本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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早いとこベネルクスの書店編を完結したいのに、GWも写真の整理をしないまま何やかやと外出して過ごしてしまいました。

そして最近思い切って携帯替えたばかりなのに、これを見てしまい、
こっちにすれば良かった、とかなり後悔。


森本レオがナレーションを担当していると聞いたばかりに、こんな呆れた映画を見てしまったのに、兄弟、まさか実物を拝む日が来ようとは。
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by silverspoonsjp | 2008-05-07 22:10 | プチ日記

The Hobbitの映画化

「指輪物語」の発端となりました、前作「The Hobbit」の映画化。
あちゃー、デル・トロ監督か~!
あまりPJと変わんないじゃないですか(←オタクに対する偏見?)。
文芸作品の映画化なら、彼にはガルシア=マルケスの「百年の孤独」とか撮ってもらいたかったんだけど…。そうじゃなきゃ、クトゥルー神話がお似合いですよ、監督。

まあね、彼なら、間違っても甘口の、ナイトキャップみたいなのをかぶった小人さんが、動物さんとお話しながら歌い踊る、「いわゆるファンタジー映画」にはしないでくれると思うけど。スマウグを「ネバーエンディングストーリー」だの「魔法にかけられて」に出てくるような許せない竜にはしないでくれると思うけど!(と、自分をなぐさめてみる)。

でもですね、彼独特の色彩や演出など随所に(恐らく無意識のうちに)散りばめられるラテンぽい感じが、ちょ~っとイメージちがーう~んですけどー。とりわけ「パンズ・ラビリンス」風は絶対ちがうんですけどー!!

さすがに、前作と似たような雰囲気で撮ったりはしないですよね??(懇願)

一体イギリスの映画制作者たちは何をしてるんでしょう。原作のファンだから、映像にはしたくないのでしょうか。

PJ監督については「いかにもファンタジー映画」の定石から抜け出した作品を作った、という点を大いに評価したいし、原作の中で映像化しても面白くなさそうなところを大胆に切った手腕は素晴らしいと思いますが、トールキンを文芸作品っぽく撮ったのも見たかったので、どれもこれも映画「LotR」風になったら、ちょっとガッカリ…。

と、何の生産性もないエントリーですみません。
くどいようですが、私はアンチ・デル・トロ派という訳じゃありません。
「The Hobbit」がちょっと彼の作風に合わないんじゃないかと心配してるだけなんです。
パンズ・ラビリンス風「ホビット」も別に見たくないし…。
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by silverspoonsjp | 2008-04-27 22:50 | プチ日記

HENRY DARGER'S ROOM 851 Webster

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映画「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」を観たついでに、映画館で買った本です。

以前、原美術館で展覧会を観たときに、彼の作品とともに、その部屋の様子が写真で展示されていました。

ダーガーについては、良く知られていると思いますが、一応説明しておくと、掃除の仕事の傍ら、生涯にわたって1万ページ以上におよぶ「非現実の王国で」という小説を書いた人です。小説の中ではヴィヴィアン・ガールズ率いるクリスチャン国の少女奴隷たちが反クリスチャン国との戦いを繰り広げ、原稿があった部屋には、魅力的な色彩で描かれた、この物語に題をとった絵が多数残されていました。

映画によると、彼は自伝で、不遇だった幼少期と、罰と虐待に満ちた少年時代を過ごしたと書いているようです。その辛い現実を反映させた物語の中では、彼自身はあるときは少女たちの理解者、あるときは少女たちの敵となり、最初はハッピーエンド、そのすぐ後にアンハッピーエンドを追加した-ある意味で彼にとっては現実そのままな-世界に生きました。

タイトルこそ「非現実の王国」ではあったけれども、自由になる時間のほとんどを、部屋の中でその創作に費やしたダーガーにとっては、そこは現実世界そのものだったでしょう。そして、その世界が生まれる母体となった彼の部屋も、特異な秩序に満ちていました。

ダーガーは、カトリックの信者だったことと興味の方向性から、部屋の中にたくさんのキリスト教関連コレクションや各種資材を溜め込んでいて、引き延ばされた写真からわかるそのディテールは興味深いものでした。

モノがいっぱいあるのにテイストが統一されているというか、常識では伺いしれない秩序がそこに隠されているような感じなのです。

彼は40年間も同じ部屋に住んでいて、介護施設に半ば強制的に移されたとき、部屋は混沌とした状態でした。絵を描くための材料をゴミ箱から漁っていたそうなので、よくいう「ゴミ屋敷」のような感じだったのではないでしょうか。絵を発見したのは大家さんだったそうですが、よくも気がついたものです。

一方、ダーガーにとって、その部屋(つまりは、彼の王国)から引き離されたことは大変な苦痛だったようです。

この本に載っている写真はかなり整理が進んでからのもののようなので、創作が行われていた当時の混沌とした様子からはかなり遠いと思われますが、それでも、ある程度、オリジナルの状態を想像することができて興味深いです。

