本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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上下巻で800ページを超える長編ですが、なーに、「指輪物語」に比べたら短編もいいところです(←間違った認識)。

物語は、
1.「スカヤグリーグ」という不思議な名前のゲームに魅せられ、その成り立ちと作者を知りたいと調査を始める「私」のパート

2.障害者の間に密かに伝わる「スカヤグリーグ」の伝説に魅せられ、それをゲーム化した脳性麻痺の少女、「エスター」のパート

3.奇跡の物語「スカヤグリーグ」の主人公「アーサー」のパート

からなっています。始め3、2、1の順番で語られていたので何がなんだかわからなかったのですが、数十ページ進むと、エスターの物語(2)が中心になって、どんどん話が展開していきます。

エスターは事故死した母親から生まれる際に重い脳性麻痺を患います。彼女に知性があるかどうかも疑われていたのですが、周囲の人々の助けに恵まれ、優れた数学の才能を持つことがわかってきます。装置の助けを借りて、自分の意思を伝えることも出来るようになりました。

まず、この段階に辿り着くまでが涙なくしては読めません。妻を亡くしたエスターの父が、娘への愛情に目ざめるところ、そして娘を亡くしたエスターの祖父母が、エスターを認めるまでの長い苦悩…。

エスター自身も、自分の感情をぶつけるだけではなく、周りを思いやるまでに成長するまで大変な道のりでした。そして彼女は、「スカヤグリーグ」の物語をゲームの形で一つの世界へと作り上げるのに没頭し始めます。

ここでいうゲームとは、コンピュータを使ったロール・プレイングゲームのことですが、このゲームのテーマは剣と魔法のファンタジーではなく、「スカヤグリーグ」の伝説とエスターの人生が語られ、プレイヤーはゲームを進めながら、人生の意味を探っていくというものです。

「スカヤグリーグ」とは、アーサーという障害者が、ほとんど牢獄のような施設に入れられ、無理解と虐待に苦しみながらも、「スカヤグリーグ」の存在に助けられて、いつも希望を持ち続けるという、障害者の間に伝わる伝説でした。エスターはこの話を実在する人物の伝記だと感じ、アーサーを捜し、スカヤグリーグとは何なのかを知ろうとします。

この手の話には珍しく、ちゃんとこの探求譚には答えが用意されています。その点も、この話を読んでカタルシスが得られる一つの大きな要素だと思います。

飽きさせないためか、途中に何カ所か通俗小説みたいな描写があって前後と不釣り合いな感じがするのは残念ですが、一気に読ませる小説です。ただし、翻訳は直訳が多く、日本語としてかなり気になるところがあります。

たとえば、部屋の描写で「素朴な部屋だった」というのがあるんですが、「質素な部屋」とか「飾り気のない部屋」とはいうけど、「素朴な部屋」って何なんだろう??と思ったり…。

と、ときどきじれったくなりつつも、この話をわが事のように読んでしまったのは、意思の疎通ができないもどかしさが良く描けていたためです。外国にいて、言葉ができないときに感じるあの辛さをありありと思い出しました…もちろん、エスターの苦悩とは比べものになりませんけど。こちらは大人なのに、言葉が片言なばかりに、見下されたり、幼児のような扱いを受けるのは本当に辛いものです。

だから、外国人が日本で片言の日本語をしゃべっていても、ゆっくりわかりやすい日本語で、でも失礼な態度にならないよう返事をしようと心がけています。あ、それから、そういうとき英語で返事されたりすると、日本語学習者としては傷つくんですよねー。気をつけましょうね。

「スカヤグリーグ」は1994年に映画化もされてるようです。

原題は「Skallagrigg」。これが何を意味するかが、物語の重要な鍵になってます。

角川書店
ISBN4047911895
現在は品切れのようです。
私は図書館で借りて読みました。

さて、「スカヤグリーグ」のゲームには、エスターの人生が織り込まれており、たとえば、こんな選択肢が用意されています。(本文通りだと長いので要約します)

あなたの子供が障害児であることがわかり、
あなたにはその子を生かすことも殺すこともできるとします。
生かすにはLを 殺すにはDをタイプしなさい。

…重い問いですが、このゲームを先に進めるためには何かタイプしなければなりません…。

答えてみる
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by silverspoonsjp | 2006-10-28 23:54 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(0)
■自分の知っている管理人様の連想バトン■

