本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

カテゴリ:センス・オブ・ワンダーの本( 58 )

お待たせしました!世界SF大会(ワールドコン)お勧め企画の第二弾は、ちょっと敷居が高い?英語オンリーの企画です。

しかし!せっかくリアルタイムで世界のSFの最先端が実体験できるのですから、ここは冷やかしでも参加してみない訳にはいかないでしょう。

なお、こちらに御紹介したプログラムは変更/中止の可能性があります。
必ず、下の↓タイムテーブルをチェックしてください。また、当日は場内で配っているニュースレターを見て変更をチェックしてくださいね。

それほどSFファンって訳でなくても楽しめるかも…というのが選定基準ですので、もっともっとディープな企画もたくさんあります!詳しくはタイムテーブルまで。

当日チケットもありますから、興味のある方は諦めずに会場まで!

・カフェクラッチェ
 世界の有名作家とのお茶会

・サイン会
 誰がいつやるかはタイムテーブルをチェック。

・リージェンシーダンス
 イギリスの1800年代のダンスが習えます。きっと面白いと思う。

・必然のGoogleパネル(The Inevitable Google Panel)
すごいメンツが冗談半分に予測するグーグルの未来。

・ファンタジーとSFでの階級社会(Class-Based Societies in F&SF)
言われてみれば何でSFは階級社会が好きなんだろ?
セシリア・ダート・ソーントン、 エドワード・ジェイムズ、 ハイディ・リショルによる豪華ディスカッション

・ファンは速く読めるのか?:速読ワークショップ(Do fans read faster? A Speed-Reading Workshop)
SFファンは一般の人より本を読むのが早いのか?って…SFの本と筆記用具と紙を持っていけば、その答えがわかる!

・キラー・B・パネル(The Killer B's)
これはワールドコンらしい企画ですね…。アシモフの続編を任されたブリン、ベンフォード、シルバーバーグの3人によるロボットと未来の予測パネル。

・ハッブル宇宙望遠鏡から見た宇宙の最新プレゼンテーション
(The Universe as Seen from the Hubble Space Telescope)
これはかなり面白いと思います。プレゼンテーター、インジ・ハイアさんも面白い。

・たわごと
Gibberish
エルフ語みたいな人工言語に関するディスカッション。

・SFとファンタジーに対するケルトとイギリスの影響(Celtic and British Influenced SF and Fantasy)

・自由意思か?神経科学か?(Free Will? Or Neurochemistry?)
要は「時計仕掛けのオレンジ」系の話かなと想像してるのですが…。

それでは、ワールドコンでお会いしましょう!
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-08-24 00:13 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(2)
最近、恐れ多くも芭蕉の句を中国語訳する機会があり、日本の短詩についてちょっと考えさせられました。他の言語に訳してしまうと、「だから何だ」って感じになっちゃって、難しいんですよ。

試訳したのを見てもらうと、「漢詩の起承転結の4行のうち結の行だけしか書いてない」みたいな印象を与えてしまい、難渋しました。切りつめたミニマムな表現というのは、余白のある絵と一緒で、書いてない部分があるということを察してくれない読み手に当たると困っちゃうんですよね…。

しかし、まだ芭蕉の方がやりやすかった、というのが、川柳を読んでみてわかりました。詩の訳は難しい。でもコメディはもっと難しいんですね、これが。

川柳といえば、私あたりがすぐ思い出すのはサラリーマン川柳。でももうこの辺でも、翻訳してわかってもらうのは難しそうだし、世相をあまりにも良く反映してるせいか、10年もしたら日本人にもわからなくなりそう。

