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本と読書をめぐる冒険


by silverspoonsjp
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第九の季節 第5楽章

皆様こんばんは。

今日の東京はめちゃめちゃ寒かったです。まだ風がないだけマシでしたが…。
ここのところ割に暖かかったので、裏地のないコートを着てたら寒さが刺さってくるようでしたよ。

さて、気温、ふところ、おやじギャグなど、世の中に寒いものはいろいろありますが、第九の胸突き八丁・アダージョ マ ノン トロッポ マ ディヴォート、いわゆる「敬虔パート」の最終12小節ほど、ソプラノ・アルトの心胆を寒からしめるものはないでしょう。

「敬虔に」の指示通り、ここは弱く、厳かに歌い始められます。
「いだきあえ、幾百万の人びとよ」パートのヘ長調からさりげなくト短調にシフト。ちなみにwikiでト短調のところを見たら、
・一青窈の「もらい泣き」
・ルパン三世のテーマ
・スターウォーズの「帝国のマーチ」(ダース・ベイダー登場時にかかるアレ)
が同じ調らしい。ほほー。
つまりは、あんな感じの曲調。

歌詞はたったのこれだけです。

Ihr stirzt nieder Millionen? (イール シュトゥルツト ニーデル ミリオーネン?)
Ahnest duden schëpfer, Welt?(アーネスト ドゥーデン シェッフェル、ヴェルト?)
Such'ihn über'm Sternen zelt!(ゾーフ イン ユィーベルム シュテルネン ツェルト)
Über Sternen muß er wohnen(ユィーベル シュテルネン ムス エル ヴォーネン)

Über Sternen muß er wohnen(ユィーベル シュテルネン ムス エル ヴォーネン)

またまたカワイ版から訳を紹介させて頂くと、

君たちはひれ伏すか、幾百万の人びとよ?
創造主を予感するか、世界よ?
星空のかなたに創造主を求めよ!
星々の上に創造主が住んでいるに違いない。
星々の上に創造主が住んでいるに違いない。


酒や女や打ち上げ花火で誘っておいて、
ここはいきなり脅しモード。

ひざまずけ、幾百万の人びとよ!
星空の彼方に、創り主が住んでいるぞよ…
(そこへダース・ベイダー登場)

あーいやいや。
夜空ノムコウの神様に、敬虔な祈りを捧げます
くらいのニュアンス?

神秘的な力について歌っている箇所で、ほとんど囁くような感じです。
それにしても、
四分音符一個で、
「シュトゥルツト」
って発音を押し込めって言われても、無理なんですけど。

つか、uウムラウト(ウの口をして「イ」と発音する)以外、全部子音という単語の存在が信じられん。

ここの練習をさせるときの指揮者は皆一様に嬉しそう。
「だからツム爺はダメだって言ったでしょ。子音に母音をくっつけて発音する癖が直らないから、追いつかないんです!」と言わんばかり。

これが出来たら苦労はしないんです!出来るくらいなら、シンダリンだって、ネイティブ(って誰?)並に発音出来ちゃうんです!と(怖いから口には出さないが)抗議の目線を送る合唱団の面々。

発音練習や、リズム読み(音程をつけず、ずっと同じ高さの音でリズムだけを正確に歌う)の練習をやらされて、ようやくウンテルシュトルツトドランクの荒波を乗り越えると(何だ何だ)、「ミーリオーネン」でクレシェンド、「アーネスト」のピアニシモからががーんと大きくなって「ヴェルト!」世界よ!(大きく出たな)でフォルテシモ、「ズーフ…」でピアニシモとボリュームを上げたり下げたり。

そしてまたどんどんクレシェンドしていって、フォルテシモで「ユィーベル シュテールネン ムス エル」まで持って行き、最大音量で「ヴォーネン」になります。

ちなみにこの曲の中の「ヴォーネン」(住んでる)は鬼門で、たいていその付近でいちばん音程が高い言葉になるんですね~。ついには条件反射でヴォーネンと書いてあるとビビるソプラノ。

とはいえ、敬虔パートはソプラノが「ソ」、アルトが「ミ」(ここはト短調ですがナチュラル)。オクターブ上のラだのシだのばんばん出てくるこの曲の中では比較的低い音(相対性とは恐ろしい…)。しかーし!素人合唱団は、ここの「ソ」「ミ」の音程が狂いがち。

調子っぱずれな歌をたっぷり14拍(最後フェルマータがついてるから実際にはもっと長い)も聞かされるお客さんの苦悩は想像するにあまりあります。ピアノ伴奏からオーケストラに変わってフルートが入ると、さらに壊滅的な状態に陥ります。どうも、直前の不協和音につられてしまうらしい。

しかも、ここの強さはピアニッシモ。絶叫すればある程度高い声は出ますが、小さな音量で高い音を出すって難しいですよ。試してごらんあそばせ。さらに追い打ちをかけるようにここはセンプレ ピアニシモ。ピアニシモのまま保て!って、出来ないと予感してるから書いてるに違いない、世界よ?

何とか正確な音程で歌わせようと、指揮者は知恵を絞りますが、どうも上手くいきません。ある時なんか、指揮者がわざとメチャメチャ高い音程で歌い、これと同じ音で歌って!という荒療治までやったことがあります(狂った音に合わせようとすると狂うから、正しい音程になる…ってそんな理屈があるのでしょうか)

そして、音が狂ったまま、最大の聞かせどころ、ドッペルフーガに続く。
by silverspoonsjp | 2008-12-15 23:50 | プチ日記