章は堅苦しくないし、他の映画の話もいろいろ出てきて読み応えがあります。

この本を読むといちいち、へぇ、なるほどねぇ、とか、ふーん、そうだったのか、と感心してしまいますが、それはトリビアが満載だからじゃなく、映像作品を、芸術面や技術面、興行面など、各方面から知っている人でないと書けない内容だからです。

シリーズの生みの親ジョージ・ルーカスと作品の関わりや、最初はボツだった企画が、どのように映画史に残る作品になったのか、スター・ウォーズが描いているもの何か、スター・ウォーズが作り上げた文化とは何なのか、これらが説得力を持って考察されていきます。

ジャニーズ事務所と同じくらい業界の人が恐れている、ディズニー関係の内容もしっかり入っており、ディズニーの功績について評価すべきところはきちんと押さえている点にも好感が持てますし、

著者のレベルの高さに唸るのは、同じ著者によるもう1冊のいかにもファン向けなタイトルの本、

「スター・ウォーズ フォースの覚醒 予習復習最終読本」

でも同じです。

こちらは、新作「フォースの覚醒」の公開前に発行された本なのですが、驚くべきことに、今読んでみると、ここに書かれた予測内容は、ほとんど外れていません。

もちろん、ストーリーを公開前に知っているのが重要なわけではないのですが、それが出来る人の発信する情報に信頼がおけるという傍証にはなります。

あれほど厳しい情報統制がなされていたにもかかわらず、そんなことが出来たのはなぜかといえば、ズバリ、これまでの作品を良く知っていたこと、作品に愛情を持っていること、情報を幅広く集めることができ、その取捨が正しく、その読み方が正しかったからだ、と言えるからです。

ネット上には、新作に関して無数の推測や憶測が流れていましたが、ほとんどのものは、その正しさについて製作者側がYesともNoとも言っていません。製作者側のリークもなく、こうした玉石混交の情報のなかから正確なものを選び取れるというのは、正しくプロの書き手の仕事だと感じます。

つい「予習」の方ばかり取り上げてしまいましたが、この本の「復習」部分も周到に整理され、読みやすく書かれています。ただ単にあらすじ紹介にとどまらず、当時ファンが(現在と同じように)推測していた内容や、途中で放棄された設定なども上手いこと織り込んで、公開時の雰囲気や作り手の視点なども知ることができ、興味深いです。

春休みにリピート鑑賞をする前に、あるいは、次回作をより楽しむために、または、見なかったけどちょっと気になる、という方にも、ぜひにとお勧めしたい2冊です。

「スター・ウォーズ論」 河原一久著 NHK出版新書 

「スター・ウォーズ フォースの覚醒 予習復習最終読本」 河原一久著 扶桑社
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by silverspoonsjp | 2016-02-21 18:48 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
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何の因果か、テレビドラマ『蘭陵王』をハイスピードで見る羽目に陥り、しかも結構面白かったので、別ブログでなぜか延々と記事を書いております。(ご興味がおありの方はThe Palantir の史実編)、テレビドラマについては(有話即長編)からどうぞ。)

『蘭陵王』はツッコミどころに事欠かないドラマだという点も大変面白いのですが、中国語や、中国の歴史を覗くにも恰好の題材で、これをきっかけに、調べ物したり、本を読んだりするのもなかなか楽しいものです...と思っていたら、やはり同様な事を考える方は多いらしくて、ついにこんな本 ↑ まで出版されてます。

って言っても、史実そのままだと脚色もしづらいから、ワザと変えてるドラマがほとんどだと思うんだけど、それで学んじゃって大丈夫なのかなぁ…といちおう史学科出身の私は思いますが、そこはそれ、フィクションだとわかる年齢の方が観てるってことで、OKなのでしょう。

それにしても、こんなにいっぱい史劇(時代劇)が日本語でもオンエアされてたんですね。ほぼ全時代網羅してるのが凄すぎる。

中国では、時代劇で一番近い時代が清代で、漢民族にとっては異民族(満州族)に支配されていた時代なので、それ以前のものとは使う用語から衣装、髪型、習俗に至るまで(貴族の名前なんかもカタカナ)、ガラリと違うんですが、意外に清代を舞台にしたドラマも人気あるんですね。

