本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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図書館の興亡

マシュー・バトルズ著「図書館の興亡-古代アレクサンドリアから現代まで」(草思社)という本を、それこそ図書館から借りて読んでました。

大変申し上げにくいのですが、この本は、私には、典型的な「参考書を右から左に写して書いた本」に見えるため、あまり積極的にオススメは致しません。特に古代の部分は、著者もよく理解しないで書いてるんじゃないかと思われるフシがあり、どこまで本気にしてよいのか迷います(リテラシーを試されてるのでしょうか?)。

訳もー異国情緒を醸し出すためと思いたいですが-中国古代の書記用具で「黒インク」はないでしょう…それを日本語では「墨」っていうのでは…?(古代中国では黒インクを使っていたのなら、失礼しました…)石碑の森は、「碑林」のことなのでは…いえ、良いんですけど、別に。

文句があるなら読まなきゃいいでしょ、何で読んだの、と問われれば、それはcrannさんのブログを拝見して「ゲニーザ」って何だろ?と思ったからです(crannさん、いつも面白い話題をありがとうございます)。

けなしておいて何ですが、B級映画も見方次第なのと同様、どんな本でも見どころはあります。「考察」って言葉をゲニーザに埋めてきちゃったらしい本ではありますが、図書館の来し方についてまがりなりにも1冊にまとまっていると、読み手の方では、行く末について考えてみることも出来るというものです。

著者はハーバード大のワイドナー記念図書館で司書をつとめた人だそうで、よって、司書の役割について書かれた箇所と、アメリカの図書館について書かれた箇所は、なるほどね、と思わせてくれます。

以前、アメリカの子ども向けの本で、開拓地に本を載せてやってくる幌馬車図書館(現在の移動図書館のご先祖みたいなものでしょうか)の事を知りました。この本では、それらが一定の期間、まとまってある農家などに貸し出される「ホーム・ライブラリー」の紹介があります。

20世紀の初頭、アメリカ開拓農家の仕事はあまりにも厳しく、本を読むゆとりは親にも子にもそれほどなかったと思われます。前述の本でも、移動図書館の本を読む事に、親はあまり乗り気ではありませんでした。それを思うと、本書の写真にある、祭壇のように恭しく本のセットが置かれた光景には、そんな暮らしでも本を読みたいと思う人たちもいたんだと、畏敬の念まで覚えてしまいます。

性質は違いますが、二十世紀初頭、図書館に出入りするのを禁じられていた黒人が、そんな中でも知恵を絞って本を借り出した話なんていうのも出ていて、本があふれているのに全然読まない人も多い身の回りの状況と考え合わせると、皮肉というか何というか、考えさせられる話です。

そういえば、ローラ・インガルスの本に、クリスマスプレゼントにテニスンの詩集を贈られる話が出てきましたね(ローラは、クリスマス前に引き出しの中に隠してあったのを見つけてしまい、あまりに続きを待ちこがれたため、実際に読んだ時、がっかりしたらしいです。とても良くわかる気がする…ので印象に残ってます(苦笑)

さて、肝心の「ゲニーザ」(「ゲニザ」の方が検索ではヒットしやすい)については、「書物の墓場『ゲニーザ』」という節で6ページくらい紹介があります。「ゲニーザ」はユダヤ教のシナゴークの一角にある、使い終わった、文字の書かれた紙を集めておく場所を指すそうです。

ユダヤ教やイスラム教では書かれたものを神聖視する伝統があり、それらが冒涜されないように保存しておくと、中身が魂のように昇天する、ということなのだそうです。ですから、系統だって本を集めた訳でもなく、外に向かって開かれることもありませんでした。

したがってゲニーザに保存されたものはは焚書のような受難に遭うこともなく、後世にとって有用か否かの振り分けをされることもなく、千年にわたってただ延々と蓄積されてきたのです。

アレキサンドリアの図書館以来、図書館に集められた本はほぼ例外なく消失の運命をたどっているというのに、墓場にある本は後世に伝わるとは…。図書館の歴史にこの項目を入れた著者のセンスは「買い」とすべき、なんでしょうね。

目次抜粋

アレクサンドリア炎上
 焚書坑儒と石碑の森
 消えたアステカの絵文書
 「クーマの巫女(シビッラ)」の予言書

知恵の館
 バヌ・ムーサ三兄弟と知恵の館
 図書館のルネッサンス

書物合戦
 スウィフト

みんなに本を
 新時代の司書の資質
 

知的遺産の消失
 「本を焼くところでは、やがて人を焼く」
  ルーヴェン図書館の悲運
  ナチス・ドイツの図書館改革
  抑圧の道具としての図書館
 
書架のあいだをさ迷いつつ
  書物の墓場「ゲニーザ」
  ホーム・ライブラリー
  人民宮殿
  「アーケード・プロジェクト」
  ミューズの鳥かごは今

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by silverspoonsjp | 2009-02-10 01:52 | 本にまつわるエトセトラ

意味浅な追加情報。

ゾロアスターさんへのコメント(?)ありがとうございます。
ラッコ庵さんのおかげで、意外なものがゾロアスターさんに関係あることがわかりましたが、
国宝 阿修羅像展のHPを見てたら、またしてもつながりが…

阿修羅クイズ

阿修羅ファンクラブのみなさんに、クイズです。
「アッシリア」と「電球」と自動車の「マツダ」に共通するものとは何でしょう?