と思っていたところ、ちょうどこのサラリーマン川柳が始まったくらいの時の本を読む機会がありました。田辺聖子さんが編んだ「川柳でんでん太鼓」という本です。

川柳がそういうものなのか、あるいは選んだ人によるものなのか、気取りがないけど、俳句とはまた違った視点ではっとさせられます。

「賞のないのが川柳の栄光」という精神がいかにも大阪らしいです。大阪弁がまた良く合ってるんですよね~。

「命まで賭けた女てこれかいな」   松江梅里

「院長があかんいうてる独逸語で」  須崎豆秋

 後のなんか、東京弁だったらシャレにもなりません…。ただ言葉の違いだけじゃなくて、編者いうところの「人や世間を見るその心の底に、愛というか、批判性というか、人生への見識がなくてはかなわない」という点を良く押さえてありますよね。

ゆるくカテゴリーに分けた編集になっていて、動物を詠んだものがお気に入り。

「悪い事と知ったか猫もふり返り」  岸本水府
「籠を出たうれしさに鶏けつまずき」 上松爪人
「溝まで来て ひよこ一ぺん考える」 刀三
「水すまし思案は少し流れてみ」   東野大八
「立ち話長うて犬も坐り換え」     橘高薫風


あるあるある…。かと思えば人間様も

「社長と昇ったエレベーターは遅刻の日」竹志
「人間を変えられないで職を変え」植松美代子

だの
「酒ついであなたはしかしどなたです」橋本緑雨
「落ちぶれてまだ鍵だけをたんと持ち」吉川雉士郎

だの…。

解説文も川柳にふさわしい内容なのが嬉しいです。
ちなみに私が一番好きだったのはコレ。

「言いますけど大屋政子に勝てますか」 忠三郎

え。大屋政子を知らない?んーそりゃ困った…

講談社(現在は文庫に入ってます)
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-08-09 23:27 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
この短編集にはタイム・トラベルらしきものが出てくるので、カテゴリーとしてはSFに入るんでしょうが、どちらかといえばアメリカ文学の伝統というか、そんなものを感じます。

ごく普通の小市民が主人公であり、不可解とはいえ、まあそんなこともないとは言えまい、くらいのいきさつがあって、どこか読み手をほっとさせる結末があって終わる…。

プロットや語りの面白さだけで読もうとすると、大したことはない話と読み飛ばしてしまうかもしれません。だとしたら、あと10年くらい経ってから、読み直して見ると良いかもしれません。

この種の物語に込められた機微を理解するには、自分が似たような境遇に遭ったという経験か、そうなったらどうだろうと思う想像力か、どちらかが必要なようです。

ということで、全ての方にお勧めとは言えませんが、映画で言えば…そうね、オシャレじゃないウディ・アレンのような、そんな感じですね。

95年に亡くなっておられるので、ワールドコンでお目にかかれないのは残念ですが…。

早川書房 2000円
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-08-07 20:20 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)

遺す言葉、その他の短編

もうワールドコン開催まで幾日もなくなってしまいました。
本読むヒマもないというこの矛盾した状況。しかし、企画に名前が挙がってる人はきっと来日するだろうから予習しておかねば!

ということで本日はアイリーン・ガン。何せこの本のカバーの「略歴」のコーナーに、2007年横浜で開かれる世界SF大会に参加予定って書いてあるんだもん(来日しなかったらすみません)。

しかしカバーに刷るとは大胆な、絶対来年までに増刷する見込みがあるのねH川書房よ!
あ、いえ私たちが買って増刷して頂くんですね、すみません(低姿勢)。

非常に遅筆だということと、創生期のマイクロソフトに勤めていた、というので知られている作家です。

短編集なので内容を書くと必然的にネタバレになってしまうので書きませんが、自分の一部を何か(傍目にはつまらないもののために)に明け渡してしまう、という話を読んでいると、●イクロソフトっていうのは怖ろしい会社だったのかなーとぼんやり考えてしまいます。

鳥好きとしては、「コンタクト」が嬉しい作品です。
「時間は一方にしか流れないが、精神はおもしろいことにそれを超越する」かどうか、まずは読んでみてください。

1800円
早川書房
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-08-06 23:27 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
こんばんは。
ようやく復活でございます。
相変わらずなかなかページが開けない…。イライラしているうちに、こんな妙なものをエントリーしているのでございます。