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本書25ページより。

Amazonでの取り扱いはまだないみたいで、紀伊国屋ウェブでみつけました。著者の一人、小出さんの文章が載っているので参考に。

インペリアルプレス
2007年
3150円
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by silverspoonsjp | 2008-04-19 23:23 | センス・オブ・ワンダーの本
上下巻で800ページを超える長編ですが、なーに、「指輪物語」に比べたら短編もいいところです(←間違った認識)。

物語は、
1.「スカヤグリーグ」という不思議な名前のゲームに魅せられ、その成り立ちと作者を知りたいと調査を始める「私」のパート

2.障害者の間に密かに伝わる「スカヤグリーグ」の伝説に魅せられ、それをゲーム化した脳性麻痺の少女、「エスター」のパート

3.奇跡の物語「スカヤグリーグ」の主人公「アーサー」のパート

からなっています。始め3、2、1の順番で語られていたので何がなんだかわからなかったのですが、数十ページ進むと、エスターの物語(2)が中心になって、どんどん話が展開していきます。

エスターは事故死した母親から生まれる際に重い脳性麻痺を患います。彼女に知性があるかどうかも疑われていたのですが、周囲の人々の助けに恵まれ、優れた数学の才能を持つことがわかってきます。装置の助けを借りて、自分の意思を伝えることも出来るようになりました。

まず、この段階に辿り着くまでが涙なくしては読めません。妻を亡くしたエスターの父が、娘への愛情に目ざめるところ、そして娘を亡くしたエスターの祖父母が、エスターを認めるまでの長い苦悩…。

エスター自身も、自分の感情をぶつけるだけではなく、周りを思いやるまでに成長するまで大変な道のりでした。そして彼女は、「スカヤグリーグ」の物語をゲームの形で一つの世界へと作り上げるのに没頭し始めます。

ここでいうゲームとは、コンピュータを使ったロール・プレイングゲームのことですが、このゲームのテーマは剣と魔法のファンタジーではなく、「スカヤグリーグ」の伝説とエスターの人生が語られ、プレイヤーはゲームを進めながら、人生の意味を探っていくというものです。

「スカヤグリーグ」とは、アーサーという障害者が、ほとんど牢獄のような施設に入れられ、無理解と虐待に苦しみながらも、「スカヤグリーグ」の存在に助けられて、いつも希望を持ち続けるという、障害者の間に伝わる伝説でした。エスターはこの話を実在する人物の伝記だと感じ、アーサーを捜し、スカヤグリーグとは何なのかを知ろうとします。

この手の話には珍しく、ちゃんとこの探求譚には答えが用意されています。その点も、この話を読んでカタルシスが得られる一つの大きな要素だと思います。

飽きさせないためか、途中に何カ所か通俗小説みたいな描写があって前後と不釣り合いな感じがするのは残念ですが、一気に読ませる小説です。ただし、翻訳は直訳が多く、日本語としてかなり気になるところがあります。

たとえば、部屋の描写で「素朴な部屋だった」というのがあるんですが、「質素な部屋」とか「飾り気のない部屋」とはいうけど、「素朴な部屋」って何なんだろう??と思ったり…。

と、ときどきじれったくなりつつも、この話をわが事のように読んでしまったのは、意思の疎通ができないもどかしさが良く描けていたためです。外国にいて、言葉ができないときに感じるあの辛さをありありと思い出しました…もちろん、エスターの苦悩とは比べものになりませんけど。こちらは大人なのに、言葉が片言なばかりに、見下されたり、幼児のような扱いを受けるのは本当に辛いものです。

だから、外国人が日本で片言の日本語をしゃべっていても、ゆっくりわかりやすい日本語で、でも失礼な態度にならないよう返事をしようと心がけています。あ、それから、そういうとき英語で返事されたりすると、日本語学習者としては傷つくんですよねー。気をつけましょうね。

「スカヤグリーグ」は1994年に映画化もされてるようです。

原題は「Skallagrigg」。これが何を意味するかが、物語の重要な鍵になってます。

角川書店
ISBN4047911895
現在は品切れのようです。
私は図書館で借りて読みました。

さて、「スカヤグリーグ」のゲームには、エスターの人生が織り込まれており、たとえば、こんな選択肢が用意されています。(本文通りだと長いので要約します)

あなたの子供が障害児であることがわかり、
あなたにはその子を生かすことも殺すこともできるとします。
生かすにはLを 殺すにはDをタイプしなさい。

…重い問いですが、このゲームを先に進めるためには何かタイプしなければなりません…。

答えてみる
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by silverspoonsjp | 2006-10-28 23:54 | センス・オブ・ワンダーの本
バトンいろいろ、のカテゴリーを作りました。
ただcrannさんから頂いたSFバトンは例外で、センス・オブ・ワンダーの方に入れました。
覚えとしてのエントリー。

SFバトンの記事はこちら
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by silverspoonsjp | 2006-06-28 22:20 | バトンいろいろ

SFバトン

crannさんのSextans 好奇心のコンパスからSFバトンを頂きました。
関西書店巡りの予定をちょっと棚上げしまして、まずはこちらから。

ワールドコンのバックアップ企画だそうで。このさい「補完計画」というのは如何でしょう(コラ)?

