本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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カテゴリ:センス・オブ・ワンダーの本( 58 )

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何だろう、と思わせる美しい表紙が印象的です。

表題作は、熱風の惑星サラーハで風を呑んで暮らす生物たちの物語。
表紙の絵は彼らを描いたものです。
彗星の衝突を予見した彼らは、かつて老ヴォールの話していた「別のサラーハ」を思い出します。滅亡の前に何とか他の世界と交信したい…そんな彼らの切ない願いは叶うのでしょうか。

  降伏の点滅を確認すると、クーリシュは降下し、ソンボーの下に回り込んだ。
  「やあ、ソンボー。六百五十日前は世話になったね」
  「クーリシュか。気まぐれで乱気流から助けてやったのが仇になったな。あの時の礼がこの仕打ちか?」
 「恩を仇で返したりはしないよ。今日は喧嘩じゃなくて話し合いに来た」
  (中略)
 「夜側に行って嵐から離れよう。食事はあきらめておくれ」

  
会話のやりとりになぜか宮沢賢治の「やまなし」を連想しつつ、ラストシーンではSFを読んでて初めてボロ泣きしてしまいました。

他にも、陸のない惑星へ墜落してしまった男の物語「漂った男」など4編が収録されています。巻頭作品「ギャルナフカの迷宮」を読むと、努力、友情、勝利をそのまま小説にするっていうのは何だかなーと思わなくもないんですが、ヘンに斜に構えてるうえ暗くてジメジメ、希望のないSFばっかり読んでいると、こういう楽天的な、人間の良識を信じるタイプのお話にしみじみしてしまいます。

そうですよ、SFには明るい未来や人類の知恵を讃えるものだってたくさんあるんだから…。

ISBN 4150308098
早川文庫
小川一水 著

中編
ハードSF度   ★★★☆☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★☆☆☆ SF(サイエンス・フィクション)度 
個人的好み   ★★★★☆(表題作がとても好き)

〈お好きかも〉
日本人作家の作品が読みたい方
叙情的な作品が好きな方
トラウマになるような暗い作品はイヤな方
ジュブナイル系の読みやすい文体です。

追記:今頃気づいてすみませんが、本書所収の「漂った男」が2006年度星雲賞短編部門を獲得しました。おめでとうございます!

その他のオススメはこちら
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by silverspoonsjp | 2006-07-29 02:10 | センス・オブ・ワンダーの本
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ワールドコン勝手に応援企画と致しまして、面白かったSFをオススメするシリーズ企画を作ってみました。その1とか言って、思い出したようにたまーに続きが登場するかと思いますが、その辺は適当適当。

皆様からのオススメSFのTBも歓迎致します。(お願いしておいて何ですが、迷惑TB対策を設定してあるため、こちらへのリンクが入っていないとエラーになる場合があります。申し訳ありません)

なお、個人的に好きなSFについての記事はこちら

さて、記念すべき第1回はレイ・ブラッドベリの
 「ウは宇宙船のウ」
でございます。

SFはほとんど読んだことがない、という方にはこのあたりが入門として良いかも。

原題は‘R is for Rocket’。
短編を集めた作品集です。

Rocketって言葉自体、何となくノスタルジックな響きがありませんか。
ちょうど人類が宇宙に初めて飛び出す頃に書かれた作品なので、この本に登場する「ロケット」には夢と憧れが詰まっていて、世間様の宇宙熱はとうに冷めてしまった2006年に読み直すと、ああ、古き良き時代だったんだなあと妙な感慨にふけったりしてしまいます。

16編の作品のほとんどには、タイムマシンやロケットなどSFらしい小道具が登場しますが、お話の中心になっているのは、未知の世界への瑞々しい歓びや憧れ、それを身近な人たちと分かち合う楽しさ、などなど。

ちょうどO・ヘンリーのような、ちょっと昔のアメリカの短編の読んだときみたいに、何かしら救いがあって、でもちょっと悲しい、という気分になります。

それに、例えば本書に収録の「いちご色の窓」なんて作品を読むと、舞台が火星に移っても、この人たちの心性は開拓時代の頃から変わらないんだな、なんてことも見て取れる気がします。

