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本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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星を賣る店:クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会

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装丁家+小説家+アーティスト+夫婦漫才(?)のユニット、「クラフト・エヴィング商會」の展覧会が世田谷文学館で開かれています。

京王線蘆花公園駅からだとゆっくり歩いても徒歩10分程度。入口に錦鯉なんか飼ったりしちゃってよくわからない世界なのですが、先日は坂本九の「上を向いて歩こう」をテーマに展示をするなど、「文学館とは、手書き原稿や作家の遺品が並んでいる場所」的な先入観を常に覆そうとしているアヴァンギャルドな姿勢が大変よろしい。

っていうか、展示の中身以上に、展示品を並べるセットや小道具に凝っているあたりが、さすが特撮のメッカ、砧(きぬた)を擁する区の正しいあり方というべきでしょうか。

ともあれ、今回の展示は装丁なので、いちおう装丁作品を並べているコーナーもありますが、それは何となく言い訳で、挿絵の写真の中だけでなく、きちんと存在する小物である、入口の「商品見本」の数々がちゃんとモノとして作られているのが圧巻だったりします。
星を賣る店:クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会_a0003079_10224.jpg


展示のメインの、ぼんやりと街頭に照らされ、暗闇に浮かび上がる想像の古書店「一角獣書店」やクラフト・エヴィング商會の架空の事務所も実物大で再現され、後者は中に入って見学できるつくりとなっています。

小品の数々には説明がついているのですが、よくも考えついたな…と唸るものばかり。たとえば、

シガレット・ムーヴィー

なるものは、火をつけて口に加えれば脳内に映画が再生されるという代物。また、自作の詩はぜひ味わってみてほしい、と詩人が取り出す食べられる詩、

エピファイト

とか、Q&AのうちのAだけが書かれた書物(A41 猿を探すことが先決だったから って、質問は何だったんだろう? 答えた人はとりあえず、柴田元幸さんかも知れない)とか。

取りあえずといえば、

とりあえずビール

赤巻紙、青巻紙、黄巻紙

などは、実物を拝める日が来るとは思わなんだ、と人をして感嘆させる逸品ぞろいでございます。

店主の言う、世の中は「絶対にない」と証明する方が難しい、という言葉が、これらの商品が詰められた箱を覗くごとに腑に落ちてきます。

チケットもとても洒落たつくりで、こんなコースターみたいなデザインが、
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展示を観終わったあとは、こんな感じに。
星を賣る店:クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会_a0003079_0592242.jpg


展覧会のタイトルは稲垣足穂の本から取られているそうで、そんな感じの世界観がかなりしっかり出来上がっているあたり、好き嫌いはあるかも知れませんが、装丁ではちまちました(←褒めている)作品ばかりでなく、かなり大胆に白地を生かした『絶対音感』や、すっきりとした印象の国語の教科書なんかもあります。インスピレーションが刺激される、観て絶対損のない展覧会。モノとしての本がお好きな方は、ぜひお出かけください。

なお、展覧会の詳しい情報は、→
こちら

2014年3月30日まで
世田谷文学館にて開催中
by silverspoonsjp | 2014-03-10 01:39 | 本にまつわるエトセトラ