質問は以下の通り=====================

★1  初SFはいつ?何でしたか?
★2  ベスト・オブ・SF を5つあげるなら? (映画でもいいですよ)
★3  ベスト・オブ・SF作家 を3人選ぶなら?
★4  今、おすすめのSFは?
★5  バトンを転送する(笑)相手をどうぞ!
=============================

★1  初SFはいつ?何でしたか?たぶん「マジンガーZ」です。話の中身はあまり覚えてないんですが、母がいうには物凄く熱中して見ていたとか。昔から武闘派だったらしい(爆

wiki英語版のマジンガーZの項目を見ると、海外でも爆発的にヒットしたものの何故かフランスでは流行らなかったそうです。理由は、先にゴルドラック(グレンダイザーのことかな?)が放映されていたため、二番煎じと思われちゃったためだとか。ノンノン、逆だってば!!

その後は「宇宙戦艦ヤマト」。 「タウ・ゼロ」で、ラムジェット航法は艦首の大穴から水素を取り込むという記述を読み、とっさに思い出したのはヤマトの波動砲の孔でした。ヤマトのあれ、本当は恒星間旅行のための孔だったのかも…?

★2  ベスト・オブ・SFを5つあげるなら? (映画でもいいですよ)5つだなんて、また回答不可能な設問を(笑)。各ジャンルでどうでしょう?

〈小説〉
「ケルベロス 第五の首」 
ジーン・ウルフ

これは最近読んだ中では一番面白かったSF(といっても、原著は1972年の作品)。
お互いの関連を仄めかしつつ展開する3つの中編からなる物語です。
ストーリーはUltan.netさんのこちらの紹介がわかりやすいです。

双子惑星サント・クロアとサント・アンヌを舞台に、「名士の館に生まれた少年の回想」「人類学者が採集した惑星の民話」「尋問を受け続ける囚人の記録」という3つの物語が展開します。
かつて人類が植民地化したさい、原住種族「アポ」は絶滅したと思われていました。しかし、彼らには変身能力があり、実は人類になりかわっている、という説が密かに語られていて…

記憶の全てを移植されたロボット、番号でしか呼ばれない少年、代々のクローンが住む館…幻想的な雰囲気の中に現れる切れ切れの記述から、「自分が同一の自己であること」の保証が揺らぎ始めます。

ミステリとして読むのも面白いです。果敢にも謎解きに挑んだ方々もいらっしゃいます。ine's daypackさんのこちらの記事、謎解きのポイントを洗い出す「Ultan.net」さんのこちらの記事などを拝見しつつ読むと、新たな楽しみが見つかることでしょう。

「重力の虹」
トマス・ピンチョン
まず、タイトルが良いですよね~。私は単純に、本に登場するミサイルの弾道を指しているのかと思っていましたが、他にも諸説あるようです。

「難解」という感想を見かけたんですけど、それは本に書かれている事柄はオチに向かって収束されるべきだと思って読むせいじゃないんでしょうか。世界で起こること全てを関連づけて認識するのは不可能です。でも、何らかの関わりはある。現実の世界では当たり前のことですが、それを小説でやってみたらこんな感じか、ということで。

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 
村上春樹
静かで美しい「世界の終わり」と、波瀾万丈の「ハードボイルド・ワンダーランド」という二つの物語が交互に進行していきます。そしてついに2つが交わるとき、現れる世界とは…。

SFと読めばSF,冒険小説と読めば冒険小説、村上作品に時々現れる、「自己の認識」について新たな切り口で提示したものといえばそうも読めます。雨の降りしきる日に楽しみたい本です。

「ニューロマンサー」 
ウィリアム・ギブスン
サイバーパンクは大好きなジャンル。
この本に関する紹介記事はこちら

「ファウンデーション」シリーズ 
アイザック・アシモフ
読み出したらやめられない面白さ。歴史が好きな方には強くお勧め致します。
まるで「三国志」を読んでるような感じです。
本格SFファンでも、特にSFに興味がない方でも、楽しく読めること間違いなしの名作。

「順列都市」 グレッグ・イーガン
こういう技術が現実になったら世の中どうなる?という実験を文字の力でやってみせるのもSFの醍醐味。全人格をスキャンでコピーし、仮想世界に置いてみるとどうなる、という本書のアイデアを追っていくだけでもわくわくします。

〈映画〉
メジャーどころばかりですが、好きなものは好き。
SF小説は物語の背景や技術の説明などがくどい!とお嘆きの方には映像の方が楽しめるかも。ただ押井守作品のように、主人公が本以上にガンガンしゃべる、という例もありますので要注意。

「ブレードランナー」
SFジャンルで一番好きな作品。劇場公開版はとってつけたような(じゃなくて、とってつけた)ハッピーエンドでおやおや??と思ったのですが、やはり監督の意図とは違ったらしい。御覧になるならディレクターズ・カット版をオススメします。
「2001年宇宙の旅
SF映画といえばやっぱりコレ。華々しい「ツァラトゥストラはかく語りき」のファンファーレに始まる進化の物語。映像・音楽ともに一級品。

ほかにも、以下の作品が大好きです。最近あまりバカSFを見ていません。面白いのがあったら是非教えてください!