萩尾望都によるマンガは原作の雰囲気を良く伝えている、というかひょっとするとそれ以上の仕上がりかもしれません…

ISBN4-488-61205
創元SF文庫
大西尹明 訳

短編
ハードSF度   ☆☆☆☆☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★★★☆ SF(サイエンス・フィクション)度 
個人的好み   ★★☆☆☆(‘いかにも’なSFではないので★は少ないけど
                 ええ話や…という感じで上手いと思う)
〈お好きかも〉
叙情的な作品が好きな方
SFは理屈っぽいから苦手、と思ってらっしゃる方
O・ヘンリーのファン
アメリカ短編集が好きな方
ミステリーファンも好きかもしれない
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by silverspoonsjp | 2006-07-04 22:54 | センス・オブ・ワンダーの本

SFバトン

crannさんのSextans 好奇心のコンパスからSFバトンを頂きました。
関西書店巡りの予定をちょっと棚上げしまして、まずはこちらから。

ワールドコンのバックアップ企画だそうで。このさい「補完計画」というのは如何でしょう(コラ)?

質問は以下の通り=====================

★1  初SFはいつ?何でしたか?
★2  ベスト・オブ・SF を5つあげるなら? (映画でもいいですよ)
★3  ベスト・オブ・SF作家 を3人選ぶなら?
★4  今、おすすめのSFは?
★5  バトンを転送する(笑)相手をどうぞ!
=============================

★1  初SFはいつ?何でしたか?たぶん「マジンガーZ」です。話の中身はあまり覚えてないんですが、母がいうには物凄く熱中して見ていたとか。昔から武闘派だったらしい(爆

wiki英語版のマジンガーZの項目を見ると、海外でも爆発的にヒットしたものの何故かフランスでは流行らなかったそうです。理由は、先にゴルドラック(グレンダイザーのことかな?)が放映されていたため、二番煎じと思われちゃったためだとか。ノンノン、逆だってば!!

その後は「宇宙戦艦ヤマト」。 「タウ・ゼロ」で、ラムジェット航法は艦首の大穴から水素を取り込むという記述を読み、とっさに思い出したのはヤマトの波動砲の孔でした。ヤマトのあれ、本当は恒星間旅行のための孔だったのかも…?

★2  ベスト・オブ・SFを5つあげるなら? (映画でもいいですよ)5つだなんて、また回答不可能な設問を(笑)。各ジャンルでどうでしょう?

〈小説〉
「ケルベロス 第五の首」 
ジーン・ウルフ

これは最近読んだ中では一番面白かったSF(といっても、原著は1972年の作品)。
お互いの関連を仄めかしつつ展開する3つの中編からなる物語です。
ストーリーはUltan.netさんのこちらの紹介がわかりやすいです。

双子惑星サント・クロアとサント・アンヌを舞台に、「名士の館に生まれた少年の回想」「人類学者が採集した惑星の民話」「尋問を受け続ける囚人の記録」という3つの物語が展開します。
かつて人類が植民地化したさい、原住種族「アポ」は絶滅したと思われていました。しかし、彼らには変身能力があり、実は人類になりかわっている、という説が密かに語られていて…

記憶の全てを移植されたロボット、番号でしか呼ばれない少年、代々のクローンが住む館…幻想的な雰囲気の中に現れる切れ切れの記述から、「自分が同一の自己であること」の保証が揺らぎ始めます。

ミステリとして読むのも面白いです。果敢にも謎解きに挑んだ方々もいらっしゃいます。ine's daypackさんのこちらの記事、謎解きのポイントを洗い出す「Ultan.net」さんのこちらの記事などを拝見しつつ読むと、新たな楽しみが見つかることでしょう。

「重力の虹」
トマス・ピンチョン
まず、タイトルが良いですよね~。私は単純に、本に登場するミサイルの弾道を指しているのかと思っていましたが、他にも諸説あるようです。

「難解」という感想を見かけたんですけど、それは本に書かれている事柄はオチに向かって収束されるべきだと思って読むせいじゃないんでしょうか。世界で起こること全てを関連づけて認識するのは不可能です。でも、何らかの関わりはある。現実の世界では当たり前のことですが、それを小説でやってみたらこんな感じか、ということで。

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 
村上春樹
静かで美しい「世界の終わり」と、波瀾万丈の「ハードボイルド・ワンダーランド」という二つの物語が交互に進行していきます。そしてついに2つが交わるとき、現れる世界とは…。

SFと読めばSF,冒険小説と読めば冒険小説、村上作品に時々現れる、「自己の認識」について新たな切り口で提示したものといえばそうも読めます。雨の降りしきる日に楽しみたい本です。