取り上げられているのは、古いとこで「封神演義」(これは「殷」代!)から清代の「書剣恩仇録」まで、約58本。

巻頭はスターや新作の話題などテーマ別、本編は時代順になっています。

各時代の年表プラス地図もついた本格的な歴史解説に続いて、各ドラマの解説があるのですが、歴史解説が本格的すぎちゃって、ドラマの解説とはかなりレベルに差があるのが気になるけど皆、ついていけるの?…きっといいんでしょうね、これで。

小ネタや史実の解説などもちょこちょこ織り交ぜてはありますが、どの辺が脚色かとか、もうちょいいろいろ解説する本も欲しい感じですね。まあ、どのくらいファンがいるのか分からないので、ドラマごとに本を出すのは難しいんでしょうけど…。

その辺は今後に期待するとして、1冊でコンパクトに見渡せるのがありがたいムックです。持ってて損はない本と言えるでしょう。解説を書いてる方々も、この方面では長いこと活躍されている方が入っていて、しっかりした内容だと思います。

キネマ旬報社
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by silverspoonsjp | 2014-12-23 11:12 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback(1) | Comments(0)
ここ数年、スケジュール管理はスマートフォンにお任せだったのですが、それだけではちょっと味気なく感じてきたのでまたアナログの手帳も使ってみることにしました。

せっかくカムバックするなら、少し新しいアイディアも取り込んでみようかな、と思い、手にしたのがこの本。

『マンスリー&ウィークリーで幸運を呼び込む「2度書き」手帳術 さとうめぐみ 著 東邦出版

ひゃー勘弁してくださいよ、1回書くのも面倒くさいのに2度書きっすか?!とおっしゃられるなかれ。確かにスゴイ面倒くさいですが、その面倒くささが秘孔を突いてくるので、気になる方はぜひ、トライしてみてください。

タイトルが胡散臭いのが気になる方もいらっしゃるかと思いますが、その辺は飛ばしてつまみ食いでも、やってみる価値はあります(後述するように、必ずしも続けなくてもよいのではと個人的には思います)。私はここのところ本当にツイてなかったので、この際、胡散臭くてもいいから実行してみるかと投げやりな気分でした。

さて、手帳術的に紹介すると、手帳のマンスリーページ、ウィークリーページの両方を極限まで利用するテクニックなのですが、そのやり方のあらましは以下の通り。

1 まず、自分が実現したいことを考える

2 それを月で割る

3 マンスリーページに、するべきことのほか、したいことも3つまで書く

4 仕事は青、プライベートは緑、体調に関することは赤、日常のことは黒、夢に関することは好きな色で、月の予定を書き込む。この色分けは手帳のどの部分を書くときも統一します。

5 日々の予定の中に、夢に向かって行動する、5分程度でできる予定項目を書き込んでおく。また、1日1縁と称して、安価またはただで、一人でできて時間がかからない、ワクワクする予定を記入しておく。

 
6 毎週はじめに、ウィークリーページに月の予定を写し、予定の詳細も記入。毎日繰り返してやること、定期的にやること(9時から5時まで仕事など)も必ず記入する。 

  そのほか、各日の頭に、今日はどんな日にするか、スケジュールに合わせてあらかじめ書いてしまう。同窓会で思わぬ人脈を得られたとか…

7 1日の終わりには、予定外に起こったことを後からわかるように書き込み、今日終わらなかったことは繰り越すかどうか考えます。

8 さらに、頂きものなど物質的・金銭的に得した(自分が相手に得をさせた)こと、精神的に豊かになれたこと(相手を豊かにしたこと)を「ハッピーマイレージ」と称して、それぞれ1行ずつメモする。

また、出来事・行動、結果・感情、学び・宣言をそれぞれ1行ずつ書きます。

この非常に面倒な作業を2週間ほどやってみたところ、驚くべきことが分かりました。

8番目のハッピーマイレージ、つまり、得したり、心豊かになれたことが、毎日各1行じゃ書ききれないほど起こっているということです。

「小確幸」なんて言葉もありましたが、気づけばなんとラッキーな毎日を送れていることか。文句を言ったらバチが当たるとはこのことです。

この方式でずっと記録していって、後で振り返ってみると面白いだろうと思いますが、かなりの手間がかかります。「作業事が大好き」「記録魔」みたいな人にはお勧めですが、システマティックすぎて、クリエイティブな人にはあまり向いてないかも知れません。で、もっとアバウトにラッキーになれる方法としておススメなのはこちら↓です(新年なので、妙なエントリーですが許してください…)