・「惑星ソラリス」
・「ストーカー」
・「フィフス・エレメント」
・「エイリアン」
・「スターウォーズ」エピソード4
・「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作
・「トロン」
・「トータル・リコール」
・「銀河ヒッチハイクガイド」

〈アニメ〉
SFアニメのジャンルは日本のお家芸。全体的にヒドイ作品でも何かしら取り柄はあるので選ぶのは難しいけど、好きなのというとこんな感じ?並べてみると改めて、三つ子の魂百までというか、ロボットものが好きらしい。

「機動戦士ガンダム」で面白かったのは、ちょこちょこっとしたディテールにリアリティがあったところ。SFにはありえねーという設定が当然あるんで、それ以外の部分は本当らしい方が面白い。旗艦「ホワイトベース」も相手は名前を知らないので「木馬」と呼んでいたりとか。
でも今冷静に考えると、名前を抑えとくぐらいの諜報活動をやってないんじゃ負けると思う。

「銀河旋風ブライガー」は東京ローカルだったのでご存じない方も多いと思います。絵は毎回バラバラ、設定もむちゃくちゃで、それが面白かったの(核爆)
どんなお話かは「フリクエンシーJ9」さんのこちらでどうぞ。各回ごとのツッコミが笑えます。

中味はともかく金田伊功さん作画のオープニングがムチャクチャ好きでした(こんな感じ)。金田節炸裂!光の表現が素晴らしいです。でも相変わらず人間のデッサンは狂いまくりです(笑)。あ、主人公が巻き毛なのも私的にはポイント高いです(爆)。

「新世紀エヴァンゲリオン」は今さら説明するまでもないでしょうが、噂では聞いていても御覧になっていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。この作品、SFにアレルギーがあっても見る価値はあると思います。wikiの紹介記事は良くまとまってます。エヴァンゲリオンで検索してみて下さい(リンクしようと思いましたが文字化けしちゃって…すみません)。

ロボットものの革袋を借りてどんな酒を盛り込むかに腐心してきた日本のアニメ界ですが、ついにこの作品で頂点に達した感があります。が、あまりハマると、「ロンギヌスの槍」「マギ」「使徒」「ゼーレ」なんて単語に意味もなく反応してしまう危険があります。

実写版のSFXはWETAが担当するそうで、そのヴィジュアルイメージがこちら。うおー!カッコいいですね!願わくば作品の繊細な内面世界もうまく反映してくれますように…。

ほかにこんなのも…。
・「未来少年コナン」
・「コブラ」
・「イノセンス」

〈コミック〉
「ヨコハマ買い出し紀行」 芦奈野ひとし
以前に書いた紹介記事はこちら
この作品がお好きなら、 「カラクリオデット」鈴木ジュリエッタもお好きかも。「鉄腕アトム」以来綿々と続く人間とロボットの物語も、今やキーワードは「共生」なんでしょうか…。
「11人いる!」  萩尾望都
原作を読まずに映画「ロード・オブ・ザ・リング」を見ちゃったものだから、「フロド」って「フロル」に似てるなー(←名前がですよ。いや、ビジュアルもかな?いや属性もかな?…)と思ったもんです。
「百億の昼と千億の夜光瀬龍/萩尾望都
「スターウォッチャー」メビウス
「銀河鉄道999」松本零士

★3 ベスト・オブ・SF作家 を3人選ぶなら?同じ作家で2作以上好きな作品がある人って、実はなかなかいないです。
強いてあげれば、

アイザック・アシモフ
フィリップ・K・ディック
萩尾望都

★4  今、おすすめのSFは?上の「好きなSF」は自分としては面白いと思いますし、メジャーどころのつもりなんですけど、SFを読み慣れてない方には何じゃコレ?というのも混ざってます。まずは無難なところで…。

「ノービットの冒険 いきてかえりし物語」パット・マーフィー
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グィン
指輪物語ファンにオススメの2冊↑。
特に前者はタイトルからしてまんまなんですが、絶妙なパロディになってます。
訳も瀬田訳準拠(?)。スゴイ!後者は「二つの塔」後半にインスパイアされた作品だそうです。

「スコーリア戦史」キャサリン・アサロ
新刊で出たとき三省堂の文庫売り場に山と積まれていて、表紙が可愛かったので買いました。主人公のソースコニーを始めキャラクターがきちんと描けていて、特に少女漫画系がイケる方には楽しく読めると思います。