「ニューロマンサー」 
ウィリアム・ギブスン
サイバーパンクは大好きなジャンル。
この本に関する紹介記事はこちら

「ファウンデーション」シリーズ 
アイザック・アシモフ
読み出したらやめられない面白さ。歴史が好きな方には強くお勧め致します。
まるで「三国志」を読んでるような感じです。
本格SFファンでも、特にSFに興味がない方でも、楽しく読めること間違いなしの名作。

「順列都市」 グレッグ・イーガン
こういう技術が現実になったら世の中どうなる?という実験を文字の力でやってみせるのもSFの醍醐味。全人格をスキャンでコピーし、仮想世界に置いてみるとどうなる、という本書のアイデアを追っていくだけでもわくわくします。

〈映画〉
メジャーどころばかりですが、好きなものは好き。
SF小説は物語の背景や技術の説明などがくどい!とお嘆きの方には映像の方が楽しめるかも。ただ押井守作品のように、主人公が本以上にガンガンしゃべる、という例もありますので要注意。

「ブレードランナー」
SFジャンルで一番好きな作品。劇場公開版はとってつけたような(じゃなくて、とってつけた)ハッピーエンドでおやおや??と思ったのですが、やはり監督の意図とは違ったらしい。御覧になるならディレクターズ・カット版をオススメします。
「2001年宇宙の旅
SF映画といえばやっぱりコレ。華々しい「ツァラトゥストラはかく語りき」のファンファーレに始まる進化の物語。映像・音楽ともに一級品。

ほかにも、以下の作品が大好きです。最近あまりバカSFを見ていません。面白いのがあったら是非教えてください!

・「惑星ソラリス」
・「ストーカー」
・「フィフス・エレメント」
・「エイリアン」
・「スターウォーズ」エピソード4
・「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作
・「トロン」
・「トータル・リコール」
・「銀河ヒッチハイクガイド」

〈アニメ〉
SFアニメのジャンルは日本のお家芸。全体的にヒドイ作品でも何かしら取り柄はあるので選ぶのは難しいけど、好きなのというとこんな感じ?並べてみると改めて、三つ子の魂百までというか、ロボットものが好きらしい。

「機動戦士ガンダム」で面白かったのは、ちょこちょこっとしたディテールにリアリティがあったところ。SFにはありえねーという設定が当然あるんで、それ以外の部分は本当らしい方が面白い。旗艦「ホワイトベース」も相手は名前を知らないので「木馬」と呼んでいたりとか。
でも今冷静に考えると、名前を抑えとくぐらいの諜報活動をやってないんじゃ負けると思う。

「銀河旋風ブライガー」は東京ローカルだったのでご存じない方も多いと思います。絵は毎回バラバラ、設定もむちゃくちゃで、それが面白かったの(核爆)
どんなお話かは「フリクエンシーJ9」さんのこちらでどうぞ。各回ごとのツッコミが笑えます。

中味はともかく金田伊功さん作画のオープニングがムチャクチャ好きでした(こんな感じ)。金田節炸裂!光の表現が素晴らしいです。でも相変わらず人間のデッサンは狂いまくりです(笑)。あ、主人公が巻き毛なのも私的にはポイント高いです(爆)。

「新世紀エヴァンゲリオン」は今さら説明するまでもないでしょうが、噂では聞いていても御覧になっていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。この作品、SFにアレルギーがあっても見る価値はあると思います。wikiの紹介記事は良くまとまってます。エヴァンゲリオンで検索してみて下さい(リンクしようと思いましたが文字化けしちゃって…すみません)。

ロボットものの革袋を借りてどんな酒を盛り込むかに腐心してきた日本のアニメ界ですが、ついにこの作品で頂点に達した感があります。が、あまりハマると、「ロンギヌスの槍」「マギ」「使徒」「ゼーレ」なんて単語に意味もなく反応してしまう危険があります。

実写版のSFXはWETAが担当するそうで、そのヴィジュアルイメージがこちら。うおー!カッコいいですね!願わくば作品の繊細な内面世界もうまく反映してくれますように…。