テレビから流行りだしたらしいので、ご存じの方はとっくにご存じであろうこの本、お札を使って(正確にいうと、お札に印刷されてる肖像画を使って、ですかね?)折り紙を折る、という実用書(?)です。

どんなものかは四の五の言わず↓こちらを御覧頂ければわかることでしょう。

ターバン野口の公式サイト。
(You Tubeで検索すると、動画もあるらしいです)

何が凄いって、肖像画の周りにある模様もバッチリ取り込んで折り紙の要素にしてるところですね。あと、折った後にそこはかとない哀愁の漂う表情に見えるのが何とも…。お札で遊ぶな!人の顔で何をする!というお叱りが聞こえてきそうですが、教科書に落書きするより、こっちの方が建設的だから許してやってください。

で、自宅にテレビもないくせにどうしてこの本に巡り会ったかといえば、それは雑貨系書店「ヴィレッジ・ヴァンガード」で陳列してあったからです。非常にこの店らしいチョイスだと感心しました。妙典や奈良のように趣ある配列の支店もあるかと思えば、場所によってはすっかりジャングル化しており、神保町店や後楽園店は自分としては非常に入りづらいんですが、時々珍品に行き当たるのでやめられません…。

B6判
690円
宝島社
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-05-10 23:39 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(4)
a0003079_23493451.jpg

可愛らしいタイトルにダマされちゃダメダメ。どうせカワイイSFなんてないんだから。
と用心しいしい読んでみると、主人公の「かめ」がカワイイのでフェイントかけられた気分。
かめだけに(?)老成した性格が何ともいえません。

お話はのんびりとした雰囲気です。かめくんは倉庫で働いてたり、リストラされたり、アパートに住んだり、図書館に通ったり、ごく庶民的な生活を送っています(日本橋でんでんタウンが出てくるので、舞台はどうも大阪らしい)。

しかし、この話は、かめさんもウサギさんも良い子の皆さんとお話が出来ますよ、というおとぎ話の類ではありません。かめくんにヒトの言葉がわかるのは、そのように作られてるからなんです。何のために…?

他にも、かめくんには不思議な特技があります。それは何かにつながっているようなので、その部分がほのぼのしたお話にちらちらと影を落とし始めます。13ページくらい読むともう、一体この話の背後に何があるのか知りたくて、読むのがやめられなくなります。

と、唐突に、その種明かしがあったりして、なーんだ、そういうことだったのかぁ、と思うと、実はその後ろにまたさらなる背景が被さってきていて…という、まるで親カメの背中に子ガメが乗って…という世界が展開していきます。

穏やかで小さな日常に陰を落とす、大きな世界の存在。

大好きな「ヨコハマ買い出し紀行」に少し似たテイストを感じます。

それでも、かめくんは達観しています。自分はそのように作られている。世界とはそのように出来ている…。仮想の世界が現実に影響を与え、現実の世界はまた仮想の世界を変えてゆく。歴史を、世界を、自分が生きているということを、どう捉えるか。かめくんの優しい目線の先に、新たな地平が見えています。

北野勇作著

徳間書店
ISBN:4-19-905030

長編
ハードSF度   ★★★★★(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★★★☆
個人的好み   ★★★★★(ハードSF系に点が甘く、ファンタジーにキビシイ私ですが、この 作品は塩味の後に甘味、甘味の後に塩味という、やめられないサイクルで出来ていて、つい手が伸びます)。
              
〈お好きかも〉
カメが好きな方(マストアイテムです)
ネコが好き(ネコも登場します)
ガメラが好き(ガメラも登場します)
「男おいどん」シリーズのファン(アパートも登場します)
図書館関係者(かめくんは図書館が大好きです)

その他のSFのオススメは↓タグからどうぞ。
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-02-08 23:53 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback(1) | Comments(4)
a0003079_23383890.jpg
表題作は圧巻。これは読んで頂くしかありません。
非常にユニークな作品です。褒め言葉以外見つかりません。