翻訳も非常に上手いです。私はずっとキャサリン・アサロってペンネームの日本人が書いたのかと思ってたくらいです(いや、マジで)。

「知性化戦争」 デイヴィッド・ブリン
どんなに困ってるときでもユーモアを忘れない登場人物たちに導かれて、異なる外見、異なる価値観の種族がせめぎあう世界に軽やかに入っていけます。自分の感情を「グリフ」という形で表すことができる、ティンブリーミーという種族が出てくるんですけど、疑問を表すグリフ、恐怖を表すグリフの他に「せっかくのジョークを理解してもらえない哀しみ」なんてグリフもあったり…。

「世界の中心で愛を叫んだけものハーラン・エリスン
「エヴァンゲリオン」の最終回タイトル「世界の中心でアイを叫んだケモノ」に引用されましたように、非常にインパクトのあるタイトル。そしてこのタイトルの眼目は最後の3文字にあるわけです。

人間爆弾にされた腹いせに人類全部を滅ぼそうとするヤツだの、高速道路でちょっと抜かれたからって相手を殺すまで追いつめようとするヤツだの、まさにケダモノ以下の登場人物ばっかりを集めた中・短編集で、本来なら暴力小説の傑作としてマニアの間でだけ読まれるようなたぐいの本かもしれません。が、叫んでるだけにいちおう愛もあるし(爆)、ヒューゴー賞、ネビュラ賞の2冠を獲っていて、世間様的にも認められている様子。

プロットが鮮やかで悪魔的な魅力が詰まっているので、短編小説がお好きな方にお勧めする次第。

ちなみに「世界の中心で愛を叫ぶ」が大ヒットして吊革広告なんかで宣伝されだしたときに、「いやー、あの暴力的な話を日本に置き換えて、よくP○Aが黙ってたもんだ…しかもミリオンセラーなのね?」と心の中心で快哉を叫んだバカモノは私です。

★5  バトンを転送する(笑)相手をどうぞ! バトンのワープ先ということで(笑)
「旅とこもごも」のElfarranさん-ファンタジー寄りでも結構ですので、ぜひ!
「指輪物語よもやま」の小鳥遊さんー「ハイペリオン」はじめ本格ファンとお見受け致しました。お忙しいと思いますが、できましたら…
Sea SongsのTitmouseさん-SFアニメの話題に反応されてましたので…最近の本にもお詳しそうですし。

のちほどお願いに上がります。どうぞよろしくお願い致します。

★おまけ
他にもいろいろSFが読んでみたいので、他の方のバトンもご紹介します。
TBも歓迎です!
「ラッコ庵日乗」さんのお答え
読んでみたい作品がいっぱい…
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by silverspoonsjp | 2006-06-24 23:53 | センス・オブ・ワンダーの本
専門誌に、「ザ・映画タイトル考」という題で、映画のカタカナタイトルについてのエッセイが載ってて面白く読みました。

そういえば、英語タイトルをカタカナにして、そのまま日本語タイトルにしちゃうっていうの、よくありますよね。というか、ほとんどそうですね。

試しに「ぴあ」を見てみると、
「トゥー・フォー・ザ・マネー」なんて、‘to ,for the money’って…金の方へ、金のために、ってこと??と思ったら‘two for the money’だったり、 なかには「ウェス・クレイヴン's カースド」なんて、呪文みたいなタイトルまであります。(一体どうやって読めと?…いや、気になった時点で宣伝としては成功か?)

「calvaire」の邦題が「変態村」になったごとく、さすがに原語が英語じゃないと、このワザは使わないだろう、と思ってたけど、もちろんそんなことはなくて、映画雑誌をめくってみたら韓国映画や中国映画なんて、わざわざ英語タイトルからカタカナに訳してるんですよね。

かと思えば、カッコつけてるつもりが、herが「ハー」なんてカッコ悪い字面になったりする場合もあるせいか、最近は英語のスペルのあとにふりがなをふる(!)
「bird call〈バードコール〉」とか
「The Myth 神話」のように、後ろに訳をくっつけるっていうナゾの構成もあったり。

要は、カタカナに置き換えた時点で、それはもはや英語ではなく外来語なので、意味不明でも説明不要となり、日本語の体系の中に無理やり組み込まれてる、ということなんでしょう。

そうなると、タイトルの最後の「s」が落ちる、なんてのは複数を意識しない日本語への適応としては当たり前の部類に属するわけです。

冒頭のエッセイで話題になったのは、タイトルにつける「ザ」なんですけど、大抵のカタカナタイトルだと省略されるものなのだそうです。外来語としての「ザ」には集大成、といった意味合いもあるらしい。

だとすると、
‘the Lord of the Rings’が「ロード・オブ・ザ・リング」なのは
お約束のs省略に加え、
頭のtheは出さないくせにうしろの「the」は入れるという基本に忠実で、
カタカナタイトルの付け方の見本みたいな作品だということですね。
(「ザ・ロード…」とやったら、「これぞロード・オブ・ザ・リング」って意味になるわけだから、総集編を出すときにはいいかも♪)
邦訳についてはだいぶ異論があったけど、カタカナになった時点でもう英語じゃないんだから、
これはこれでいいんじゃないの、と思います。