ほかにこんなのも…。
・「未来少年コナン」
・「コブラ」
・「イノセンス」

〈コミック〉
「ヨコハマ買い出し紀行」 芦奈野ひとし
以前に書いた紹介記事はこちら
この作品がお好きなら、 「カラクリオデット」鈴木ジュリエッタもお好きかも。「鉄腕アトム」以来綿々と続く人間とロボットの物語も、今やキーワードは「共生」なんでしょうか…。
「11人いる!」  萩尾望都
原作を読まずに映画「ロード・オブ・ザ・リング」を見ちゃったものだから、「フロド」って「フロル」に似てるなー(←名前がですよ。いや、ビジュアルもかな?いや属性もかな?…)と思ったもんです。
「百億の昼と千億の夜光瀬龍/萩尾望都
「スターウォッチャー」メビウス
「銀河鉄道999」松本零士

★3 ベスト・オブ・SF作家 を3人選ぶなら?同じ作家で2作以上好きな作品がある人って、実はなかなかいないです。
強いてあげれば、

アイザック・アシモフ
フィリップ・K・ディック
萩尾望都

★4  今、おすすめのSFは?上の「好きなSF」は自分としては面白いと思いますし、メジャーどころのつもりなんですけど、SFを読み慣れてない方には何じゃコレ?というのも混ざってます。まずは無難なところで…。

「ノービットの冒険 いきてかえりし物語」パット・マーフィー
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グィン
指輪物語ファンにオススメの2冊↑。
特に前者はタイトルからしてまんまなんですが、絶妙なパロディになってます。
訳も瀬田訳準拠(?)。スゴイ!後者は「二つの塔」後半にインスパイアされた作品だそうです。

「スコーリア戦史」キャサリン・アサロ
新刊で出たとき三省堂の文庫売り場に山と積まれていて、表紙が可愛かったので買いました。主人公のソースコニーを始めキャラクターがきちんと描けていて、特に少女漫画系がイケる方には楽しく読めると思います。

翻訳も非常に上手いです。私はずっとキャサリン・アサロってペンネームの日本人が書いたのかと思ってたくらいです(いや、マジで)。

「知性化戦争」 デイヴィッド・ブリン
どんなに困ってるときでもユーモアを忘れない登場人物たちに導かれて、異なる外見、異なる価値観の種族がせめぎあう世界に軽やかに入っていけます。自分の感情を「グリフ」という形で表すことができる、ティンブリーミーという種族が出てくるんですけど、疑問を表すグリフ、恐怖を表すグリフの他に「せっかくのジョークを理解してもらえない哀しみ」なんてグリフもあったり…。

「世界の中心で愛を叫んだけものハーラン・エリスン
「エヴァンゲリオン」の最終回タイトル「世界の中心でアイを叫んだケモノ」に引用されましたように、非常にインパクトのあるタイトル。そしてこのタイトルの眼目は最後の3文字にあるわけです。

人間爆弾にされた腹いせに人類全部を滅ぼそうとするヤツだの、高速道路でちょっと抜かれたからって相手を殺すまで追いつめようとするヤツだの、まさにケダモノ以下の登場人物ばっかりを集めた中・短編集で、本来なら暴力小説の傑作としてマニアの間でだけ読まれるようなたぐいの本かもしれません。が、叫んでるだけにいちおう愛もあるし(爆)、ヒューゴー賞、ネビュラ賞の2冠を獲っていて、世間様的にも認められている様子。

プロットが鮮やかで悪魔的な魅力が詰まっているので、短編小説がお好きな方にお勧めする次第。

ちなみに「世界の中心で愛を叫ぶ」が大ヒットして吊革広告なんかで宣伝されだしたときに、「いやー、あの暴力的な話を日本に置き換えて、よくP○Aが黙ってたもんだ…しかもミリオンセラーなのね?」と心の中心で快哉を叫んだバカモノは私です。

★5  バトンを転送する(笑)相手をどうぞ! バトンのワープ先ということで(笑)
「旅とこもごも」のElfarranさん-ファンタジー寄りでも結構ですので、ぜひ!
「指輪物語よもやま」の小鳥遊さんー「ハイペリオン」はじめ本格ファンとお見受け致しました。お忙しいと思いますが、できましたら…
Sea SongsのTitmouseさん-SFアニメの話題に反応されてましたので…最近の本にもお詳しそうですし。