『書くだけで運と幸せが集まる「願いごと手帖」のつくり方』 ももせいづみ著 PHP文庫

これは、願いごとだけで1冊ノートを使う方法で、願いを思いのまま書くだけでいつの間にか叶ってしまう、というもの。せっかく買いためたお気に入りのノートの使い道を考えているときに目に留まった本です。

しかし、願いごとを思いつくままに書けって言われても、そりゃ願いごとはたくさんありますよ!っていう人は良いけど、あんまりツイてないと、自分の願いごとが何かさえ分からなくなってくるのが人間というもの。自分が本当にしたいことは何か。本当に欲しいものは何か。自分の事なのに、的確に文字にするのはとても難しいものです。逆に、書けるようになれば、それは実現への第一歩ということなんです。そうです、叩けよ、さらば開かれん。だけど、どこを叩くんだかわからないと、開けませんもんね(月光文字で書いてあったら、なおさらですよ)。

で、いったいどうなったら自分は嬉しいんだろう…と考えていくと、ぼちぼち思いあたることも出てきます。見つからない場合、この本ではこんな方法がおススメになってます。

好きなノートを用意して、願い事を書きます。

1 いま座っている場所で、足りないとずっと思っているものや、あったらいいなと思うものを書き出す
2 いまの自分自身を見て、こうなったらいいな、こんなものが欲しいというものを書き出す
3 家族や周りの人との関係を思いだし、こうだったら嬉しいな、と思うことを書き出す
4 仕事や趣味、地域活動のなかでこうなったらいいな、と思うことを書き出す
5 「身」「知」「社」(地位や資格)「財」「心」(充足感、満足感)など、自分の中に眠る大きな願いについて
書き出す

あとは基本、放っておく。たまーーーに、ノートを開いて、実現したことに印をしてみたり、少し違ったけど出た結果について、メモしておいたりする。年に一回は見直してみて、気になっていてずっと動かない願いごとは3つだけアクションを考えてみる(が、それをToDoにはしない。別の場所に書き出すだけ)

ここで大事なことは、目標じゃなくて、願いごとを書くことだ、と著者は言います。たとえばTOEICで何点を取るとか、○○の資格を取るとか、目標にしてしまうと、本当の願いのありかが分からなくなるし、いまの自分が目指せる範囲でしか、自分の未来を設定できなくなってしまう恐れもありますし、向上心のある人だと目標を達成したらまた次の目標を設定することになって、どこで幸せを感じるべきか分からず、無限ループに陥ってします。

足るを知る、というとむやみにガマンするみたいですけど、全然自分に必要じゃない目標を追っかけていくのではなくて、自分が本当に幸せと思うことは、小さいけれどたくさんある、ということに気がつくことが大事なんですね…

また、ToDoリストにしてしまうのも厳禁。そうすると、しなければならない義務で時間が埋まってしまい、本当にしたいことが見えなくなってしまうからだそうです。確かにそうですね。なので、願いごとは棚ぼた式で実現したように書くのがコツとのこと。プラス、自分が本当に手にしたいことは何かをよく考えて、手にする仕方や程度(さくさくと、すんなりと、あっさりと、など)までなるべく分かりやすく具体的に書くこと。できれば今自分が持っているものも有効利用して、たとえば、


・○○のバッグを買う→○○を偶然手に入れて、かっこよく使いこなす
・オーディションに受かってモデルになる→モデルになる話が舞い込んで充実した楽しい活動が続く
・来年は試験に絶対合格する→○○の試験にうかって家族と合格パーティーを開いて弾ける
・昇進して給料が増える→とんとん拍子に収入が○パーセント上がって、新車に買い替えた

…なんか大物小物の物欲満開な例ですが、この大小取り混ぜて、っていうのもコツの一つ。

大きいことはなかなか叶いにくいけど、小さなことで願いが実現するというのは結構あるもの。それに気が付いていくと、だんだん大きなことも実現するようになる。実現する大きなことというのは、実は、無意識の中にある、自分がこうしたいという望みなんだろうと思います。