中国語だったら(日本語にすると)「魔の指輪」「指輪王」という訳ですが、
邦題としては付けづらいでしょうね。
だとしたら、日本語訳を創作するしかないでしょうが、
「指輪の王」はマヌケだし、「指輪物語」は甘口すぎるから勘弁して欲しいし。

ところが、映画タイトルの頭に「ザ」がついてる例もある。
著者によると、それはアクション映画やミステリー、ホラー映画なんだとか。
「ザ・ロック」「ザ・リング」…
うーむ。
日本語でタイトルにわざわざ最初に「ザ」をつける場合は、どうやらこれらの分野に属する映画という目印になる、というご意見で、なるほどと思いました。逆に、これらに属さないとなったら「ザ」は削除してしまう訳です。

おや、ピーター・ジャクソン版「ロード・オブ・ザ・リング」はホラーなんだから、やっぱり頭の「ザ」が要るんじゃないの…?
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by silverspoonsjp | 2006-03-20 01:07 | プチ日記

映画バトン(ようやく)

「foggyな読書」のかおる様から「映画バトン」を頂きました。
お答えが大変遅くなり、失礼致しました。<(_ _)>

映画大好き!ですが、映画館で映画を観ようとすると、行って、帰って、作品によっては並んで…と膨大な時間を喰いますよね。
だから、月に4本見られればいいほうです(長生きしてるので足したら見た本数が多く見えるだけ)。
結局、新作だけでも見たい映画を全部観るのはムリ。DVDやビデオはほとんど見ません。ああ、ヒマつぶし映画が観たいよー!(魂の叫び)「死霊の盆踊り」とか「チャッキーのなんとかかんとか」とか…。

最後に映画館で見た映画
「Mr.&Mrs.スミス」になるはずが…。残業のバ○~!!

一番泣ける映画
私、何の映画を見てもたいてい1回はじわっと来るのでございます。
あの「少林サッカー」のラストにすら泣いた女(他の人は笑ってたよ)。
恥ずかしい前科はいくらでも。
今年泣いた映画は他の人も泣いてたもんね!(エッヘン)
「ハウル」は最初にピアノのソロが出てきた瞬間どおーっと…。
「コーラス」は最後の最後のナレーション「それは土曜日だった」に泣かされました。

追記:どうやら、今年一番泣ける映画は「キングコング」に決定のようです。どうしてピーター・ジャクソンに泣かされるので!?不覚…。

期待はずれだった映画
ずばり「スターウォーズ エピソード3」
あんなマタニティーブルー((c)よもやま)なパドメを見に来たんじゃないやい!

お気に入りの映画5つ
う~ん、この質問は難しいですね。以前、100本選ぼうとして、
煩悩の数・百八つになっちゃったぐらいなので。
(その記事はリライトしてこちらに…)

悩んで選んでみたけど、これ以上は絞れませんでした(T T)
ジャンル5本+別格で何とか5つ(+1)に収めたってことで!
何のネタにもなってませんが、とりあえず並べます。

音楽と映像のマリアージュ
「コヤニスカッティ」(ゴッドフリー・レジオ監督)
「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」(ヴィム・ベンダース監督)
「ムトゥ 躍るマハラジャ」(K・S・ラビクマール監督)
「欲望の翼」(ウォン・カーウェイ監督)
「ラッチョ・ドローム」(トニー・ガリトフ監督)

現代音楽、キューバ音楽、インド音楽(ミュージカル?)、ラテン、ロマ(ジプシー)音楽、と何の脈絡もありません(爆)。映像を思い出すと音楽を、サントラを聴けば映像を思い出す作品です。

映像がきれい
「イントレランス」(D・グリフィス監督)
「ざくろの色」(セルゲイ・パラジャーノフ監督)
「スコピオ・ライジング」(ケネス・アンガー監督)
「オルランド」(サリー・ポッター監督)
「クレマスター」(マシュー・バーニー監督)

「イントレランス」は白黒ならではの美しさがあります。「ざくろの色」はこれまで見たことのある全ての映画のうちで一番映像が綺麗だと思った作品。「スコピオ…」は退廃美。「オルランド」はラストが気にくわなかったんだけど、映像は好きです。男女二役を演じた主演のティルダ・スウィントンも素晴らしい。「クレマスター」は崇高なまでにグロテスクで美しい作品。

アニメーション
「霧の中のハリネズミ」「話の中の話」(ユーリー・ノルシュテイン監督)
「ストリート・オブ・クロコダイル」(ブラザーズ・クエイ監督)
「夜の蝶」(ラウル・セルヴェ監督)
「夜の掟」(辻直之監督)

映画の中でも、発想の素晴らしさで勝負の短編アニメーションは特に好きなジャンル。どれも自信を持ってお勧めいたします。

SF!
「トロン」(スティーブン・リズバーガー監督)
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作(ロバート・ゼメキス監督)
「フィフス・エレメント」(リュック・ベッソン監督)
「ブレードランナー」(リドリー・スコット監督)