なんかスゴイタイトルですこと。
foggyかおる様より頂戴いたしましたので、早速挑戦してみましょう。

当てはまる管理人様の名前を記入して下さい(何回でも可)
名前を記入された管理人様は必ずバトンをやること。
一度やった管理人様はやらなくていいです。


えっ、そんな指令を下されても…。
ほとんどの方はもうバトンを受け取っていらっしゃると思いますし、あまり気になさらないでください…。

『まずは貴方』
せめて貴女にしてくださいまし。

▼名前(HN)
銀の匙。「指輪物語」から取りました。

▼知人に言われた性格
大陸的。いまだにどういう意味かわかりませんが、褒められてるとはとても思えません(核爆。

『連想(知人管理人さんのお名前)』

▼カッコイイ
私呼んで「歩くソリューション」、「まぞむ雑記」のwataさん。仕事の出来る女(ひと)は永遠の憧れです。頼りがいもあるし…。いつもお世話になってます。ありがとうございます。

▼可愛い
「末つ森でひとやすみ」の柚子緑さん。切れ味鋭い文章をお書きになるけれど、御本人は性格もビジュアルも、とても可愛らしい方なんです。

▼乙女
「Dalmatian Dot-matrix printer」のeticaさん。ただラブリーなだけじゃなくて、喜怒哀楽すべてが揃っている、全方位乙女なのが素晴らしい。

▼優しい
「マゾムがいっぱい」の北国のあきさん。コンテンツからも、コメントからも、優しいお人柄が伝わってきます。

▼楽しい
「sextans 好奇心のコンパス」のcrannさん。「ラッコ庵日乗」のラッコ庵さん。
話題が豊富で、いつも楽しませて頂いてます。お邪魔するとホッとします…。

▼個性的
個性的というのは、私の中では最高の褒め言葉なんです。
で、お名前を挙げさせて頂いた皆さん全員が個性的なので、取り立ててどなたがっていうのは難しいですね…。

▼天然
天然ボケの方じゃなくて、ナチュラル志向の天然ということでいうと「旅とこもごも」のElfarranさんかな。
丸ごとサンクチュアリのような、ステキなおうちにお住まいなのです。

▼腹黒
腹黒ね~。おぬしもワルよのぉ、といったら「指輪物語」ではグリマと相場が決まっているのですけど、私の知ってるHNがグリマさんは可愛い人です。お洋服のセンスもいいしね。

▼変態
こりゃ私だわ…。巻き毛の人を見ると、オートドライブで目線がついて行ってしまいます。友達だと手を出してしまいます。危ない危ない。

▼子供
「いむろす めるいの薔薇」のmogさん、「See Songs」のTitmouseさん。
お二人が子供っぽい、という意味ではなく、まったく反対で、
子供の話題が出ると反射的に、良きお母さんであるお二人を思い出すのです。

▼大人
「foggyな読書」のかおるさん。HNがオババ様だから…という訳ではございませんで、コメントの付け方とか、ご自身ではそっけないと分析してらっしゃいますけど、大人だなーって感じ。

▼ツンデレ
ツンドクなら「積ん読帳」の丸面チカさんなのですが、惜しいっ!
お会いしたことはないのですが、いつもお忙しくはあっても、ツンデレということはないと思います(ですよね?)。

▼萌え
「大福写真帖」のゆきみさん。えー、だって聖セ◎スチャンとか、萌えツボをいろいろ教えて下さったじゃありませんか。おかげで、海外の教会へいくとお祈りする前に、胸に矢が刺さってる人を探すようになってしまいましたよ。
どうしてくださるんですか?