のちほどお願いに上がります。どうぞよろしくお願い致します。

★おまけ
他にもいろいろSFが読んでみたいので、他の方のバトンもご紹介します。
TBも歓迎です!
「ラッコ庵日乗」さんのお答え
読んでみたい作品がいっぱい…
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by silverspoonsjp | 2006-06-24 23:53 | センス・オブ・ワンダーの本
旅バトンを頂いて、すっかり旅づいて参りました。

折しも「國文學」の7月号が「旅と日記」の特集で、まことにタイムリーでした。
特集ではなく連載の方で小池昌代さんの詩集「地上を渡る声」が引用されていました。

「旅というものは、だから、たくさんしたからいいでしょう、というものではないのですよ。ただひとつの旅が、生涯をかけて終わらないこともある。

(中略)

旅から帰ったあと、同じ場所で、あなたはさりげなく日常を始めます。けれど、旅人は誰ひとりとして、同じところへは戻れない。あなたは常に、前と違うところへ、着地する。」


イスタンブールへの取材の旅を描きながら、旅にとっての日常、日常にとっての旅が語られて、なるほどと思いつつ読みました。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」で、主人公たちが故郷に帰ってから、うわべは出発前と同じ生活をしているのに、心の中はまるで違ってしまっているというのがとても印象に残っているんですけど、程度の差はあれ、旅から帰るというのはそういうことかも知れません。自分では全然自覚できないけれども…。

さて、旅といえば私がまず思い出すのは夏目漱石の「草枕」(青空文庫で全文が読めます。こちら)。

「智に働けば角が立つ…」の冒頭部分があまりにも有名なので、お説教じみた話かと敬遠される方もいるかも知れませんが、芸術と旅について考えている部分が静かに流れていたかと思うと、物語部分がメロディーを奏で、やがてそれが退いて…という具合で、また、言葉の連想されてゆくリズムもとても音楽的です。

松岡正剛さんの「千夜千冊」によると、ピアニストのグレン・グールドも熱烈な「草枕」の愛読者だったそうで、ひょっとしたら彼も、この作品の音楽的なところに惹かれたのかなと思ったりしました。それはさておき、草枕の中で直接旅について触れたところ。

「われわれは草鞋旅行(わらじたび)をする間(あいだ)、朝から晩まで苦しい、苦しいと不平を鳴らしつづけているが、人に向って曾遊(そうゆう)を説く時分には、不平らしい様子は少しも見せぬ。

面白かった事、愉快であった事は無論、昔の不平をさえ得意に喋々(ちょうちょう)して、したり顔である。これはあえて自(みずか)ら欺(あざむ)くの、人を偽(いつ)わるのと云う了見(りょうけん)ではない。

旅行をする間は常人の心持ちで、曾遊を語るときはすでに詩人の態度にあるから、こんな矛盾が起る。」



これも、わかるわかる!って感じですね…
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by silverspoonsjp | 2006-06-16 00:48 | センス・オブ・ワンダーの本

雨柳堂夢咄

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時は明治の末あたり、東京は根津の界隈にある雨柳堂という骨董屋さん。祖父の代わりに店番をする蓮青年の元へ、今日もいわくありげな品々がやってくる…。

長い年月を経ると物にも魂が宿るといいますが、持ち主の強い想いがこもった骨董は、想い人のところへ帰ろうと店を勝手に抜け出したり、絵から出て行ってしまったりとやりたい放題。蓮はいつもため息をつきつつ、その後始末に追われます。

「泉鏡花」か「聊斎志異」かと言った趣も少しありますが、大部分のエピソードは英国モノも描いている著者らしい、ロマンティックなストーリーに彩られています。

何か面白いマンガないかなー?と聞いたら、この道のプロたる茶道具商の娘さんが貸してくださった本なので、内容的にも確かなはず(^^)。ちょっと絵にはクセがありますが、ストーリーを追っている分には気になりません。

なんて少女趣味なお話なんでしょと呆れつつ、涙グズグズになってしまいました(喫茶店で泣きながら読んでるのは我ながらマズイと思ったけど)。
早く続きを借りなくちゃ…。

波津彬子 朝日ソノラマ
590円
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by silverspoonsjp | 2006-04-11 23:07 | センス・オブ・ワンダーの本

Arne 10号

a0003079_2245476.jpg2002年9月創刊の小さな雑誌。
最新号は2005年12月発行の第14号です。

編集・発行はイラストレーターの大橋歩さん。
編集者だの何だの、中間に挟まってる人がいないせいか、
ブログ的といいますか、個人色がはっきり出ています。
こんな雑誌を作りたいという思いがそのまま形になった
すがすがしい作り。