大きなスクリーンで見るなら、日常の風景より、普段は絶対見られないものを見たい、と思う貧乏根性丸出しの私はSF映画が大好き。「2001年宇宙の旅」「惑星ソラリス」あたりの大作から「不思議惑星キンザ・ザ」まで、SFでありさえすれば難解だろうがB級だろうがアホ映画だろうが喜んで見ます。

ドキュメンタリー的な味わいのある作品
「黄色い大地」(陳凱歌監督)
「地下の民」(ホルヘ・サンヒネス監督)
「友だちのうちはどこ?」(アッバス・キアロスタミ監督)
「ロスト・イン・トランスレーション」(ソフィア・コッポラ監督)

いずれも、あまりきっちりしたストーリーがない、セミ・ドキュメンタリー的な作品です。他のジャンルは観ているだけで精一杯ですがこのジャンルは映画を観ている間もいろいろと考えを巡らすことができる余白があって、好きなんです。

別格
「僕の無事を祈ってくれ」(ラシド・ヌグマノフ監督)
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」 (ピーター・ジャクソン監督)

耳から増殖したタコが飛び出してる人がいるかもしれませんが、それでもなお、この2つは別格ですねえ…。「僕…」はソ連映画で、主役の人はボーカリストでもあります。

「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のうち、どれが一番好きか…葛藤の末、一番、嫌いなシーンの分数が少ない「2」に決定しました(爆)。「1」は映画オリジナルの部分が少ないし(原作通りなら本を読んだ方が良いに決まってるもの)テンポが遅い。「3」はやり過ぎ。
「2」にだってダルい箇所、観たくないシーンも当然ありますが、好きなシーンも多いので差し引きすると何故が点が高かったのでした。ローハン平原を走ってるシーン、エオウィンが黄金館の前に立ってるシーン、オスギリアスのシーンは好きでした…(サムの説教除く)。


バトンを回す5人
またぐずぐずしてるうちに遅くなっちゃった。
これからバトンを持ってうろうろ致します。
受け取ってくださる方がいたら追記致しますね。

おまけ
「Tの映画紹介」様で、歴代興行収入ベスト100が発表になってます。

いろいろ突っ込めそうで、面白い表ですね。
見たものに○をつけてみると、こんな感じ。
意外に見てました。
いえ、私のようなものまで見るから興行成績が良くなるのかな?
「エクソシスト」と「グリース」、見てなかったことに今気づいた…。
皆さんは如何ですか?

○1     「タイタニック」
○2     「スター・ウォーズ」
○3     「シュレック2」
○4     「E.T.」
○5     「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」
○6     「スパイダーマン」
○7     「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」
○8     「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」
○9     「スパイダーマン2」
 10 「パッション」
○11 「ジュラシック・パーク」
○12 「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」
 13 「ファインディング・ニモ」
 14 「フォレスト・ガンプ/一期一会」
 15 「ライオンキング」
○16 「ハリー・ポッターと賢者の石」
○17 「ロード・オブ・ザ・リング」
○18 「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」
○19 「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」
○20 「インデペンデンス・デイ」
○21 「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」
○22 「シックス・センス」
○23 「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」
○24 「ホーム・アローン」
○25 「マトリックス リローデッド」
 26 「ミート・ザ・ペアレンツ2」
○27 「シュレック」
○28 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」
 29 「Mr.インクレディブル」
 30 「グリンチ」
○31 「ジョーズ」
○32 「モンスターズ・インク」
○33 「バットマン」
○34 「メン・イン・ブラック」
○35 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
○36 「トイ・ストーリー2」
 37 「ブルース・オールマイティー」
○38 「レイダース/失われたアーク」
○39 「ツイスター」
 40 「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」
○41 「ゴーストバスターズ」
○42 「ビバリーヒルズ・コップ」
 43 「キャスト・アウェイ」
○44 「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」
 45 「宇宙戦争」
 46 「サイン」
○47 「ラッシュアワー2」
 48 「ミセス・ダウト」
○49 「ゴースト/ニューヨークの幻」
 50 「アラジン」
 51 「プライベート・ライアン」
○52 「ミッション:インポッシブル2」
○53 「X-MEN2」
○54 「オースティン・パワーズ/ゴールドメンバー」
○55 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
 56 「オースティン・パワーズ/デラックス」
 57 「ターミネーター2」
 58 「エクソシスト」
 59 「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」
○60 「アルマゲドン」
 61 「バットマン ビギンズ」
○62 「風と共に去りぬ」
○63 「パール・ハーバー」
○64 「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」
○65 「トイ・ストーリー」
○66 「メン・イン・ブラック2」
 67 「マダガスカル」
○68 「チャーリーとチョコレート工場」
 69 「グラディエイター」
 70 「デイ・アフター・トゥモロー」
○71 「白雪姫」
 72 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」
 73 「バットマン・フォーエヴァー」
 74    「逃亡者」
 75 「オーシャンズ11」
 76 「ハート・オブ・ウーマン」
 77 「パーフェクト・ストーム」
 78 「Mr.&Mrs.スミス」
 79 「ライアー・ライアー」
 80 「グリース」
 81 「ジュラシック・パークIII」
○82 「ミッション:インポッシブル」
○83 「猿の惑星/PLANET OF THE APES」
○84 「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」
○85 「プリティ・ウーマン」
 86 「最後の恋のはじめ方」
○87 「トッツィー」
○88 「トップガン」
 89 「メリーに首ったけ」
 90 「アイス・エイジ」
 91 「ボーン・スプレマシー」
○92 「クロコダイル・ダンディー」
○93 「ホーム・アローン2」
 94 「エルフ/サンタの国からやってきた」
 95 「ナショナル・トレジャー」
○96 「レインマン」
 97 「エアフォース・ワン」
○98 「アポロ13」
○99 「マトリックス」
○100 「美女と野獣」
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by silverspoonsjp | 2005-12-16 00:48 | バトンいろいろ
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積ん読してるうちに早2年ほど経ってしまいました。ちらちらとは読んでいたんですけど…。