▼尊敬
「指輪物語よもやま」のたかなしさん。とにかく驚異の記憶力です。一回見ただけの映画もまるで脳にプリントされているかのように鮮やかに再現されちゃうのを見ればどなたも納得のはず。加えてあの分析力、尊敬以外の何物でもありません。

全然違うー!とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、笑って赦してやってください☆
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by silverspoonsjp | 2006-10-23 22:53 | バトンいろいろ | Trackback | Comments(18)
えっ、この本、SFなの?!と思った皆様。
残念ながら(笑)、この本はれっきとしたSFです。

著者のカズオ・イシグロといえば、「日の名残り」。
抑えた筆致の中に、豊かな情感が詰まった作品を書く作家で、
「わたしを離さないで」もそういった作品の一つです。

物語は、良くあるイギリス寄宿舎生活の体裁を取って始まります。
介護人キャシーは回想します。
親友だった仲良しのリーダー格の女の子ルーシー、
かんしゃく持ちの男の子だったトミーの思い出や、
エミリー先生を始めとする厳格な教師たちの言葉…。

繊細な筆致で少年少女時代を描いた、普通の文学としても十分通用する物語のところどころに、まるで地雷のように、見慣れない単語や奇妙な出来事が埋め込まれています。
そして-。

***
あらすじをこれ以上書いてしまうと、新鮮な驚きがなくなってしまうと思うので
ここまでにしておきますが、類似の作品と比べてしまったりしたせいもあって、
登場人物の行動に何ともいえないもどかしさを感じてしまいます。
SFとしては、失礼ながら使われているのはあまり斬新なアイデアでもないし。
作品解説が柴田元幸さんらしからぬ煮え切らない文章なので、
ますますそう思ってしまったのかもしれません。

しかし、考えてみれば、この何ともいえないもどかしさこそが、
イシグロ作品の特徴である「抑制」を作りだしているのであり、
そしてその「抑制」こそが、イギリス的、と我々外国の読者が捉える長所であり、
物語としての妙味なのでありましょう。

タイトルの「わたしを離さないで」とは、主人公のキャシーが大切にしていた、カセットテープの中の歌のタイトル。

“Never Let Me Go”は「決して私を行かせないで」だから「わたしを離さないで」なんですが、
日本語から考えると「離さない」は徹頭徹尾相手の行為なのに、英語は「私が行くことをさせない」なので、意味は同じでも切実さが違うような気がします。

訳文は格調が高く、自然な日本語です。

土屋政雄訳
早川書房 1800円
4152087196

あらすじがわかっても良い方は

こちらからどうぞ
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by silverspoonsjp | 2006-10-22 21:27 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback(1) | Comments(6)
神保町ブックフェスティバルのお知らせが来ると、ああ、今年も秋だなぁ…としみじみしてしまいます。

今年は10月28日(土)と29日(日)の2日間。
個人的には28日の坪内祐三さんの「神保町この10年」
同じく28日の小原乃梨子さんのよみきかせ(対象は小学校低学年以下ですが…)
29日の華恵さんと松田哲夫さんのトークショー

あたりが行ってみたい催しですね。
もちろん10月27日~11月1日まで開催される「神田古本まつり」の会場と隣接していますので、、一日楽しめるはず。地下鉄神保町駅前の、すずらん通り、さくら通りという2本の商店街をまたいで行われます。

詳しくはhttp://jimbou.info/まで!
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by silverspoonsjp | 2006-10-09 21:13 | Trackback | Comments(2)
安静状態も4日目になると退屈で退屈で、つい起きあがって本を読み出してしまいました。寝てると本を読めるというのはウソで、遠視気味の私には間近で本を読むのは辛いです。やはり健康第一ですね。

外に出られないのでせめて大ボラ系のSFを…と思って取りいだしたるはベイリーの長編。またしても「ありえねー」系のタイムトラベルものであります。

異星人の侵攻に怯える地球では、過去に撃退した異星人の遺跡調査が重要な任務として遂行されていました。考古学者のヘシュケはそんな中、奇妙な写真を入手します。それを信じるならば、異星人によって過去に作られ、破壊によってすでに放棄された遺跡が、現在に向かってどんどん新しくなっていくのです。

そんなアホな…。

しかし事態は彼の考えるよりずっと深刻でした。異星人はすでに時間を遡る機械を持っており、地球でも密かにその複製品が作られ、研究が進められていたのです。

後に書かれた「禅銃〈ゼン・ガン〉」でさらに大増量される、延々数ページを占領するゴタクの数々(今回は時間の概念についてみっちり教えて頂けます)に耐えられるかどうかが、この本を楽しめるかどうかの分かれ道-とは私は思いませんで、そんなページはひょひょいとタイムトラベルして先を読んでも、特に大筋に影響はないのであります。