まず古代メソポタミア地方一帯を治めたアッシリアは、「アッシュールの国」という意味。アッシュールとは、この地域で絶大な信仰をあつめたゾロアスター教の最高神である「アフラ・マツダー、ahura mazda」のことで、光り輝く太陽神のことでした。ahuraとasuraは語源的に共通し、アッシリアとは「阿修羅の国」となります。
つぎに、かつて東芝電器が発売していたマツダランプは、エジソンによって発明された白熱電球がゼネラルエレクトリック社から発売されたときの登録商標で、光の神「アフラ・マツダー」にちなんで名付けられました。
さいごに自動車のマツダは、創業者の名前に由来しますが、その綴りはMATSUDAではなく「アフラ・マツダー」から拝借してMAZDAにしたのだとか。
というわけで、クイズの答えは「阿修羅」でした。

仏教よりもはるかに長い歴史を持った阿修羅の生い立ちを調べていくと、世界史のいたるところにその名残を見つけることができるのです。

(出所はこちら → http://www.ashura-fanclub.jp./voice/index.html#contents)

意外にメジャー、ゾロアスターさん。
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by silverspoonsjp | 2009-02-03 01:06 | プチ日記
先日、ひょんなことで「2001年宇宙の旅」(懐かしい)のスチル探しをしたのですが、画像を見ると条件反射的に、あの印象的なテーマ曲、リヒャルト・シュトラウス作曲「ツァラトゥストラはかく語りき」が頭の中で鳴り響いて止まらなくなり、あー何とかこいつを止めねば、しかし、「かく語りき」って、一体何を語ったんですか?と今度はそちらが気になりはじめました(試験が目の前に迫った受験生のような、困った状態です)。

まともな人なら、じゃ、ここで一丁、このタイトルの元になったニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」を読んでみますかね、となる訳ですが、生来怠惰な 気が短い江戸っ子なため、そんなかったるそーな本、読んでいられるかぃと思って(全国1千万のニーチェファンの皆さん、私をお許しください)、つい図書館からこんな本を借りてきてしまいました。

青木健 著「ゾロアスター教史」(刀水書房)

2色印刷の地味な表紙を見たとたん、一体何の間違いで、ニーチェよりこっちの方が簡単に読めそうだと思ったんだろうと後悔しました。…でも序論の2ページくらい読んでみたら意外や面白く、一気呵成に読み終えてしまいました。

だいたい、私が世間知らずなだけかも知れませんが、この21世紀に、拝火教徒が存在していること(しかもインドでは財閥として結構な勢力を築いており、インドつながりで言えば、クラシックファンならご存じの指揮者ズービン・メータやロックバンド・クィーンのフレディ・マーキュリーもゾロアスター教徒)、ニーチェつながりでは、イエス・キリストをも凌ぐアーリアの超人としてあのナチスが持ち上げ、熱狂的に研究していたこと、等々の事実には驚かされましたし、実に興味深いものがあります。

してみると、日本語でツァラトゥストラ/ザラスシュトラ/ゾロアスターを書き分けてるのは単に、ドイツ語/元来の読み/英語経由という、それぞれの発音の由来を書き分けたいという語学オタク的なこだわり以上に、由来の「含み」を表現したいという欲求が働いてるんでしょうね。

本来のザラスシュトラはと言えば、実体がよくわからない宗教家であったらしいのですが、彼の事を伝え聞いたローマ人やヨーロッパ人が勝手に神秘的イメージを付け足して理想化し、尾ひれが付け加わっていったようです。

この本は看板に偽りなく「教史」なので、教えの伝播や変遷に焦点があり、ゾロアスター教の中身そのものについては補足的な扱いです。そのため、もう少し教義そのものについて知りたいと、懲りもせずもう1冊読んでみました。タイトルはズバリ、

「ゾロアスター教」(講談社選書メチエ)

著者は「教史」と同じく青木健さんです。

こちらの方は、教義や儀礼について、もっと詳しく書いてあります。現代に残る儀礼も写真付きで紹介され、儀式で使われるナゾの植物ハオマ草の現状や、イスラム化したイランに今も残るゾロアスターの伝統(詩を暗唱してる人がエライとか、緑が好きとか…)またまた興味深い話題満載なのですが、読みやすさを優先してか一つの話題が短いので、ダイナミックさでは「教史」に一歩譲るように感じました。

さて、「教史」によりますと、「ザラスシュトラがかく語った」内容とは、世界は善と悪の二つの勢力の戦いである、という考え方や、善悪どちらにつくかは個人の選択である、という人間の自由意志の存在、その選択に伴って死後の行き先が決まるという考え方、個人だけでなく世界にも終末があるという終末論、救世主の出現を予想する思想などだそうで、そうだとすれば、キリスト教や仏教、イスラム教などに直接間接に与えた影響は確かに多大なものがあります。

