本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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パーチーアニマル

12月の声を聞くと、にわかに夜のお仕事が増えて参ります…ってアヤシイお仕事じゃなくて、パーティーの類いでございます。

1年の総決算の時期だからか、文学賞や学芸賞の授賞式なんかもありますし、うちの業界の特殊事情としては(たぶん)、11月末から12月頭の忘年会というのもあります。何せ12月は年末進行(年末年始、印刷所がお休みになるために、いつもより作業の日程がキツくなる)がありますから、忘年会なんか開いたって人が集まらないのであります。

そんな訳で、ここのところパーティー、忘年会、打ち上げ、パーティー、忘年会、打ち上げ…とヘビーローテーションで回しており、日常業務が滞っているため土日に仕事しているという妙な毎日であります。

日頃、机にかじりついて作業しているので、慣れない華やかな席に連なると場違い夥しい上に、いろいろポカをやらかすのですが、案の定、またやってしまいました。

先般出席したパーティーで、名刺を切らした方に連絡先を伺い、メモ用紙を持ってなかったので、ちょこちょこと自分の名刺の裏にメモしたんですが、帰宅して整理しようと思ったら、どこにもない!!

まさか、他人様に配っちゃった…??

その時点で私は顔面蒼白。メモの内容は、公開されてるとはいえ個人情報ですし、第一、メモした名刺を相手に差し上げるなんて失礼千万ではありませんか。

翌日は米つきバッタのように、名刺交換した方に平身低頭お電話して回りましたが、もー恥ずかしいの何のって。

そのうち、自分の名刺入れの裏っかわにポケットがあるのに気がついて(おいおいおいおい)あ、そうだ、配っちゃわないようにここに入れといたんだった、と思い出したのが昼過ぎ。ほらねー、いくらオッチョコチョイだって、メモした紙をそのまま配るほうに入れるはずないですよねー(っていうか、その時点で、心配事は失策よりボケの疑いへシフト…)

しかし、転んでもただではポカをしないというか(威張るな)、大変勉強になりました。ふだんは文芸担当の編集者の方とお話する機会はほとんどないんですが、今回この件でお電話してみると、荒くれ専門書畑ではあり得ない発想なんですよ。

仮にこっちがそんな変な電話を受けたら、「いやー、特にないですよーふつうの名刺でしたよー」くらいの気の利かない対応しかできませんが、あちらはもちろん違います。

「こちらにはふつうのお名刺を頂いておりますが…。でも、メモが見つからなくて、お困りでしょう…?」

どうですか、この対応。さすが気配りが資本の文芸編集者はスゴイ。なんて、感心してる場合じゃないですね。そう、感心してる場合じゃないですよ。気をつけなくっちゃ…。
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by silverspoonsjp | 2008-11-29 23:46 | 本にまつわるエトセトラ | Trackback | Comments(4)

ヨーロッパ中世象徴史

歴史の本を読んで、ああ、読んでよかったーと思うポイントは、読む人によって違うと思います(まあ、何の本でもそうでしょうけど)。

私の場合、その本を読んで現在に生かせそうかどうかとか、歴史的人物の生き様が感動的かどうかとか、そういうことははっきり言ってどうでもよいのであります。

-ちなみに私の大嫌いな歴史の本とは、読むとお手軽に「◎◎の歴史」がわかってしまう「教養のための◎◎史」の本とか「へえーーー!」と言わせるのだけが目的で、「それがどうした」なトリビア本であります-

つまり、それらとは別に、著者の目の付け所(こんなことを調べるのね?)とか、思わぬものを資料にして思わぬ史実を引き出すとか、集め並べた材料をまとめて、ひとひねりある結論に至るとか、そういうところに賭けてる訳なのですが、同じ趣味の方がいらっしゃれば、この本には花丸をいくつつけてもまだ足りない、という感じになるのではないかと思われます。

まあ、ずばり言って、事実の断片を拾い集め、あるいは思いがけないものを証拠として採用し、犯人を検挙し、またその動機を推察するという、シャーロック・ホームズものに通底する面白さがあるとでも言いますか(むむ)。

本書は、教養本なら如何にもやりそうな、
「ライオン」というお題を出して、そもそもライオンは中世に於いて…
みたいなつまんないアプローチは取りません。当然、ライオンについての考察はありますが、まずはいきなり、「動物裁判」の話から入るんです。

ヨーロッパの人々と動物の関係と言うとき、まず頭に浮かぶのは、キリスト教と動物との関係です。ふつう、日本でよくお目にかかる記述は、キリスト教では人間と動物が決定的に対立している、あるいは、人間こそが神の恩寵を受けた万物の長と思い上がっている、というものですが、それはどうやら単純にすぎる見方のようです。

中世の人々は動物の来世に思いを致したり、さらに現実的な問題として、安息日の日曜に動物を働かせてもよいか、とか、動物に責任能力はあるのか、ということを考えたりしたようです。

中世には、動物を被告にした裁判が開かれたということです。そして、刑罰を加えられた動物もありました。このことは何を意味するのか。著者は訴訟の数や、公式に残された裁判記録の数などを勘案して考えます。訴訟はたくさんあった。一方で、証言は少ない。それは何を意味するのかー。