情報は多すぎず、
背伸びせず、目の届く範囲の手作り感覚が今風です。
大橋さんのコラムや本は、覚えている限りではずっと
こういう雰囲気だったので、やっと時代が追いついたというべきなのか…。

ちょっと良いなあと思う本屋さんや雑貨屋さん、
コーヒー屋さんなどには必ずと言っていいほど置いてあるので、
底辺にきっと何かつながるものがあるのでしょう。

大橋さんの本はとても品がある一方で、
趣味が良く、観察眼が鋭い中高年女性にありがちな、
どこかイジワルな視線も感じられ(そんなことないよ!と皆様おっしゃるでしょうが)
(勝手に)苦手に思っていた一時期もありました。

この歳になって、ヘンに気を回す人よりは、
本音をはっきり言ったり書いたりしてくれる人の方が
ありがたいということに、ようやく気づいた訳ですが。

で、この号はバックナンバーなんですが、
村上春樹さんの自宅について取り上げていたので、買った号です。
ファンだからというよりは、なるほど文章もお住まいも共通するセンスをお持ちなんだなあ、
と感心したためです。同じ場所に住んだり、同じものを買いそろえたり、
あるいはこのお宅を譲り受けて(そんなことあるはずないけど)住んでみたりしたところで、
絶対こうは行かないなあとしみじみ思った記事でした。

発行所 イオグラフィック
定価525円
アルネのHPはこちら
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by silverspoonsjp | 2006-02-26 22:16 | センス・オブ・ワンダーの本

Paper Sky no.16

a0003079_00443.jpgお久しぶりでございます。今週来週と地獄スケジュールのため失礼しております。お返事遅れて申し訳ありません。来週が終わればとうとう解放の予定なので今しばらくお許しくださいませ。

さて、積ん読だった「Paper Sky」(ペーパースカイ)16号、ようやく最後までめくりました。何とか行きたいと思っております島根の特集だったので買いました。今を去ることん十年前に(そればっかり)仕事で空港を通過したっきり、送迎バスと宿舎、依頼先から一歩も出ることなくトンボ帰りしてしまったので、いつかゆっくり歩いてみたいなと思っているところです。特集自体はそれほど目新しいところはありませんでしたが、行きたい気持ちを再確認してみました。

地上で読む機内誌、のコンセプトにふさわしく、とりとめがなく、ただし全てが旅へと続く記事を読んでいると(行かれない状況だけに T T)心が落ち着くようです。

中国の大量生産の現場、っていう写真も良かったし、旅に行って歌い出しちゃうっていう歌手Yaeさんのインタビューも面白かったです。そういや、外国へ行って日本から来ましたっていうと日本の歌をうたえって良く言われたな~(若い頃…。遠い目)。 あ、そういうときは意味を説明しつつ、「幸せなら手を叩こう」を歌いました。中国に行ったとき市バスで歌ってはとバス状態になったと思ったら「それ、中国の歌ですよ」といわれてムッとしたのも懐かしい思い出…。

次回は4月25日発売。ギリシャ特集だそうです。

ISBN4-931407-16
ニーハイメディア・ジャパン
900円
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by silverspoonsjp | 2006-02-02 23:59 | センス・オブ・ワンダーの本
皆様こんばんは。

風邪をこじらせてる&仕事が終わらない の二重苦で、
とうに仕事納めをすませた会社に明日も通うのであります。

ああ、2005年がこうして暮れていきます。

何とか、2005年中にもう1エントリーしたいと思いつつ、その前に取り急ぎご紹介を。

雑誌「一個人」の最新号です。

特集は「書くって楽しい?」

第1章 すてきな環境で「書く」…お出かけ篇
第2章 「書く」お手本集
第3章 「書く」力が心を動かす
第4章 「書く」ルールと展開…実践篇
第5章 銀座 伊東屋へ文房具を買いに行こう
第6章 すてきな環境で「書く」…自宅篇

「書く」の内容が、手紙だったり、日記だったり、書だったり、小説だったりバラバラなので、今ひとつ特集としてはまとまりに欠けるように思いますが、書く「場所」に注目したのが面白かったです。最後の第6章で取り上げている画家・金子國義さんの仕事部屋は圧巻!
クラフト・エヴィング商会の封筒セットもついてます。1年後の自分に手紙を出す、というちょっと面白い企画用のものです。