とは言え、後から付け足された「東方の大賢人」というイメージもかなり当社比300パーセント増しくらいのバブリーな評価になってるらしいですね。

そこで、話は最初にもどって「2001年」との関係をつい考えてしまう訳ですが、ニーチェは、ツァラトゥストラの名に仮託して「神は死んだ」「超人思想」「永劫回帰」の思想を語っている(と、「ツァラトゥストラはかく語りき」のあらすじに書いてある…(爆))なので、その辺が映画のテーマ曲に使われる理由なんでしょうね…。さすがキューブリック監督。
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by silverspoonsjp | 2009-02-02 23:58 | 人文科学の本

執事ジーヴス

羊カフェに行ったからという訳でもないでしょうが、
最近、いまさらながらジーヴスものにはまっております。
勢い余って、ドラマのボックスセットまでイギリスから取り寄せてしまいました。

物語の舞台はロンドン。時代はいつだか良くわからないのですが、
シャーロック・ホームズだったらこう推理するに違いない…てな会話が出てくるのと、バルカン半島で小競り合いが…みたいなセリフが出てくるので、ホームズよりは後で第二次大戦よりは前でしょう(何を考察してるんだか)。

ロンドンのフラットで悠々自適に暮らす、自他共に認めるボンクラなお坊ちゃま、
バーティー・ウースター(なんかこの設定、リアル世界で聞いたことあるような)。
賭け事、スピーチ、服のセンスもまったくダメダメなくせに、人から頼まれると嫌とは言えない性格で、
その人柄の良さと家柄の良さが災いし、
自分とは関係のない数々の揉め事に、常に巻き込まれているのであります。
しかし、ああ、神は見捨て給わず、そんな彼をいつも鮮やかな計略で助けるのが、燕尾服を着たどらえもん 諸葛孔明のようなバレット(和訳は「執事」となってます)、
ジーヴスなのであります。

しかし、このジーヴス、ご主人の問題を解決しつつもさりげなく自分に有利に事を運んだりして、切れ者なだけに性格もなかなかクールで、
一筋縄ではいかない人物なのを、バーティーの間抜けっぷりが上手く中和していて、そこがシリーズの一つの魅力になっています。

いちおうユーモア小説ということになってるらしいんですけど、エピソードが笑えるというよりは、表現とか、間がおかしいんですよ。

私は最初、英語(少しやさしく書き直したバージョン)を読んだのですが、
主従の会話がそれっっぽくて本当におかしいです。
たとえば、フランスにバカンスへ行ったバーティーが帰宅して、
(ジーヴスはアスコット競馬が気になるといって同行しなかった)、
久しぶりにジーヴスに会う場面。

バーティー:Well,Jeeves,here we are,what?
ジーヴス :Yes,sir.
バ:I mean to say,home again.
ジ:Precisely,sir.
バ:Seems ages since I went away.
ジ:Yes,sir.
バ:Have a good time at Ascot?
ジ:Most agreeable,sir.
バ:Win anything?
ジ:Quite a satisfactory sum,thank you,sir.


こういう会話を面白げに翻訳するのは至難の業でしょうね。

国書刊行会から何冊か訳本が出ています。
日本語版は、こなれてない部分があったりもするのですが、
なかなか頑張って訳してると思います。たとえば、バーティーの服のセンスに関する、こんな箇所…

僕は自分の部屋に直行し、カマーバンドを引っ張り出して腹に巻きつけてみた。
僕が向き直るとジーヴスが驚いた野生馬みたいにあとずさりした。
「失礼ですが、ご主人様」彼は声を抑えて言った。
「まさかそれをご着用で人前に出られるおつもりではいらっしゃいませんでしょうな」
「このカマーバンドか?」僕は軽く受け流すと気楽な、屈託のない調子で言った。「そのつもりだが」
「それはお勧めできかねます、ご主人様。本当にいけません」
「どうしてだ?」
「ご印象がにぎやかきわまりすぎでございます」


にぎやかきわまりすぎ(爆)
いいでしょ、これ。

60冊くらい出てるらしいので、全部読むのは大変そうなんですけど、
とっかかりとしては短編の方が飽きなくていいと思います。
上のリトールド版は強く強く推薦しておきます。
ジーヴスもの以外にエムズワース卿のシリーズが含まれており、
どっちかというと私はそちらのシリーズの方が好きだったりします。
ロンドンが大嫌いで田舎の居城を愛する卿の静かな生活をぶち壊す、やかましい村人や妹のコンスタンツェ、頑固なスコットランド人庭師などなどが活躍する、いかにもイギリスなお話です(未読ですが、文藝春秋から「P・G・ウッドハウス選集」として、訳本が出ている模様)。
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by silverspoonsjp | 2009-02-01 00:18 | 英語の本