って言うか、中味に触れずに紹介するのは困難。
私が読んで最初にイメージしたものは「プリオン」。

で(えっ、もう終わり?)、

すごい筆力なので、かなりリアルに情景が想像できるため、読み終わった後、ちょっと気持ち悪くなるかも…(ホラーではないんですけど)。

2004年出版の本なんですが、ごく最近2つほど巻頭作「デュオ」を思い出させる邂逅があったので、何か引き合う力があるのかなとしみじみしてしまいました。

「デュオ」というのは、ピアノ調律師を通して描いた、とあるピアニストの物語なんですが、2007公開になった「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」と登場人物の設定が似てるので、おおっ!と思ったわけです。過去にも同様の設定を使った作品はありましたが、その枠をどう生かすか、ここが作家の腕の見せどころ。本作は最後の飛躍がSFらしくて好きな作品です。

飛浩隆著

ハヤカワ文庫
ISBN: 415030768

中編
ハードSF度   ★★★★☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★☆☆☆
個人的好み   ★★★★★

〈お好きかも〉
グレッグ・イーガンのファン
ミステリー、ホラーのファンもいけるかも(私は両方とも苦手だけど、この本は面白かった)

その他のSFのオススメは↓タグからどうぞ。
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-02-06 23:45 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)

ワールドコン記事の続き

ワールドコンとはファンによるファンのための文化祭みたいなもので、講演会や作家とのお茶会、朗読会、「指輪物語」関連の企画から徹夜で替え歌を歌うとかのしょうもない企画まで、ありとあらゆるイベントが催されます。ワールドコンなのでお客さんは世界中から集結する予定!

イベントのうち最大のものは、SF界の芥川賞(←ファンが選ぶので性格は違うけど)「ヒューゴー賞」を選ぶこと。あなたの投票でヒューゴー賞を決めましょう!

詳しくはこちらの公式サイトまで。

なお、ワールドコンの企画の詳細はまだ発表になってないみたいですが、参考までに昨年の日本SF大会の企画はこちら。今年はワールドコンが日本SF大会も兼ねているので、こうした笑える企画がさらにパワーアップして登場することでしょう。私のツボに入ったのは「サイバーパンクの部屋」のコメント。「エージェント・スミスお待ちしてます。去年は1人しか来なかったぞ。今年は増えろ]。

企画といえば、「空想の建物をつくる」をキャッチフレーズに、2005年に星雲賞(日本版ヒューゴー賞)に輝き、SF大会の企画でも登場した前田建設ファンタジー営業部銀河鉄道999のレールを設計しちゃう本気ぶりはすごすぎ…。
[PR]
by silverspoonsjp | 2007-01-29 21:48 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
さて、ここでいきなり王道小説の登場です。

王道小説とは何か?
それは「人間」を描いた小説であります。人間が良く描けている小説、それが近代文学では良い小説だということになっているのです。テッド・チャンの小説は人間というものについて、短い物語のうちにとことん掘り下げた小説で、王道と呼ぶにふさわしいものです。

Stories of Your Life、とはうまいタイトルです。
日本語では安手の占い本みたいでさほどインパクトがないかもしれませんが、英語圏の人にはかなり訴求力のあるタイトルではないでしょうか。キャッチコピーに「You」を持ってくるのは宣伝の常套手段ですから。読み手を指して「あなた」と言っているのだろう、と、手にとってもらえることでしょう。

ここでもう一つ唸らせるのが、表題作。タイトルは「Story of your life」と単数になってます。ここではもう「あなた」は読み手のことじゃないんですね。それでおっ?と思わせる。
物語の語り手は、ずっと「あなた」に呼びかけている。
しかし、それは本を読んでる「あなた」のことではなかったんです。
では誰なのか?なぜ呼びかけるのか…。
実に憎い書き手です。

「地獄とは神の不在なり」という短編も面白いです。中味はタイトルそのまんま。主人公が、「地獄、それは神がいない場所である」と悟る、というそれだけの話。しかし非常に鮮烈な印象を残します。