自分でそれを探らずに、どこかで聞いてきたようなこと、たとえば、将来息子が○×大学に入学するとか、自分が24歳までに結婚するとか、そんなことを書いても実現しないし、実現してもおそらく幸せではないでしょう。

おおかたそれは自分の望みじゃなくて、お父さん・お母さんの希望だったり、世間の期待だったり、周りに言われてその気になってたり、ということだからです。もちろん、進学したい、結婚したいという願いについて本人がきちんとその行きつく先について考えていて、強くそれを願っているのなら、いまの日本の状況だったら実現するでしょう。

そう考えると、深いですね、このやり方は。

ある人にとって何が幸せであるかということは、他の人には決められないことなので、それを自分との対話の中で探っていくというのは、シンプルではありますが、心理カウンセリングに通じる、一種の内観法といえます。

どんなことでも良いから願いごとを書いてみるというと、ブランドもののカバンが欲しいとか、おいしいケーキが食べたいとか、個人的で俗っぽい望みしか出てこないように見えるかもしれませんが、表面的な事が叶って、その先を考えていくほどに、なぜその望みが出てくるかというところへ考えが至り、自分が本当に本当に欲するものは何なのかについて、多くの人が向き合うことになるでしょう。

なんて、エラそうなことを書いておきながら、自分はといえばつい、「エルフ語ネイティブに道を聞かれて答えられる」なんて願い事を書き込んでしまったりするんですが、なんか実現の暁には恐ろしいことになりそうな、と思ってるうちは、あり得ないんでしょうねぇ…
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by silverspoonsjp | 2013-01-15 21:13 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
大地震から1ヶ月以上経つというのに、まだ災害が現在進行形な上、業務や日常生活のなかで、今頃になって思わぬ影響が出てきたりと、気の滅入る毎日が続いています。

でも、地震をきっかけに、それまで交流のなかった近隣の人と顔みしりになる、ということもあったりして、このマイナスの中から、少しでもプラスに転じることがあればいいなと念じているところです。

という訳で、何もする気が起きないモードから、少しは動こうかという気になったところで、前から気になっていた本屋さんに行ってみることにしました。

ちょっと前に、ほんの半日ほど京都で自由時間が取れたとき、おみやげを買いに三条へ行ったら、いつも立ち寄るレトロなビルに、「art-bookshop」という面白い書店を見つけました。美術書を扱う本屋さんかと思ったら、手芸本の専門店で、ちょうど良い感じの広さの空間に、和書や輸入書がギッシリ。

最近の和書ではビジュアル重視のスタイリッシュな手芸本も増えているように感じますが、輸入本には素朴な味のあるものが多くて、実際に手芸をしない人にも楽しめるジャンルだと思います。来店している人は、実用の本を探している人半分、面白そうな本を探している人半分、といった雰囲気でした。

旅先で本を買うのはちょっとためらわれたので(郵送する時間もなかったし)、本と並べて売っていた、手芸用の鳥の形のハサミを買ったところ、レジに他店舗のお知らせが置いてあり、東京にもあるようなので、いつか行きたいなと思っていたわけです。(その時は池袋店のお知らせしかありませんでしたが、神保町や渋谷、大阪の梅田や天王洲にもあるんだそうな)

で、その一つ、池袋店にお邪魔してみました。ただ、期待に反して、西武デパートの手芸売り場にちょこんと間借りしているという風情で、時間によっては、中で手芸体験もできるスペースがありましたが、本の棚は少なく冊数もそれほど置いていませんでした。ただ、ディスプレーにフランスの老舗手芸用品店・サジューの復刻版刺しゅう糸や指ぬきなどの小物がちょこちょこと陳列されていたのが目を引きました。

おっ、サジューが置いてある!と注目した先に、並べてあったのがこの本、
「サジューのお裁縫箱」です。

翻訳本でオールカラー、238ページもあるのに2700円というリーズナブルさにまずビックリですが、翻訳監修にユキ・パリスさんのお名前があり、本気度が伝わってきたので即買いしてしまいました。

原著者のクレスタン=ピエさんは手芸用品のコレクターで、それが高じてサジューの製品自体を復刻してしまったという、コレクターの中でも究極の人らしいのですが、前書きで手芸用品の来歴の特定や系統化がなぜ難しいか簡潔に述べ(多岐にわたる職人の分業だったこと、産業化が始まり、爆発的に種類が増えたことなど)、解説が絶対でないことを読者に告げ、訂正を歓迎する旨を知らせている姿勢は(訳文が上品な文体なせいもあるかもしれませんが)、好感が持てます。

