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本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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The Voyages of Doctor Dolittle(ドリトル先生航海記)

皆様こんばんは。長のご無沙汰でございました。
今年はちょっとウチのが病に倒れた上に、再発を心配しすぎたあまり私まで倒れ、本当に自分でも何やってんだかなーでございました。心配したって治るわけじゃないのにね。おかげでアレコレと滞り、ご迷惑をお掛けした皆様、申し訳ございませんでした。

と言ってるうちに、もう今年も最終日ですが、有終の美で、
今回は一番好きな本で締めたいと思います。

動物のことばが話せる獣医さん、ドリトル先生シリーズの1冊です。
小さい頃、井伏鱒二訳でお読みになった方も多いことでしょう。

このシリーズの英語版は、いろんな出版社からいろんな種類のものが出ているのでどれを選ぶか本当に迷うのですが、今年読んだのは、
Bantam Doubleday Dell Booksから出されたバージョンです。

ペーパーバックでお安い本なのですが、
きちんと原作者ロフティングの挿絵がページいっぱいに使ってあり(←これ重要)、一見分厚く見えますが、驚くほどサクサク読めます。

厚い本だと途中でイヤになっちゃうことあるでしょ?
この本は2見開きか3見開きで1章が終わるように、
原文を上手く圧縮したり、レイアウトを工夫して作ってあり、
そんなに短い割に、どの章もわかりやすく、続きが読みたくてしょうがないような感じにまとめてあります。
これがサクサク読める秘訣なのです。

どの程度オリジナルと近いのか、比べてみようと思っていたのですが、
いまだオリジナルが手に入らずにいます。
第一、ネット書店の書誌情報では、どれがオリジナルなんだか今ひとつハッキリしません。
確実に著者によるイラストが入っているのがどれかも分かりづらいし…。
復刻版というのは間違いがなさそうですが、日本語版の底本になっているのは、そのバージョンではなさそうです。

説明を読む限りでは、オリジナルが書かれた当時の描写に差別的な内容があるために、いま普通に流通しているものには、多かれ少なかれ、手が入っているのだそうです。
だからといって、挿絵を全面的に差し替えなくてもいいと思うんだけど、ああ、挿絵にも差別的なものがあるんですね、きっと。

こういう場合、オリジナルを変更すべきという意見、変えるべきではないという意見、どちらの立場も分かるので、コメントは控えさせて頂きます。
巻頭にエクスキューズを置いて、文章はオリジナルというのは妥当なようですが、子ども向けの本という性格を考えるとベストなのかどうか…

前置きが長くなりましたが、いくつになって読んでも、本当にこの本は面白いですね。

私は、いつも抜群のアイデアを考えついてドリトル先生の窮地を救う、オウムのポリネシアが大好きで、他の登場人物はすっかり忘れていましたが、そういや本の語り手はトミー・スタビンズ少年だったんですよね…。

読んだ年より上の設定だったので(しかも今読んでもすごく大人びてるし)、
自分にとってはドリトル先生と同じくらい遠い世界の人に感じてました。
今の方がむしろ、スタビンズ少年の目を通して物語を見渡せるような気がします。
貧しくて学校にも行かれなかったスタビンズ少年ですが、
音楽を愛するお父さん、優しいお母さんに大切に育てられたというあたりが、
お話のトーンに大きく影響しています。

それにしても、お母さんの英語の丁寧なこと、オリジナルでもこうなんでしょうか…。

英語版の全編でいちばん興味深かったのはこのシーン。
スタビンズ少年が、自分も動物のことばが話せるようになるかどうか、
ポリネシアに尋ねるシーンです。

“Do you think I could ever learn the languages of animals?”
“Well,it depends,Are you clever at lessons?”
“I don't know” 

スタビンズ少年は学校に行ったことがないので、
授業についていけるのかどうかわかりません。
ポリネシアは学校に行ってるかどうかは大した差ではない、
と少年を慰めた後、こう聞きます。

“Are you a good noticer?
Being a good noticer is terribly important”


物事を観察する力があるかどうか…博物学者になるには、
確かに大切でしょうけど、ことばを学ぶにも、大事な能力なんですね。
さすがポリネシア!

と、まあ、簡単な英語で結構深い内容のこのお話、
懐かしい皆様にも、初めて読む皆様にも自信を持ってオススメ致します。

ということで、皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

N.H.Kleinbaum編
4.5USドル
by silverspoonsjp | 2010-12-31 23:11 | 英語の本