作品論どころか小説自体をあまり読まないため、この本を読んで、読んだつもりになった小説がいくつもあるというお恥ずかしい状態です。そんな私でも興味深く読み通すことができました。

本書は室内空間から、時代背景を考慮しつつイギリス小説の読み直しを試みた論考を集めたものです。

実は、映画や演劇では、セリフの代わりに背景が登場人物の性格を語ることは珍しくありません。たとえば、イギリス人のトールキンが書いた原作を元に作られた映画「ロード・オブ・ザ・リング」を見るとそれはよくわかります。映画の最初の室内のシーンは前作「ホビットの冒険」の主役ビルボと、彼の甥であるフロドが住んでいる屋敷の内部です。

竜から宝物を手に入れ、また魔法の指輪をも手にして帰還したビルボが住まうこの屋敷は、いかにもイギリス風で居心地が良さそうです。紙切れや本があちこちに散らばっている部屋のありさまも、いかにも長いこと独身で気ままに暮らし、読書や書き物が好きな人の住まいであるという感じをかもし出しています。

「ロード・オブ・ザ・リング 公式ガイドブック」は、映画を撮った際のさまざまなエピソードがつまった本ですが、この中で美術監督がこの家を評して「いつまでも変わらない保守的なものを感じた。いくらかチューダー風でもあった…ビルボ・バギンズのような人物がいかにも住んでいそうなところだ」というコメントが強く印象に残っています。それだけに、映画の最終シーン近く、ビルボが去り、フロドが独りで住んでいる同じ屋敷の中の変わりように気づかずにはいられません。彼も叔父同様、使命を果たして帰還したものの、きれいに片付いた部屋は寒々として、彼の心の中を物語るかのようです。

映画を観てから本を読んでみると、トールキン自身が室内の描写をし、またそれによって登場人物の心情を描写している箇所が少なくないのに気づきます。彼は「ホビットの冒険」のためにビルボの屋敷の内装の絵まで描いており、物語の上でその場面がいかに重要であるかがわかります。

イギリス人にとって室内とは、そこに住む人の「魂の博物館」であり、その人の「城」だといいます。本書の指摘を受けて読み直してみると、イギリス小説の中で室内の描写が(または室内が描写されないということが)、どれほど重い意味を持っているかということに改めて気づかされます。また、作品が書かれた時代背景に沿った考察になっているため、イギリスの近代史に興味がある人にとっても心惹かれるものがあるのではないでしょうか。

目次は以下の通りです。

インテリアの歴史的表象
1 インテリアという表象
2 カントリー・ハウスと室内空間
   ―ジェイン・オースティンの館に触れて
3 もの溢れるヴィクトリア朝と作家たち
4 ウィリアム・モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動      
   ―デザイン思想と社会改革のヴィジョン
5 世紀末の開かずの間
   ―『ドリアン・グレイの肖像』の室内装飾をめぐって

作品に読むインテリア
6 〈インテリア小説〉としての『嵐が丘』
   ―バルテュスの挿絵を手掛かりに
7 鏡で読み解く『ヴィレット』
8 〈見せる〉ことと〈使う〉こと
   ―エリザベス・ギャスケルの『北と南』における〈家〉の条件
9 寝台に横たわる人びと
   ―イヴリン・ウォーとカントリーハウス

生の空間を求めて
10 部屋の文学・家の文学
   ―E.M.フォースターのインテリア
11 〈子ども部屋〉にひそむ驚異
   ―イギリス児童文学にみるインテリアの表象
12 移動する部屋
   ―イシグロ、ロレンス、チャトウィンに見る断念の形影
13 変容する女たちの部屋―ドラブル、カーター、
   ブルックナー、レッシング、マードック


久守和子/中川僚子編著
ミネルヴァ書房 
ISBN 4-623-03752-5
定価 3200円 
A5判 316ページ
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by silverspoonsjp | 2005-01-31 23:55 | 人文科学の本