続く本文では、ところどころに生産地やメジャーなメーカーなどについて解説したコラムを挟んでいるほか、ハサミと裁縫箱、指ぬきとメジャー、縫い糸と刺繍糸、図案集など、ジャンルごとに物自体の写真が配置され、キャプションで説明するスタイルを取っています。キャプションでは、象牙や真珠貝など、珍しい材料を使っているものについてはその説明をしたり、製造法や製造業者がわかるものはその説明を添えるなど、美術展のカタログによくある機械的な解説ではなく、いかにも好きでオタクで調べました!という感じが出ているのが、これまた好感が持てる点です。たとえば、ハサミの説明の一つ。

金製やここにあるような金メッキ製のハサミの場合、柄と刃は別々に、たいていは2人の職人によって作られていました。銅の取っ手が付いた刃は、柄に差し込まれ、接合されていたのです。接合するのには、樹脂を混ぜた、スペイン蝋と呼ばれるものをよく使っていました。

昔の裁縫箱のセットを見ると、なぜこんなものが入ってる?と驚くアイテムが入ってたりするのも楽しいです。例えば、繊細な細工のガラスの小瓶が入ってたりするのですが、中には、うっかり針を指に刺してしまったときに付ける消毒薬が入ってたそうです。昔からそそっかしい人っていうのは居たんですね…。



フレデリック・クレスタン・ピエ 著
峯澤典子 訳
ISBN 978-4-902199-40-6
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by silverspoonsjp | 2011-04-24 12:13 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
療養中のお友達に、何か面白い読み物をと思って、本屋に駆け込みました。

それにしても、初めて入る本屋さんって、他人様の台所以上に勝手が分からないものですね。どこから手を付けて良いのかわからないので、まずはごく最近、「指輪物語よもやま」のたかなしさんに勧めて頂いたヤマザキマリさんのマンガ、『イタリア家族』を探しました。

お昼休みの時間帯には(迷惑になるから)やりたくなかったのですが、結局店員さんに尋ねて、さんざん検索して頂いた挙げ句、結果は「お取り寄せ」。『テルマエ・ロマエ』を面出しするくらいなら一緒に並べておかんかい!と突然コワイ人になりたくなる気持ちをぐっと堪え、他に何かないか物色する羽目に。しかし、マンガは全てビニールがかかっていて、どれが面白いんだか素人にはさっぱり。これで書泉なら店員さんにオススメを聞くところだけどここは御茶ノ水○善だし(あ、言っちゃった)困った…。

と、振り向くと、そこに何か私をぐっと惹きつけるオーラを放つ、新刊書の山が!

なになに、坂田靖子先生の「ベル デアボリカ」、美しき魔物…?(って意味だと思うけど、間違ってたらゴメンなさい) 

中味が見えないから何とも言えないけど面白いかも、とお会計しようとしたけど、これは第2巻。聞けば案の定第1巻は置いてない(怒)。取りあえず2巻を買って読んでみて、それから1巻を買おうか…でも、私の「この本面白いはずですよ」アラームが振り切れているし(3分間しか点滅しないけど)…

もう時間もなかったので、速攻神保町まで行って、三省堂で買いました(「イタリア家族」もちゃんと売ってた)。
(で、最初の店に後日行ってみたら、全然別の場所に1巻が置いてあることがわかって激しく脱力…)

ということで、前置き長かったですが入手した坂田靖子先生の「ベル デアボリカ」。つまんないものをお見舞いで渡すのもどうかと思って開けて読んでみたら、面白いのなんのって(いつもマンガを読みつけてる方ならとっくにお読みになってるでしょうけど)、まだ自分の勘も捨てたもんじゃないとちょっと嬉しかったりする今日この頃でございます。


設定はまあ、ありがちといえばそうなんですけど、とある小さな国の年若い領主が、周りがさんざん諫めるのも聞かず、国防上重要な場所に居座る魔法使いを、邪魔なら殺す位の気持ちで捉えて幽閉してしまう。