HPはこちら

「書く」のは大好きなんだけど、キーボードを前にしないと書けなくなってしまっていることに気づきました。たまには手書きもしなくちゃ。

KKベストセラーズ
毎月26日発売
定価580円
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by silverspoonsjp | 2005-12-30 02:38 | センス・オブ・ワンダーの本
a0003079_23475777.jpg夏の終わりに出た本を今ごろ眺めています。

「ニュートラル」という雑誌の別冊。イエメン、ドバイ、マリ、イラン、トルコ、オマーン、ヨルダン、チュニジア、ウズベキスタン、シリア、セネガル、モロッコ、パキスタン、ブルネイ、アフガニスタンの15のイスラム国の写真と、旅の基本情報が出ています。こうやって並べると、イスラム圏といっても本当に様々ですね。砂漠とモスクのいかにもアラビアンナイトな国もあれば、豊かな緑や海に恵まれた国もあるし、人種もさまざまです。この本に取り上げられている中で行ったことがあるのはトルコだけ。

実は、ここには取り上げられていないけど、イスラム教徒が集中している地域には何度か旅行したことがあります。インドネシアとか、中国の広州、ウイグル、北京、フランスのパリ…中国のイスラム教徒は「回民」と呼ばれていて、(恐らく)民族ではなく、宗教による区分で特別な扱いを受けています。学校や食堂もわざわざ回民用のところがあります。

パリではちょうどキリスト教のお休みだったため、開いてたお店はムスリムかユダヤ教徒のところだけ。「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」を地で行く光景でした。今思うと、あのムスリムのおじさんはトルコの人だったのかな…。

国はまったく違うのに、宗教によって同じ文化を共有しているというのが興味深かったです。現地の他の文化との折り合いの付け方も。

この特集で取り上げられた国へもぜひ行ってみたいです。今はとりあえず机上の旅を楽しもう…。

白夜書房
1429円
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by silverspoonsjp | 2005-10-21 23:59 | センス・オブ・ワンダーの本
a0003079_20522620.jpg
 むかし、東方に聚慎<ジュチン>という国がありました。そこには、隠密裏に地方を回り、悪政を敷いた官吏を王に代わって糾弾する、「暗行御史<アメンオサ>」という特殊な官吏がおりました。御史は馬を描いた黄金の牌を持っており、中でも最高の三馬牌を持つ者は、幽幻兵士<ファントム・ソルジャー>をも召還することができたのです。
 その聚慎も滅んだ今、かつての暗行御史、文秀<ムンス>は、原因不明の呪いをかけられたまま、世を流離っていました…。

 あらすじを書きながらもうワクワクしちゃうんですけど、韓国の物語や歴史って、意外と知らないですよね。韓国の漫画家によるこの作品は「春香伝」のような有名な物語や歴史故事を取り入れつつ、一級のエンタテインメント作品に仕上がっています。ところどころ、引用したモチーフについて原作者が書いているコラムも楽しめます。

 一応舞台は現代じゃないとは思うのですが、主人公の服装はまるっきり現代風だし(顔も「コブラ」みたいだし)、銃はバンバン撃つし、その辺のセンス、大好きです。

 全編、先が読めないスリリングな展開ですが、特に第四巻は圧巻です。ここまで主人公の仇敵である、ということしかわからなかった阿志泰<アジテ>が姿を現わしますが、彼は下の引用からわかるように、まるで澄んだ湖のように悟りきった印象しか与えません。一体何者?? 


「文秀さん、知ってます?この世界の起源において、善悪は同じ存在だったそうです。まるで真っ白な折り紙のように…だから、その紙の色を決めるのは人間なんですよ。もとは無色だったものを人間だけの基準で…黒だの白だの、勝手に決めつけて塗りわけてるだけなんです。矛盾だらけの人間が…極めて脆弱な人間が、善と悪を決めるのです。」


 まだサンデーGXに連載中なんですが、月刊なので単行本の出るペースがすごく遅いんですよ。続きが気になる~。それから、どうか最後までこのテンションを保ってくれますように!ただいま10巻まで発売中。

公式HPはこちら

原作:尹 仁完、絵:梁 慶一
小学館  580円
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by silverspoonsjp | 2005-03-21 20:56 | センス・オブ・ワンダーの本