ここで著者の導き出した結論は仮説であり、しかも実証は困難です。しかし、ここで大切なことは、こうした裁判が彼らの社会に存在したこと、今日の目から見れば好奇の対象でしかないけれども、当時の人々は、これを今日とは違う感受性でとらえていたはずである、と想像することなのでしょう。

象徴は外側に見え、現在でも遺されたものから知覚できますが、その裏にある考え方を知ることは、現代人にとって非常にむずかしいという例が、本書では多く示されています。たとえば、「青」は現代人にとっては寒色ですが、中世では暖色とされていました。青は空気の色であり、暖かくて乾いているから、という理由だそうで、著者は
「美術史家が中世において青は現代と同じように寒色だと考えたら、何から何まで間違えてしまうだろう」と述べています。

あるいは、「斧」と「ノコギリ」は同じ工具でありながら、中世の人にとって、ノコギリは悪のイメージがあるーそれを納得させるため、中世の人と「木」との関係から説き起こされているのですがーなど、気づきようもない知見が存在しています。そして、中世の象徴を理解することの困難とその意義は、著者のこの言葉に凝縮されているでしょうー。

「象徴はそれが表象する現実の人物や事物よりもつねにより強力で、より真実である。中世においては、真実はいつも現実の外に、現実の上位に位置しているからだ。真なるものは現実に存するものではないのである。」

時代の違いに加え、キリスト教的解釈の展開に伴う価値観の転換や、言葉の問題、地域文化の違いなど、他にも考慮しなければならない要素はさまざまにあります。しかし、困難にもめげず、象徴が使われた当時の価値観に沿った解釈を試みる著者の果敢さと洞察力に敬服すると共に、門外漢の一読者としては、極上のミステリーを読むのと同じ楽しみを味わう訳なのです。

ミシェル・パストゥロー 著
篠田勝英 訳

〈目次抜粋〉
動物
  動物裁判/獅子の戴冠/猪狩り
植物
  木の力/王の花
色彩
  中世の色彩を見る/白黒の世界の誕生/中世の染物師/赤毛の男
標章(エンブレム)
  楯型紋章の誕生/楯型紋章から旗へ
遊戯
  西欧へのチェスの到来/アーサー王に扮する
反響
  ラ・フォンテーヌの動物誌/メランコリーの黒い太陽/アイヴァンホーの中世

白水社
436ページ 6600円
ISBN-10: 4560026386
2008年 
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by silverspoonsjp | 2008-11-24 22:53 | 人文科学の本 | Trackback | Comments(10)

箔力展

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皆様ごぶさたいたしました。
HDDを取り替えたはいいものの、旧HDDの内容がさっぱり移行できず、
特にダウンロードで購入したソフトはほとんど使えなくなって泣きべそかいてた銀の匙でございます。

しかし、泣いてばかりいた訳ではなく(そりゃそうでしょう)、
やることはやっていた今日この頃。先週は、神保町にあります紙の専門店「竹尾」のショールームにお邪魔いたしました。

1階はサンプルをみて紙を購入できるショールーム、2階は小さな展示室になっています。
ただいま、「箔」を使ったブックデザインの展示で、出品者のお一人から教えて頂き、覗いてみました。

宮沢賢治の「注文の多い料理店」と「銀河鉄道の夜」のブックカバーを、箔押しを使ってデザインするというもので、現役の著名なブックデザイナーが競作しています。

本の表紙やお菓子のパッケージなどに、金や銀で文字や図案が印刷されているものがありますが、あれは「箔押し」という方法で作っています。スタンプみたいなものを作って、ホントの金箔銀箔で押すんです。あっ、誰ですか、本の表紙をこすり始めた人は!取れませんよ!!
(第一、売れませんて)

時々製本所の方から、「あぶらとり紙」と称する千代紙サイズに裁断した紙を頂くんですが、箔押しに使った金箔の台紙のリサイクルなんですねー。

金銀のほかに色を使った箔押しもあり、上手く使うととてもおもしろい効果が出せます。今回の出品作品でも何点か見かけました。

みみっちい話になりますが、箔を使うとインク代2色と同じ(かそれ以上)の料金がかかるため、4色フルカラー印刷プラス箔押しというのは、出版ではよほどゴージャスな装丁か、お正月特大号の表紙でもなければやりません。それ以外は、

1.箔以外の色を2色にして節約する。
2.紙を色紙にして刷り色は1色にする。(←特殊な紙はこれまた高いので)
3.箔っぽく見せて実は印刷にする。(実は結構ある)
4.あきらめる(←一番多いパターン)

というわけなので、今回は大変目の保養になりました。特に「銀河鉄道の夜」と箔押しの相性はばっちりで、思わずジャケ買い!なデザインばかり。あのカバーで読んでみたい…。

ということで、ようやくスキャナやIMEも使えるようになったので、ぼちぼち更新して参ります。よろしくお願いいたします。

「箔力展」
場所:竹尾 見本帖本店2F
期間;2008年11月10日(月)~12月5日(金)
    10:00~19:00(土・日・祝休)

詳しくはこちら
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by silverspoonsjp | 2008-11-23 00:07 | 本にまつわるエトセトラ | Trackback | Comments(0)