ところが、一国の軍隊を全滅させた無慈悲な魔物という噂の大魔法使いは、一見弱々しい少年にしか見えず、殺すこともできなくなった領主は途方に暮れてしまいます…。

一筆書きみたいなシンプルな線で書かれた絵なのですが、それがまた何となく中世の絵巻物みたいで、とても雰囲気が出てるのです。

この本が単行本で出るまでには、いろいろといきさつがあったらしく、今はweb上で連載されていて、第一話と最新話はココで無料で読むことができます(ぜひ、第一話から読んでみてください)。

自分の心の自由のためには、人を殺すことも厭わない魔物-何だか、芸術家を彷彿とさせますが、そんな孤高の境地に少しずつ変化が現れるという繊細な描写が何とも良いんです(人はそれをツンデレと言う)。更新が2ヶ月に1回なのが何ともじれったいですけど…。ただ、この本を読んでから時間が経つのが遅く感じられるようになりましたので、アンチエイジング効果は抜群だと申し上げておきます(爆)

さて、大変気に入ったのでもう一回読もうかと、週明け○善に行ってみたところ、まるで魔法のように、デアボリカ山はなくなっていました。つまり、数日違えばこの本に偶然出会うということはなかったって事です。洪水のように新刊書が出るとは知っていましたが、しみじみ実感しました(ちなみに、山はかなり低くなって、別の場所に移動していました)。

しょうがないので、ネットで最新話を反芻することに。

そして顔を上げると、現実とは思えない怖ろしい現実のニュースが。どうぞこれ以上、犠牲が増えませんように…!
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by silverspoonsjp | 2011-03-14 23:24 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(2)

パリ 地下都市の歴史

久々に面白い本を読んだなーという感じでした。

巨大な都市の地下には実は別の都市があって、妙な生き物が住んでいる…といった都市伝説は聞いたことがありますが、この本はノンフィクション。真実は小説より奇なりを地でいく、花の都パリの地下空間のルポルタージュです。

すでにローマの時代から採石場だったパリの地下は、実は空洞だらけ。地上に巨大な教会を建てると突如崩れるなんて事故も頻発したそうです。逆に、地下の空間を利用してちゃっかりワインセラーを作ったり、果ては墓を作ったり、はたまた、異端派やレジスタンスの隠れ場になったりと、歴史の影の主役になるときもありました。

地下への幻想の頂点が例の「オペラ座の怪人」。この物語とパリの地下との接点を探る話も面白いです。


現代でも空洞は遺されていて、調査してみるといろいろ面白い事がわかります。●コの遺骨が大量に出てきた場所があり、何だろうと調べてみると、地上には昔、有名なウサギ料理店があった…とか(タ●じゃないですよ)、興味は尽きません。地下探検ツアー、行ってみたくなりました。危ないし、怖そうだけど…。

東洋書林 2009年
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by silverspoonsjp | 2010-08-25 01:18 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(1)

天皇陛下の全仕事

知ってるようで知らないのが天皇陛下のお仕事。

ということで、宮内庁担当記者だった著者が、
天皇陛下の日常業務について解説している本を読んでみました。

社会科でも習ったし、報道されているお仕事もあるし、その大変さは
だいたい予測がつきますが、それを上回る激務です。

思いもよらない仕事が重要な事もあります。たとえば、国体や植樹祭など決まった行事への出席。これらは各県持ち回りで開催されるため、地方を訪問することになるわけですが、なんと、飛行機なら空港まで、新幹線なら東京駅まで、首相がお見送りに来るそうです。(知らなかった…)

他にも、国家の象徴としての立場から、あれこれ気を遣わなければいけない点があり、その辺も考えるだに大変そうです。

それにしても、何がキツイって、「天皇の国事行為」と決められている仕事は、入院か外遊でもない限り、他へ投げられないことあたりでしょうね。
国会を召集するとか、総理大臣を任命するとかは、そうしょっちゅうはないでしょうけど、法律や条令を公布するとか、栄典を授与するとか、細々したものが結構あり、書類の決裁だけで週2回、午後かかりっきりになってしまうそうです。

事務仕事以外にも、接見とか、奉仕団の人への挨拶とか、気疲れしそうな仕事がてんこ盛り。週休二日にならない週も多く、代休もままならない。
この状態が定年もなく、退位するまで続くんですよ。
法律によって「生活のかなりの部分がほぼ自動的に決定済み」な生涯とはどんなものなのか、想像もつきませんが、本書で見る限りでは、本当にお気の毒な印象です。