しかし、時間というものの正体は一体何かということについて考えるには良いきっかけとなることは確かです。ただし、過去の出来事は見えるが、未来の出来事は起こっていないので存在しないという本書の考え方について我が家では大激論となりましたので、このくだりは平和を望むご家庭では特にワープした方が吉でしょう。

さて、複製されたタイムマシンに乗り、遺跡の謎を解くために送り出されたヘシュケには、思いも掛けない展開が待ち受けていました。時間を自由に操る技術を持った(なぜか)中国系のレトルト・シティとの邂逅、恐るべき運命に捉えられた地球の行く末など、著者一流の派手な話が展開いたします。

ちょっと過去へ行って一儲け、とか、ステキな運命の彼氏をゲット、とか、意外にささやかなお話の多いタイムトラベル・ジャンルのお約束をなぎ倒し、宇宙が道連れのタイムトラベル、果たして明日はどっちだ?!

バリントン・J・ベイリー 著
大森望 訳
創元SF文庫

長編
ハードSF度   ★☆☆☆☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★☆☆☆☆  
個人的好み   ★★★★☆

〈お好きかも〉
設定資料を読むのが好きな方
タイムトラベルものが好きな方
このさい、煙に巻かれてやってもいいという寛大な方
ベイリーのファン

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by silverspoonsjp | 2006-10-08 22:01 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(5)
 お話は簡単だ。むかし、ひとりの少年が地球という惑星を買い取った。痛い教訓だった。あんなことは一度あっただけ。二度と起こらないように、われわれは手を打った。少年は地球へやってきて、なみはずれた冒険を重ねたすえに、自分のほしいものを手に入れ、ぶじに帰ることができた。お話はそれだけだ。

 という、過不足のない、先を読まずにはいられない書き出しで始まる長編小説。「ノーストリリア」(オールド・ノース・オーストラリア)とは惑星の名前で、銀河随一の金持ち惑星でありながら、砂漠と羊しかない、素朴な文化を保っている場所です。

 多くの人口を養うことのできないこの場所では、産児制限などという汚らわしいことはせず、子供にはとりあえずは成長の機会が与えられて、幼児期が終わるころに選別され、不適格者は〈死の庭〉に送られることになっています(おや、最近どこかで似た話を聞いたような)。

 われらが主人公、ロッド・マクバンは、テレパシー能力に欠けると判断されており、このままでは〈死の庭〉行きは確実だと見なされていました。しかし、彼には……。

 見方によっては非常に残酷な運命、残酷な境遇を淡々と受け入れる登場人物たちに、幼少期を世界各地ですごした作者の経歴や、彼の生きた時代が色濃く投影されているのではと思うのですが、定められた枠の中で最良と思われる生き方を、自らの手でつかもうとする彼らの姿には深い共感を覚えます。

 どんなに「自由」であると思っていても、人の生き方は周りのあらゆる条件によって規定されている、と作者は考えているようです。そんな状況の中で、自分がいちばんしたいこと、欲しいものが何かを、一体どうやって、どこに探せば良いのだろうか。 

 少年少女を主人公にしたすぐれた小説が投げかけてきたのと同じ問いを、この作品も投げかけてきます。その答えは限りなく優しくて切ないもの。理不尽な規則、全体のためには個人が犠牲になる冷酷な社会制度に憤りを覚えながらも、読んで良かったと思えるのは、あくまでも人間を肯定的にとらえる、作者の理想主義的な姿勢のゆえかもしれません。 

前に取り上げた「鼠と竜のゲーム」と同じ世界を共有しているので、併せて読むのも面白いです。

コードウェイナー・スミス著
浅倉久志訳
早川書房
ISBN4150107106
長編

ハードSF度   ★☆☆☆☆(「竜の卵」を★5とカウント)
ファンタジー度  ★★★☆☆ SF(サイエンス・フィクション)度 
個人的好み   ★★★★☆

〈お好きかも〉
少年が主人公なら何の文句も無い方
「ゲド戦記」(原作ね)のファンでもイケるかも知れない
レイ・ブラッドベリのファンでもイケるかも知れない

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by silverspoonsjp | 2006-10-01 11:16 | センス・オブ・ワンダーの本 | Trackback | Comments(2)