というわけで、非常に良く練られた、いずれも完成度の高い短編が8編も入ったお買い得な本。-なんですが、小説の王道、そしてSFの王道でもありながら、好みはたぶん分かれることでしょう。

SFの王道とは何か?
それは、科学的なアイデアを核にした小説のことであります。
そのあり方には二種類考えられます。

1.科学的アイデアを説明するために小説の体裁を取っている。
 アイデアが主でストーリーが従。ここには、小説を書くために科学的設定を作ったが、やたら設定の説明が多くなってしまい、ミイラ取りがミイラ状態のものを含む(笑。

2.小説を書くためにアイデアが利用される。
 ストーリーが主でアイデアが従。あくまでも科学はストーリーを動かすために使われている。

1,2を両端としてグラデーションがかかってるとすると、テッド・チャンのこの小説は数学だの言語学だのが表に出ていて、一見1寄りに見えます。が、良く読むと、アイデアは従で、小説としての成分が高いのがわかり、恐らく典型的な2の範疇に入るものと思われます。

自分が暮らしている世界を、いきなり思いもよらぬ角度から見たらどう見えるのか。テッド・チャンの作品を読んでいると、その答えがいくつも見つかります。ただ、彼の場合、あくまでも人間を描くのが目的なのが、ちょいと不満なんですよ。SFは別に人間なんか描かなくてもいいんじゃないかなと、私は思っているので…。

いえ、ライオンとキリンの話だけど実は人間界の風刺になっている話、などではなくて、たとえば、こんな法律が適用されると世の中こうなる、とかいう思考実験は他のジャンルじゃやりにくいけど、SFならOK。そういう、ルール無用なところがテッド・チャンの作品にはないので…。しかし、旧来「小説」ジャンルの作品としてならば、一級品だと思います。

テッド・チャン著
浅倉久志 訳

ハヤカワ文庫
ISBN:4150114587

短編
ハードSF度   ★★★☆☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★★☆☆  
個人的好み   ★★★☆☆

〈お好きかも〉
人間が良く描けてる小説が好きな方
短編が好きな方
プロットの優れた小説が好きな方

その他のSFのオススメは↓タグからどうぞ。
[PR]
by silverspoonsjp | 2006-12-01 23:34 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback(1) | Comments(4)
ルーマニアの作家、ミルチャ・エリアーデの作品集。

収録されている11編のうち、一番有名なのは「ムントゥリャサ通りで」でしょうね。ただ、この話は手強いので、他のを見てみましょう。

「十四年昔の写真」
この作品は、奇跡を起こすという説教師のもとへ、彼のおかげで妻の病が治ったと感謝しに来る男の物語。男は外国人で言葉が上手くない、という設定になっていて、何とももどかしい会話が展開します。

回りくどく、なかなか核心に入らないモノローグ、周りで聞いている者たちの苛立ちと勝手な解釈、実際に起こった出来事は何だったのかという考察…この辺、「ムントゥリャサ通り」と同じ手法ですが、短いだけに輪郭がはっきりしています。男の言っていることは、本人にとっては紛うことなき真実なのに、聴衆や、話に登場する人物にとっては全く違う意味合いを持っているのです。

これこそが幻想文学だと言われれば、はぁそうですか…と言うしかないんですけど、どうも私にはファンタジックな空想物語とは読めないんです。私の幻想文学の定義が間違ってるのかもしれませんが…。

エリアーデは宗教学者だそうですが、「十四年昔の写真」で描いていることは、宗教というものの本質を突いてるんじゃないかと思いますし、実は人間の認識の仕方をものすごくリアリステックに描いたとすれば、こうなるんじゃないかという気がするのです。

この本の詳しい内容は、作品社のHPにてどうぞ。

ミルチャ・エリアーデ 著 
住谷 春也 編 
作品社
四六判  555ページ 5,040円
ISBN 487893576
[PR]
by silverspoonsjp | 2006-11-06 22:42 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)