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本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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第九の季節 序章

何かとせわしい師走に追い打ちをかけるように、あちこちでベートーベンの第九「合唱付き」が演奏される侯となりました。

今年はどういうわけか12月になる前に歌う機会があったので(季節商品なのに)、何度も練習させられた立場で、聞きどころをご紹介しちゃおう、という企画でございます。

私の周囲では第九は品がないから嫌…という方が結構おられるのですが、最後の◎に帆かけてしゅらしゅしゅしゅ…にたどり着く前に、大変美しい箇所も多数ご用意しておりますので、まあお聞きになってみてくださいませ。

面白そうだな、と思ったら、来年は是非歌う側に回ってみてくださいね。この時期、全国各地で第九を歌うイベント的な合唱団が結成されることと思います。ただ聞いているときよりも、ツッコミどころがわかって面白いです。同じアホなら踊らにゃそんそん。

さて。

この曲は第4楽章までありまして、前の3楽章はオーケストラだけです。合唱で出て一番寂しいのは、1,2楽章の演奏が聴けないことですね(その間は、楽屋で最後の発声練習をしたり、整列したりしてます)。

逆に第3楽章と第4楽章の間は続けて演奏されるため、第3楽章の演奏時は、歌もないのに15分近く直立不動でスタンバっていないといけません。何がキツイって、ここが一番キツイかも。何しろ第3楽章は「Adagio molto e cantabile アダージョ モルト エ カンタービレ」
すなわち、
「めちゃめちゃゆっくり歌うように、速さ60」
なので、ヘタすると舞台の上下でぐーぐー…
 
と油断しているとっ!
第4楽章がいきなり、嵐のようなティンパニーで入って、お客さんは飛び起きるわ合唱団員はビックリしてコケそうになるわ大変な状況になるのであります。
これは、私の傑作で寝てる客に喝を入れてくれる!というベートーベンの意気込み…ではなく、恐らく、この後最初に歌う、(つまり、全曲の中の歌の出だしである)バリトンの歌詞に対応してるものと思われます。

第九の歌詞はドイツ語で、オリジナルはシラーの詩。なかなか高尚な内容なのであります。
で、開口一番何を歌い出すかと思えば、

「違うね。こんな歌じゃない」(こらこら!)

だもんで、ここに行き着くまでの前奏は、オーケストラがまだらボケのごとく切れ切れに奏でる前1~3楽章の再現を、バリトンになりかわったチェロとコントラバスが、ことごとく否定して回る、という構造になっております。

何かメロディーを奏でてるというより、ホントにぶつぶつ文句言ってるみたいな演奏なので、そのつもりで聞いてあげてください。

こんな具合に、なんか言っては文句、なんか言っては文句、そのうちバイオリンあたりがブチ切れるのでは?とはらはらしはじめる頃、じゃあ何だったら良いっていうんだよ、という木管の魂の叫びを一度は蹴ってみたものの、結局つぶやきチェローもあのメロディーを!

レレミファ ファミレド シシドレ レードド♪

ああ良かったこのメロディーなら知ってるよ~といかにもホッとした感じでついてくるファゴット、こんな感じですかね?と控えめに反復し始めるヴィオラ、呼応するように対旋律を奏で始めるバイオリンが合わさっていく箇所の美しいこと。そこへティンパニーなども参入すると、何が気に入らないのかまたちゃぶ台を返すヤツが!

そしてついにバリトン兄貴が起ち上がる!

「違うね、こんな歌じゃない--兄弟、この歌じゃねえぜ!もっとキモチいい歌があるだろうがよ!どうだ、みんな、唱和頼むぜ」

グロンド!じゃなかった
「フロイデ!」 サイコーだぜ!
ここで初めて男性合唱が唱和します。
「フロイデ!」 サイコーですぜ!

この「フロイデ」の一言で、この後聞くべき合唱かどうか決まってしまうという、恐るべき箇所。
いったいどこがツボなのか!その続きはまた明日!!
(ってこの調子でやってたら年内には終わんないんじゃ…?)
by silverspoonsjp | 2008-12-09 00:58 | プチ日記