おかげさまで日本の伝統が守られている面はあるのでしょうが、
(とかいって、実はほとんど明治に作られた伝統だったりするけど)
だからってこれで良いのかという気はします。
日本で一番「滅私奉公」してる人が今上陛下とは(泣

ここで図らずも、数年前に日本でも公開された、スティーヴン・フリアーズ監督の「クイーン」を想い出してしまいました。イギリスのエリザベス現女王を主役にした映画です。

映画の中では、労働党の党首であり、ある種究極の反対勢力とも言えるブレア首相が、エリザベス女王には敬意を持って接する姿が描かれていました。女王は、自分の義務と役割に忠実であろうと努力し、公人として自らを律しています。その姿勢からは、おのずと品格がにじみでています。
 
自分の都合より義務や原則を優先するとは、言うは簡単ですが、いろいろな意味で難しいことだと思います。女王も戦中・戦後の厳しい時代をくぐり抜けてきたので、「不自由な生活」にも耐えられるということはあるのでしょうが…。

ただ、品格を保つということはその一方で、失うものも大きいと、映画を見たときには感じました。ある決められた秩序からはみ出さず、変えるよりは忍従によって自分を律する姿勢は崇高ではありますが、これからの未来、それだけでやっていくのはなかなか難しそうな気配です。

本書は「クイーン」とは異なり、天皇陛下の信条や発言などが取り上げられる訳ではなく、ほとんどがお仕事の内容について淡々と記しており(仕事を通じて人柄を描いている箇所もありますが)、好感のもてる書きぶりです。

講談社現代新書
山本雅人
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by silverspoonsjp | 2009-03-08 22:36 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback(1) | Comments(6)

まったき動物園

【練習問題】

センター試験もやっと終わったところで恐縮ですが、問題です。

以下は短詩です。英文を日本語に訳してみなさい。

The Posby goes into a trance
In which it does a little dance.



できましたか?
ナニ?わかんない単語がある?
しょうがないなー、サービスね、サービス。

The Posby : ポスビー(生き物の名前)
goes into a trance: トランス状態になる
In which:その中で
it:それは
does:~する
a little:ちょっと
dance:踊り

…わかりましたか?





ハイ、それでは答え合わせをしてみましょう。

【柴田元幸先生による模範解答】

ポスビーは 忘我の境(きょう)に 浸りつつ
繰り広ぐるは ささやかな舞。


ああー、受験生の皆さん、暴れるのはやめてください~~~!
そう、全ての単語の意味を日本語で書いてもらっても、
出てきませんて、こんな訳。

しかも意味はまったくその通り。
これはまったきプロのお仕事。

ホント、前回「うろんな客」の時も思いましたが、
どうやったらこんなことが出来るんだろうと不思議でたまりません。

原著の価値を3割増しに高める訳業に加えて、
日本語の活字の選び方や並べ方など、造本も良いお仕事ぶりです。
カバーを邪魔する無粋なバーコード類はシールに印刷して、
きれいさっぱり剥がれる工夫がしてあるのも嬉しい。
さすが河出。

本はいつものエドワード・ゴーリーぶりに、
26匹の幻獣が見開きに1匹ずつ登場し、どんな生き物であるかという説明の短詩が添えられている、ありていに言って、ただそれだけの本です。

しかも、訳者の言葉を借りれば
「華麗であったり、雄々しかったり、温かく優しげだったりすることは絶対ない。どれもみんな、情けなかったり、あさましかったり、影が薄かったり、むさくるしかったり、性格が悪そうだったり、ただ単に訳がわからなかったり、とかそんなのばっかりである。」
あ、おまけにモノクロです。

買う価値あるんだろうか、そんな本、と思う方はいないでしょうけどいちおう背中を押しとくと、怖いものみたさでホラーを見るならば、ヘンなものみたさでこの本を読んだって悪くはないというか、そういうことです。

「まったき動物園」
エドワード・ゴーリー著
河出書房新社 1000円

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by silverspoonsjp | 2009-01-22 23:31 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(4)

鉄のバイエル

昨日のエントリーのつづき。(まだやる気?)

何かホント、あちこちに短い音楽が溢れてるよなーと思って歩いていたら、東京堂のふくろう店のすみっこに置いてあった「鉄のバイエル」という本が目にとまりました。

「鉄の掟」「鉄の結束」「鉄のバイエル」…という訳じゃなくて、鉄道駅の発車チャイム音をピアノ譜にした本です。(東日本版と銘打っていますが、販売も限定なのでしょうか…?)

確か昔どこかで、発車音をベルから音楽に変えたときの苦労話を読んだことがあるように記憶してるのですが(別のホームのメロディが混ざって聞こえても不快にならないようにとか…)そこの会社の方が出した本なのかと思ったら、耳コピーして楽譜を起こしたそうですね。帯によるとTVでも話題だそうで、確かに潜在的に待ってた読者は多そう(笑)。

だけど曲が短いから練習したってどうなるってものでも…と思ったら、Amazonの該当ページにに動画があって、聞き惚れてしまいました。ちゃんと1曲として完成してるんだなと感動したり…(駅で発車時に、メロディの途中で止められると腹立つんですよねーひそかに)。メロディを聴くと、各駅独特の雰囲気がありありと思い起こされます。

この本の話題からは離れますが、発車ベル以外にも、電車にまつわるメロディーっていろいろありますよね。ロマンスカーの警笛(?)とか、電車の接近アナウンスの音楽とか。私が好きだったのは、チェコのプラハの地下鉄で流れる、モルダウの曲です。「次は◎◎駅」というアナウンスの前に、オルゴールのようにちらっと流れるんですが、毎回とてもなごみました。

松澤健 著
ダイヤモンド社
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by silverspoonsjp | 2008-05-19 22:10 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(2)

HENRY DARGER'S ROOM 851 Webster

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映画「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」を観たついでに、映画館で買った本です。

以前、原美術館で展覧会を観たときに、彼の作品とともに、その部屋の様子が写真で展示されていました。

ダーガーについては、良く知られていると思いますが、一応説明しておくと、掃除の仕事の傍ら、生涯にわたって1万ページ以上におよぶ「非現実の王国で」という小説を書いた人です。小説の中ではヴィヴィアン・ガールズ率いるクリスチャン国の少女奴隷たちが反クリスチャン国との戦いを繰り広げ、原稿があった部屋には、魅力的な色彩で描かれた、この物語に題をとった絵が多数残されていました。

映画によると、彼は自伝で、不遇だった幼少期と、罰と虐待に満ちた少年時代を過ごしたと書いているようです。その辛い現実を反映させた物語の中では、彼自身はあるときは少女たちの理解者、あるときは少女たちの敵となり、最初はハッピーエンド、そのすぐ後にアンハッピーエンドを追加した-ある意味で彼にとっては現実そのままな-世界に生きました。

タイトルこそ「非現実の王国」ではあったけれども、自由になる時間のほとんどを、部屋の中でその創作に費やしたダーガーにとっては、そこは現実世界そのものだったでしょう。そして、その世界が生まれる母体となった彼の部屋も、特異な秩序に満ちていました。

ダーガーは、カトリックの信者だったことと興味の方向性から、部屋の中にたくさんのキリスト教関連コレクションや各種資材を溜め込んでいて、引き延ばされた写真からわかるそのディテールは興味深いものでした。

モノがいっぱいあるのにテイストが統一されているというか、常識では伺いしれない秩序がそこに隠されているような感じなのです。

彼は40年間も同じ部屋に住んでいて、介護施設に半ば強制的に移されたとき、部屋は混沌とした状態でした。絵を描くための材料をゴミ箱から漁っていたそうなので、よくいう「ゴミ屋敷」のような感じだったのではないでしょうか。絵を発見したのは大家さんだったそうですが、よくも気がついたものです。

一方、ダーガーにとって、その部屋(つまりは、彼の王国)から引き離されたことは大変な苦痛だったようです。

この本に載っている写真はかなり整理が進んでからのもののようなので、創作が行われていた当時の混沌とした様子からはかなり遠いと思われますが、それでも、ある程度、オリジナルの状態を想像することができて興味深いです。

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本書25ページより。

Amazonでの取り扱いはまだないみたいで、紀伊国屋ウェブでみつけました。著者の一人、小出さんの文章が載っているので参考に。

インペリアルプレス
2007年
3150円
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by silverspoonsjp | 2008-04-19 23:23 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)